September 6, 2011 / 9:32 AM / 6 years ago

対ユーロ下限設定でスイスフラン急落:識者はこうみる

 [東京/ロンドン 6日 ロイター] スイス国立銀行(中央銀行、SNB)は6日、ユーロ/スイスフラン相場に下限を設定し、目標を守るため無制限に外貨を購入する用意があると表明した。設定された下限目標は1ユーロ=1.20フラン。

 スイスフランは最近、ユーロ圏の債務危機や世界経済の減速への懸念から安全資産へのシフトを背景にドルやユーロに対して急伸していたが、この発表を受けて対ユーロで7%急落し、0809GMT(日本時間午後5時09分)現在、1ユーロ=1.187フランで推移している。

 市場関係者の見方は以下の通り。

●スイスフラン目標設定受けたフラン安を人工知能が「リスクオン」で反応

 <野村証券 金融市場調査部 シニア為替ストラテジスト 池田雄之輔氏> 

 スイス国立銀行(中央銀行、SNB)が6日、スイスフランの対ユーロ相場に1.20フランの下限目標を設定したことを受け、ユーロや豪ドルが急伸しているが、これは、アルゴリズムに基づいたトレーディング・システムが、フラン安を「リスク・オン」のシグナルとして捉え、ユーロや豪ドル買いを進めた結果だろう。為替市場の初期反応は、あくまでも人工知能がリードした機械的反射だが、ドル/円相場が77円台前半に上昇したのも同様の背景があるとみられる。

 一方、G10諸国の一角が為替制度を変更してまでスイスフラン高を阻止する姿勢を示したことで、日本の通貨当局は、今後投機的な円買いが強まった場合には、円売り介入を実施しやすくなるとみている。

●投機的動きを抑制する効果

 <サラシンのアレッサンドロ・ビー氏>

 スイス中銀が発表した措置は効果があると思う。この目標水準に対抗して投機的な動きをすることに躊躇(ちゅうちょ)するだろう。

 スイスの輸出業者が支援されるため、短期的には明らかにポジティブ。長期的にはインフレリスクをはらんでいる。

●効果は短期的なものに

 <バンク・オブ・ニューヨーク・メロンの為替リサーチ部門ヘッド、サイモン・デリック氏>

 スイス中銀が前回試みたのは1970年代で、当時は短期的に効果があったが、膨大なコストがかかり、インフレに火が付いた。

 今回の措置は短期的な効果があるだろうが、長期的には、ユーロ圏の債務危機から手を引きたい(ユーロを売りたい)と考えている投資家に、そのチャンスを与えるだけになるだろう。

●スイスフラン下限導入、欧州危機の根深さ表す

 <みずほ証券リサーチ&コンサルティング 投資調査部副部長 小原篤次氏>

 欧州では財政危機と金融危機が同時進行している。財政赤字ですぐに国家が破綻するわけではないが、金融機関の不良債権問題はより深刻だとみている。欧州の銀行は7月にストレステストを受けたが、情報開示が十分だとは言えず、金融再編を進めなければならない状況だ。しかし、日本の例を見ても、金融再編は数年、10年という単位の年月を要する。 

 ユーロ圏の不安定な状況を背景に、スイスフランが避難通貨として選好されるのは仕方がない。スイスの選択が正しいかどうかは別として、今回のスイス中銀の措置は、欧州危機の根深さを表している。

●スイスのペッグ制移行はサプライズ、継続性は疑問

 <みずほ証券 FXストラテジスト 鈴木健吾氏> 

 スイスフランの水準目標を設定するというのは数日前から噂はあったが、為替制度をペッグ制に変えるという話でありサプライズ。あらゆる手段を取ると言っていたとはいえ、ここまでやるとは思っていなかった。ただ、いつまで外貨買いを継続できるかは疑問。

 スイスフランと同じ経常黒字を持つ国の避難先通貨で、介入実績もあるとして、円も連想的に売りで反応している。スイス中銀の動きは、為替変動がもたらす影響の大きさを示した。これで、日本も苦しんでいるということを言いやすくなるのではないか。

●スイス中銀の決定、弱いインフレ指標が後押し

 <インフォルマ・グローバル・マーケッツのニコラ・ステファン氏>

 スイスフランの上昇が再び加速する中で発表された8月のインフレ率が、予想より弱かったことで、スイス中銀は今が追加措置を講じるチャンスと判断したのだろう。

 スイスフランの目標水準が設定されるとの観測はかねてからあった。このため、発表直後にユーロ/スイスフランは上昇し1.20フランの目標を突破した。

 他に残された選択肢が乏しいため、スイス中銀は断固としてこの水準を守ろうとするだろう。しかしそれは、市場が中銀の決意を試す動きになれば、なまやさしいものでないと予想する。

●スイスは十分な措置講じた

 <ワールド・ファーストのチーフエコノミスト、ジェレミー・クック氏>

 自分が経験した為替相場に関する措置としては最大のものだ、スイスフランは15分間で約9%下落した。これほどの相場変動は、リーマン破たん後や、過去10年間に起きた重大な地政学的イベントの際にも見られなかった。

 スイス当局は十分な措置を取り、「無制限に」外貨を購入する姿勢を示した。これは大規模な介入を意味する。

 これにより、過去2年間に通貨安の恩恵を受けてきたユーロ圏や他の国々に対する圧力が強まるだろう。

●スイスは一段と大胆な措置講じた

 <クレディスイスのファビアン・ヘラー氏> 

 スイス中銀は、通貨上昇を通じた引き締めは容認できないと表明していた。すでに流動性を供給していたが、明らかに対ユーロで中銀が望んだ水準に達していなかったため、一段と大胆な措置を講じたのだろう。

 流動性追加供給に道を開いた。1.20フランを抜けないよう、必要なだけ措置を講じるだろう。 

●スイス中銀の危機感示した、日銀はゼロ回答許されなくなった

 <外為どっとコム総研 社長 植野大作氏> 

 将来的に深刻なインフレを引き起こすリスクがあることを踏まえても、スイス中銀はスイスフラン高を放置するほうがリスクが高いと判断したのだろう。継続できるかどうかは不明だが、ここまで踏み込んででも自国通貨高を止めなくてはいけないという危機感が感じられる。

 ドル/スイスの上昇につれて短期的にはドル/円も追い風を受けたが、スイス中銀がここまでやったのだから、日銀はどこまでやるのだろうと比較対象にされる可能性がある。あまり通貨高抑制に熱心ではないと市場に思われてしまうと、スイスフランが攻めづらくなったので今度は日本円に、という雰囲気になりかねない。日銀は明日の決定会合で、ゼロ回答が許されなくなったように感じる。

*内容を追加して再送します。

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