September 12, 2011 / 5:42 AM / in 8 years

シュタルクECB専務理事辞任、ドラギ次期総裁の行動に制約

 [フランクフルト 10日 ロイター] ドイツ出身のシュタルク欧州中央銀行(ECB)専務理事がECBによる債券買い入れプログラムに抗議して辞任したことで、11月に就任するイタリア出身のドラギ次期ECB総裁にとって、プログラムを積極的に進めることが難しくなりそうだ。

 9月10日、ドイツ出身のシュタルクECB専務理事が債券買い入れプログラムに抗議して辞任したことで、イタリア出身のドラギ次期総裁にとって、プログラムを積極的に進めることが難しくなりそうだ。写真は昨年4月、フランクフルトのECB本部前で撮影(2011年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

 ECBはシュタルク専務理事の辞任について「個人的な理由」と説明しているが、関係筋は、イタリアを含む一部ユーロ圏諸国の債券買い入れに対する抗議の意思を示すものだと指摘している。

 関係筋によると、シュタルク専務理事はトリシェ総裁の退任を「ECB時代の終わり」と受け止めていた。専務理事はドイツ連銀のバイトマン総裁と共に、ECBが先月19週間ぶりに債券買い入れプログラムの再開を決めたことに強く反対していた。

 ドイツ国内でECBによる債券買い入れに対する反発が高まる中、ドラギ次期総裁がイタリアなど債務不安に直面している国々に甘い対応を取れば、自分自身ばかりでなく、ECBの信頼感も損なわれかねない。

 しかも、ドラギ氏はトリシェECB総裁の後任として有力視されていたウェーバー独連銀総裁が辞任したことに伴い、次期ECB総裁として浮上した経緯がある。ドラギ氏はECB総裁の座を射止めるためドイツに支持を要請しており、ドイツの意向をこれ以上無視できない立場にある。

 ウェーバー氏は今回辞任したシュタルク専務理事と同様、インフレ阻止を最優先課題とするドイツ連銀の伝統を重視することで知られていた。

 シュタルク専務理事の辞任を受け、ドイツ国内ではECBによる債券買い入れの是非をめぐる議論に火がついている。コメンテーターはシュタルク氏の辞任を「ショック」だと表現し、ECBの政策に対する懸念や、ECBがドイツ連銀のイメージからさらに遠のいていくことへの不安を表明している。

 ベレンベルグ銀行のエコノミスト、Holger Schmieding氏は、シュタルク専務理事の辞任について「金利政策および債券買い入れどちらに関しても、ドラギ次期総裁がタカ派的な姿勢を取らざるを得なくなる理由となろう。彼はECBに対する信頼感を損なうわけにはいかず、市場関係者にとって意外なほどタカ派的になる可能性がある」との見解を示す。

 <シュタルク氏の焦燥>

 ECBは債券買い入れの再開に当たり、イタリアに対し、財政健全化に向けた行動を求めた。だが、実際にどんな条件をイタリアに求めたのかについては明らかにされていない。

 また、債券買い入れはすぐに欧州金融安定ファシリティー(EFSF)に引き継がれるとの認識も、ECBが買い入れ再開を決めた前提にあった。

 だが、実際はECBの思惑通りに進んでいない。ユーロ圏首脳は、各国議会が10月初めまでにEFSFを承認するよう期待しているが、それが実現する可能性は遠のいている。

 スロバキアの政府高官は先週、財務省が議会に対して迅速な行動を求めているが、EFSF改革に関する議会の採決は早くとも12月になる、との見通しを示した。

 そのことは、ECBがしばらく債券買い入れを続けざるを得なくなる可能性を示しており、トリシェ総裁も8日の記者会見でその可能性を否定しなかった。

 ECB当局者の一部は、イタリアのソブリン債をECBが買い入れれば財政再建に向けたイタリアの規律が緩みかねないと懸念しているにもかかわらず、トリシェ総裁は、イタリア政府の対応に満足していると述べた。

 そういった事情も、シュタルク総裁にとって不満だったとみられる。

 ある中央銀行関係者は「彼は厳格だったため、自分の主張が他のメンバーに支持されない状況を受け入れられなかった。自分が他のメンバーに影響を与えることができないと悟ったのだろう」と語った。

 <後任のアスムセン氏は現実的>

 ドイツ政府はシュタルク専務理事の後任として、アスムセン財務次官を送り込むことを決めた。アスムセン氏は社会民主党に所属しているが、メルケル首相は金融危機への対応に尽力してきた功績を評価し、総選挙後も留任を求めてきた。

 独5賢人委員会(政府経済諮問委員会)のベルト・ルエルプ委員長はロイターに対し、アスムセン氏はシュタルク氏よりも現実的な人物だとした上で、「彼が公然と戦うとは思えない。EFSFに債券買い入れの権限が与えられても、冷静に対応するだろう」と述べた。

 もっとも、シュタルク専務理事の辞任がECBの政策に影響を及ぼすとはみられていない。シュタルク専務理事は大きな発言力を持っていたとはいえ、理事会では23人のメンバーの1人に過ぎなかったためだ。

 トリシェ総裁は今月8日の会見で、ユーロ圏のインフレリスクはもはや上方に傾いては折らず、経済成長は鈍化する見通しだとして、利上げサイクルを中断する意向をほのめかした。一部のエコノミストは、ECBは利下げも視野に入れ始めたと受け止めている。

 UBSの為替戦略ヘッド、Mansoor Mohi-uddin氏は「トリシェ総裁が(10月も)現行政策を据え置けば、ドラギ次期総裁は11月に政策決定を迫られることになる」として、これまではECBのメンバー交代が金融市場に大きな影響を及ぼしてきたと指摘している。

(Paul Carrel記者;翻訳 長谷部正敬)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below