Reuters logo
コラム:新興国の「欧州リスク」拡大、世界の新たな失速要因に
September 27, 2011 / 6:38 AM / in 6 years

コラム:新興国の「欧州リスク」拡大、世界の新たな失速要因に

 田巻 一彦 

 9月27日、 欧州債務危機が引き起こした市場不安がアジアを含む新興国に波及するリスクが高まっている。写真は端末を見つめるトレーダーら。26日撮影(2011年 ロイター/Denis Sinyakov)

 [東京 27日 ロイター] 欧州債務危機が引き起こした市場不安がアジアを含む新興国に波及するリスクが高まっている。欧州系銀行は、手元資金を厚めにするため、新興国などの資産売却を始めているが、その動きが加速するようなら、新興国は1997年に発生したアジア通貨危機のようなドル不足に直面する懸念が高まる。

 新興国経済が打撃を受ければ、急減速する米欧経済とともに世界経済の失速が決定的になりかねず、警戒感を高めるべきだろう。

 <新興国で起きた資金流出現象>

 26日のNY市場では、欧州当局が債務不安を解消するため、欧州金融安定ファシリティ(EFSF)によるレバレッジ活用計画を検討しているとCNBCが報道。株式市場が続伸し、ユーロが対ドルで下げ幅を縮小した。ソブリン危機の解決に向け、一条の光が差し込んでいるとの期待感が広がり、リスク性商品を一斉に売却して現金化する激しいリスクオフ取引が一服した形となった。

 だが、23日から26日のアジア市場では幅広い資産売却とキャッシュ化の大波が広がり、新たな危機の可能性を垣間見せた。複数の市場筋によると、金や銀の大幅な下げの背後には、欧州系銀行の資産売却の動きもあったという。26日のアジア通貨市場ではタイバーツとフィリピンペソが目立って下落。タイ、インドネシア、マレーシアの通貨当局は自国通貨防衛のドル売り介入を実施した。韓国当局は23日にドル売り介入し、マネーが自国から流出することへの危機感を鮮明にした。

 また、通貨高圧力に直面してきた中国の人民元も、上海外為市場で26日に1ドル=6.40006元と3日続落。ブラジルでも22日にブラジル中銀が自国通貨支援のため27億5000万ドルの通貨スワップを売却し、レアル反発につながった。中国、ブラジルとも2010年11月の米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和第2弾(QE2)の実施以降、過剰流動性の流入によるインフレの高進に悩んできたが、足元では一転して資金流出が目立っていた。

 <アジア通貨危機に酷似>

 新興国で起きていた資金流出の背景には、欧州債務危機の深刻化という現象が明確に存在している。アジアを含む新興国で巨額のエクスポージャーを持つ欧州系銀行は、ギリシャなど重債務国の国債下落で資産内容が劣化し、カウンターパーティーリスクの急上昇に直面。手持ち資産を売却し、現金を厚めに確保する対策を広範囲に取っている模様で、前週から26日のアジア市場の取引時間帯までに展開された各市場での価格急落は、そうした動きの影響を強く受けた結果とみられる。

 EFSFをめぐる欧州当局の対応に関する報道を好感し、26日米欧市場ではリスク資産が反発したが、楽観は禁物だ。欧州債務問題の行方を大きく左右する欧州系銀行への資本注入に明確な筋道が立たなければ、不安心理は拡大するだろう。オバマ米大統領が26日にカリフォルニア州で、欧州の債務危機は「世界をおびえさせている」と発言した。今、起きている問題の深刻さを示したと私には見える。

 もし、EFSFの機能強化とレバレッジを活用した銀行への資本注入策がまとまらなければ、欧州系銀行による資産売却の動きが再び表面化し、新興国から資金流出が表面化するに違いない。この現象は1997年に発生したアジア通貨危機並みの衝撃をもたらしかねないと予想する。資金逃避が激増すれば、中国を含めたアジアでの経済活動に甚大な影響が出かねない。

 <新興国に経済失速の懸念、日本企業に影響も>

 世界の資金フローの動向に詳しい東海東京証券・チーフエコノミスト、斎藤満氏は「欧州系銀行による資金引き揚げが目立ってくれば、新興国企業の投資や運転資金の調達にも影響が出てくる可能性がある。経済活動が縮小のスパイラルに入る懸念も出て、実物経済に大きな打撃になり得る」と予測する。私もこうした資金流出が進行した場合、新興国の経済を減速させる要因となり、現地で展開している日本企業の業績を圧迫するだけでなく、日本からの輸出も減少させるリスクがあると考える。

 政府・日銀は2011年度下期の景気回復の原動力として、東日本大震災の復興需要とともに、新興国の根強い需要に支えられた外需の拡大に期待してきたはずだ。もし、欧州債務危機が新興国からの資金流出と金融不安を引き起こせば、日本経済の緩やかな回復シナリオに致命的な打撃を与えかねないだろう。市場では、欧州債務危機の動向に注目が集まっているが、新興国通貨や株価動向をにらみながら、新興国の金融不安が現実化しないかどうかにも関心を高めるべきだろう。

 欧州から米国への危機の波及ばかりに目を奪われてきたが、新興国経済と金融市場に動揺が走れば、リーマンショックを上回る危機が世界に到来しかねない。27日の市場の静穏さとは裏腹に、世界経済の危機度は高まりつつあると警鐘を鳴らしたい。

* 筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below