October 4, 2011 / 5:23 AM / 8 years ago

金融市場に悲観まん延、混乱長引けば足元堅調な実体経済にも悪影響

 [東京 4日 ロイター] 金融市場が「負のスパイラル」の兆候を見せている。悲観に振れた市場のセンチメントがリスク資産売却を促し、資産価格の下落がセンチメントをさらに悪化させる格好だ。

 10月4日、金融市場が「負のスパイラル」の兆候を見せている。悲観に振れた市場のセンチメントがリスク資産売却を促し、資産価格の下落がセンチメントをさらに悪化させる格好だ。写真は2008年11月、都内の株価ボード(2011年 ロイター/Toru Hanai)

 足元のマクロ指標は市場が織り込むほど悪化していないが、金融市場の混乱が長引けば「逆資産効果」などを通じて実体経済に悪影響を及ぼす懸念もある。ギリシャ債務問題に前進が見られず、デフォルトなどのシナリオもあるためショートカバーも入りにくいという。

 <材料が出ないのは悪材料、悲観に振れる市場心理>

 「材料が出ないのはニュートラルではなく悪材料と受け止められている」(東海東京調査センター・シニアストラテジストの柴田秀樹氏)──。市場のセンチメントは大きく悲観に振れており、ポジティブ材料が出なければ現状維持であっても、投資家はリスク資産の売却を継続。株価などが下落することで市場心理がさらに悪化するという悪循環に陥っている。

 実際、海外時間に特段悪材料は出なかったにもかかわらず、アジア時間に入っても株安が止まらない。デクシア(DEXI.BR)の格下げやモルガン・スタンレー(MS.N)の株価急落、ギリシャの財政赤字削減目標が達成困難といった材料は前日すでに出ており、新たな材料というわけではなかった。しかし、市場筋によると4日の東京株式市場では欧州マネーからバスケット売り注文が400億円程度出るなど、換金売りとみられる海外勢のリスクオフが継続している。

 さらに、市場の関心は欧州に集中しており、マクロ指標で多少底堅い指標が出てもほとんど無視される状況だ。9月米ISM製造業景気指数は51.6と、前月の50.6から上昇し、市場予想の50.5も上回ったほか、9月の米国内自動車販売台数(乗用車と小型トラック)は前年同月比9.9%増と堅調だった。前日発表された9月日銀短観も震災からの回復を示していた。市場が悲観するほど足元の実体経済は悪化していないが、市場は先行きの悪化を懸念し反応は鈍い。

 「このまま金融市場の混乱が続けば、実体経済に影響が出てくる」(JPモルガン・アセット・マネジメント・エコノミストの榊原可人氏)おそれがあるという。株価下落で保有資産の目減りが生じれば、雇用や消費が圧迫される可能性があるためだ。米国では、生産や販売などのハードデータが底堅い一方、消費者信頼感指数などセンチメント系のデータは大きく悪化しており、消費者マインドの悪化が実体経済に及ぶ懸念もある。

 アジア危機が起きた1997─98年当時と比べ新興国の経済体力は格段に上昇しているとみられているが、このまま先進国経済が悪化すれば新興国経済も無傷では済まない。

 JPモルガンが3日発表した9月の世界製造業景気指数(PMI)は49.9と8月の50.2から低下。拡大と縮小の分岐点となる50を割り込むのは2009年6月以来だ。

 日経平均は続落。9月26日の取引時間中の安値8359円70銭を下抜き、3月15日以来約6カ月半ぶりの安値水準となる場面があった。リスク回避の円高が対ユーロで進んでいるほか、住友金属工業5405.TやJFEホールディングス(5411.T)など多額の投資有価証券評価損を計上する企業も出ている。

 市場では「日本経済のGDP規模を考えれば、株式の時価総額はボトム圏」(みずほインベスターズ証券エクイティ情報部長の稲泉雄朗氏)との声も出ているが、日本株は依然として、海外勢の売りに押され続けている。

 <ユーロ/円は10年ぶり安値>

 ユーロ/円はアジア時間早朝に100.77円まで売られて10年ぶりの安値を更新。ユーロ/ドルも1.3163ドルと1月中旬以来の安値をつけた。午前終盤にかけてアジア株が下げ渋る動きをみせ、リスク回避の動きもやや弱まったが、ギリシャ支援の行方は依然混とんとしており、ユーロの下値不安は根強い。

 ギリシャが2011年、2012年とも財政赤字削減目標を達成できないことが明らかになり、ユーロ圏財務相会合ではギリシャ支援について具体策を打ち出せなかった。市場では「ギリシャ支援がどういう形になるのかわからなくなってきた」(国内銀行)と警戒感が強まっている。「ギリシャをデフォルトさせないことが第一目標だが、デフォルトせざるを得ない場合はいかにショックを和らげるかだ。欧州金融安定ファシリティー(EFSF)を利用した金融機関への資本注入などのセーフティネットを整備する必要があり、時間がかかる」(三菱東京UFJ銀行アナリストの井野鉄兵氏)という。

 不透明感の中でユーロの下値不安が拡大しており、アジア時間の下げ渋りは長続きしないとの見方が多い。ただ、ユーロは対円、対ドルでは下げているが、対豪ドルや対ハンガリーフォリント、対ポーランドズロチなどではしっかりしている。対リスク通貨ではユーロがキャリートレードの調達通貨になるケースも多いためで、ユーロが全面安になっているわけではない。「この構図が維持できるなら、ユーロ/ドルは1.30ドル割れからの下値は限られそうだ」(井野氏)との声もあった。

 一部のアジア通貨も下落が続いている。ソウル株式市場の総合株価指数が大きく下落し、韓国ウォンが対ドルで2010年7月以来の安値をつけた。韓国当局は介入でウォンを買い向かったもようだ。

 豪ドル/米ドルも売り先行。8月の貿易黒字が31億豪ドルと事前予想を大幅に上回ったが下げ止まらず、発表後に0.9476ドルと2010年9月以来の安値をつけた。売り一巡後は下げ渋っているが、リスクオフムードが継続する中で豪ドルの下値不安はユーロ同様、消えていない。

 <マネーは国債へ、10年債入札は無難> 

 欧米に加えアジアでも株安、コモディティ価格も下落、高金利通貨も下落──マネーの数少ない逃げ場が国債だ。

 きょう実施された10年物国債入札の最低落札価格は100円02銭と、事前予想の100円01銭をやや上回った。テールは2銭と前回の1銭から拡大。応札倍率は3.15倍と前回の2.97倍から上昇し市場では「無難な結果だった」(外資系証券)との評価が出ている。

 円債市場では、国債先物が続伸する一方、長期金利の指標10年債利回りが3営業日ぶりに節目の1%を割り込んだ。日経平均株価が下げ幅を広げたため、一部海外勢が先物取引でストップロスを付けた。

 JPモルガン証券・チーフ債券ストラテジストの山脇貴史氏は米金利低下の要因として、欧州混乱や10月のデュレーション供給が大幅に減少するとみられることに加え、新四半期でレバレッジ投資家が株式ショートを再開する可能性が高いこと、ヘッジファンド・欧州銀行の資産圧縮が年末に向けてさらに加速するとみられること、などを挙げる。このため「下半期に入り国内投資家の投資行動が変化するタイミングでは、欧米金利から出遅れた円金利が低下に向かう可能性は十分に高い」(馬脇氏)という。

 (ロイターニュース 伊賀大記;編集 田中志保)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below