[ロンドン 6日 ロイター] 5日に他界した米アップル(AAPL.O)の創業者スティーブ・ジョブズ氏を悼む声が世界中に広がる中、動乱が続く中東のシリアでも6日、自分たちと「血のつながった」ジョブズ氏の死を悲しむ声があふれた。同氏の実の父親がシリア人であることはあまり知られていない。
ジョブズ氏はサンフランシスコで米国人の母親ジョアン・キャロル・シーブルさんと、シリア人の父親アブドゥルファター・ジョン・ジャンダリさんの間に生を受け、その後すぐに養子に出された。
ジャンダリさんは以前、シーブルさんの父親がシリア人である自分との結婚を認めなかったため、生まれたばかりのジョブズ氏はカリフォルニア州に住むポール・ジョブズ夫妻に引き取られたと話していた。アップルの創業者が血のつながった息子であることに気付いたのは、つい数年前だという。
現在80歳のジャンダリさんは8月、ニューヨーク・ポスト紙のインタビューで「誰にも気付かれず子どもを産むため、ジョアンは私にさえ何も言わずサンフランシスコに行ってしまった。家族の面目をつぶさないため、それが最善の策だと考えたのだろう」と語っていた。
ジャンダリさん本人も気付づいていなかっただけに、シリア国内でも、ジョブズ氏がシリア人の血を引いていることは最近まであまり知られていなかった。しかし、死去のニュースが流れると瞬く間に追悼の輪が広がり、ツイッター上では、ジョブズ氏を「偉大なるアラブ系米国人」と称賛する声や、「世界一有名なアラブ人」だと形容する書き込みが多く見られた。
ただ一部には、もしジョブズ氏が実の父親の祖国であるシリアで育っていたら、輝かしい成功を収めることは無理だったとの声も少なくない。
国連の康京和・人権副高等弁務官は先月、シリアでは反政府デモが3月に始まって以来、これまでに2700人が当局の弾圧で死亡したと発表。シリアの治安部隊は戦車やヘリコプターも使い、首都ダマスカスなどでデモ弾圧を続けていると指摘した。
ダマスカスに住む28歳の男性は「もし彼がシリアに住んでいたら何1つ成し遂げることはできなかっただろう。あるいはシリアを去るしかなかったはずだ」とコメント。自分にアップル製品を買う余裕は一切ないが、ジョブズ氏がシリア人の血を引いていることが分かっただけでも幸せだと語った。