November 2, 2011 / 9:13 AM / 8 years ago

インタビュー:高福祉維持なら消費税25%必要=福田東大教授

 [東京 2日 ロイター] 社会保障と税の一体改革に伴う消費増税について、東京大学大学院の福田慎一教授(金融論、マクロ経済学、国際金融論)は、このまま社会保障制度の歳出にメスを入れなければ、消費税は2015年度までの10%への引き上げでは到底足りず、最終的には25%程度まで増税する必要があるとの見通しを示した。

 こうした状況が明らかであるにもかかわらず、政府は社会保障制度の議論を小出しにして最終的な姿を示さず、負担についても消費税の引き上げ幅について当面5%としているにすぎないと指摘。25%まで消費増税をしてまで高福祉を選ぶのか、低福祉低負担を選ぶか、税と社会保障制度の最終的な全体像について選択肢を示すべきだと主張した。ロイターとのインタビューで述べた。 

 インタビューの詳細は以下の通り。

 ──復興支出の規模と、10年間で11兆円超の増税負担感についてどうみるか。

 「日本の財政状況を考慮しないでいいのなら、復興支出が一般歳出とは別枠として特別扱いとなっていることも、被害の大きさからみて一つの道理ではある。また、インフラ整備などは建設国債的な性格があるので、非常に長期にわたって償還していっても構わないだろう。短期間で10兆円以上の増税をする必要は全くないと思う」

 「しかし一方で、日本の財政が1000兆円近い公債残高を抱えているという財政状況を意識していないような印象がある。一般歳出と別枠にしているのは、本丸の財政再建と切り離した議論にしようとの意図があるようにも感じる。本丸の赤字がこれだけ拡大している中で、財政再建は、これ以上、先延ばしはできない問題だろう」

 「今政府の復興増税案では10年間で11兆円規模の増税負担となっているが、確かに負担は重い。が、今年度の財政収支が40兆円程度の赤字となっていることを考えれば、本来はもっと負担しなければならないのだが、11兆円でも消費税5%分程度の負担であることを考えると、日本経済にとってはそれなりに重たい負担ではある。ただそれでも、必要なことはしていかねばならない」

 ──社会保障のための消費増税と復興増税が重なり負担が重くなることについては。 

 「確かに増税すれば、その時の経済にマイナスとなるのは事実。ただ日本はそういう理由でずっと財政再建を先延ばししてきた。それを繰り返すのか、ということ。今後、成長は今より若干上向きになるとしてもよくて2、3%成長。さほど改善するわけではない。一方で、成長が上がれば国債利回りが上昇し、利払いが増える。プラス・マイナス考えると、経済成長すれば、財政状況が大きく改善するわけではない。景気が悪いのに増税かという批判はあるだろうが、過度に景気改善を強調すべきではない。歳入不足が深刻だということに正面から議論していくことが必要」

 ──消費増税の道筋として望ましいのは。

 「まず、今の消費税の課税方法を議論すべき。欧州のようなインボイス方式になっていないので、食料品を非課税にするといったことに向いていない。また景気への影響が出るのは、耐久消費財。住宅課税など買った時に一括して課税されるが、実際には長年にわたって消費しているはず。そうしたやり方だと、増税前後で耐久消費材全般に駆け込み需要と反動が発生して景気の振れが大きくなる」

 「現状の消費税の課税の仕方を議論したうえで、刻み方などを決めるべき。制度改革はあまり頻繁に行うべきものでないので、やるなら時間をかけて制度を決めて、実施する時はあまり細かく刻まないで一括引き上げが望ましい。その際の景気への影響が大きいのは耐久消費材なので、その際に住宅や耐久消費財へ別途減税措置を講ずるなど、課税に工夫すればよい」

 「いずれにしても、2010年代半ばの実施に向けて、課税のやり方から早く議論を始めるべきで、今から議論を始めても時間が足らないくらいである」

 ──最終的な消費税率や社会保障の姿を示すべきでは。 

 「現状から歳出にメスを入れなければ、40兆円の財政赤字を埋めるために単純に考えればあと20%の消費増税が必要だということ。なおかつ、このまま社会保障の歳出にメスを入れないとさらに赤字が増えることは間違いない。そういう意味で最終的には、最低でも消費税25%になる」

 「まずは、国民に、税と社会保障の姿の選択肢を示すべき。スウェーデン型の高負担高福祉にするなら消費税25%で今の制度を維持するか、英国型のように負担も小さく、老後は自己責任でという選択肢にするか、きちんと選択肢を示した方が良い。唯一選択肢を示して国民に問うたのは、小泉政権時の郵政改革だけ。不満は言うが、選択を問うことなく、どうしたらいいか議論してこなかったのがこれまでの日本」

 「今は、低負担高福祉という幻想を示しているに過ぎない。消費税25%にしてでも、高福祉を維持するのか、ということを問わないとだめだろう。高福祉を維持するなら負担もこれだけ大きくなるということを同時に示さないといけない。今の政府のやり方は議論を小出しにしているだけ。突然、(年金)支給年齢引き上げなどが出てくる。全体像を示すべき」

 ──2015年度以降の姿として、増税と同時に財政再建の姿も同時に示すべきではないか。

 「(一体改革により消費増税してもプライマリー・バランスは改善せず、公債残高は増えていくという姿について)大まかな姿として間違いない。一番の問題は、国債金利の上昇。現在10年物国債で1%程度というのは大きなボーナスをもらっているということ。これが2%に上昇しても大変なことになる。それにも備えなければならない。貯蓄率がそれほど上昇しない中で、国内金融資産は頭打ちとなり、国内の国債保有力は伸びない。一方で、国債残高はどんどん増えていく。バランスが崩れてくる中で、海外の国債保有が増えてくれば、国債の金利は乱高下し、さまざまな影響が出るだろう。今は嵐の前の静けさといったところだ」

 (ロイターニュース 中川泉;編集 内田慎一)

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