November 7, 2011 / 8:13 AM / 8 years ago

消費税10%の国際公約で負担先行、維持不能な社会保障に懸念

 [東京 7日 ロイター] 税と社会保障の一体改革において、社会保障の財源となる消費増税10%への引き上げという負担のみが国際公約となる一方で、肝心の社会保障制度についての本質的な議論が遅れている。

 11月7日、社会保障の財源となる消費増税10%への引き上げが国際公約となる一方で、肝心の社会保障制度についての本質的な議論が遅れている。写真は野田首相。9月撮影(2011年 ロイター/Issei Kato)

 6月末に示された「成案」は高福祉の維持が盛り込まれ持続不可能との指摘が相次いでいるが、国民には負担と給付についてその他の選択肢は示されていない。社会保障制度を抜本改革しない限り、消費税は10%どころか25%が必要との指摘も浮上している。税率も制度も小出しの議論が続いているが、全体像と選択肢が示されぬまま国民の将来不安が増幅すれば、必要以上に景気を冷やしかねない。 

 <膨らむ財政赤字、10%引き上げで終わらず> 

 野田佳彦首相は、今回カンヌで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)で、先進国で最悪の財政状況にある日本の財政再建への取り組みについて将来の消費税引き上げ方針を明言。行動計画にも、2010年代半ばまでに消費税を段階的に10%まで引き上げるための法案を今年度内に提出することをコミットすることが明記された。国民負担を伴う消費税引き上げ方針だけが国際公約となり、肝心の社会保障改革の議論は取り残されたままだ。 

 確かに、日本の財政状況を鑑みれば消費増税は避けて通れない。2015年度までに10%まで消費増税を実施したとしても、社会保障の機能強化を盛り込んだ「成案」を実施すれば、公債残高はその先も増加を続け、23年度までに1300兆円を突破すると内閣府では試算している。

 東京大学大学院の福田慎一教授は「10%への税率引き上げでは、到底足りない。現状以上の社会保障の拡大は論外だ」とみている。「このまま社会保障の歳出にメスをいれないと、さらに赤字が増えることは間違いない。そういう意味で最終的には、最低でも消費税は25%になる」と指摘する。 

 実は、政府自身、10%への引き上げを「一里塚」と位置付けており、2015年度以降に一段の増税を視野に入れている。しかし、最終的に必要となる税率の目安はどこにも示されていない。財務省では今後の財政状況も予断を許さないために、「必要となる税制や税率の長期的な見通しを示すことは難しい」との立場だ。 

 <持続性ある社会保障の姿なく> 

 問題は、税負担だけが先行する一方で、社会保障制度についての議論は生煮えのままという点だ。高福祉低負担のシナリオだけが国民に提示されたが、こうしたシナリオは持続可能性に乏しいとして、専門家から幻想にすぎないとの批判も出ている。経済界からも厳しい目が注がれている。経済同友会は10月に税制改正論議に向けて緊急アピールを発表、「持続性ある社会保障制度設計が具体的に明示されないまま、財源論が先行したことは極めて遺憾」と指摘。社会保障の機能強化ばかりに重点が置かれた「大きな政府」の見直しを求めている。 

 福田教授も「まずは、国民に、税と社会保障の姿の選択肢を示すべき。スウェーデン型の高負担高福祉にするなら消費税25%で今の制度を維持するか、英国型のように負担も小さく、老後は自己責任でという選択肢にするか、きちんと選択肢を示した方がよい」と述べている。 

 <消費増税のあり方、景気変動最小化の工夫が必要> 

 今後10年間は、消費増税だけでなく復興増税も重くのしかかる。復興財源としての増税は総額11.2兆円、所得税や住民税、法人税などがのしかかる。消費税に換算すれば4─5%程度に相当する思い負担だ。しかも、復興費用は見積もり以上に拡大する可能性もある。財政再建派の平野達男・東日本大震災復興対策担当相も、財政再建との両立を図る必要はあるとしながら、復興費用の拡大はある程度やむを得ないとの考えを示している。このため、復興関連の財源負担は拡大する可能性もあり得る。 

 消費税と復興増税の2つの増税時期が重なり、大規模な国民負担が景気にマイナスの材料となることは間違いない。財務省は、復興増税に関してはさほど問題にならないとの立場を示す。増税の一方で復興事業による経済への後押しが相殺することになるとの見方をとるため、影響は極めて小さいというものだ。

 そうだとしても二つの税が同時にのしかかる消費者心理などへの負担も考えれば、景気への影響を最小限に食い止める工夫が必要となる。引き上げ時期や免税品目、引き上げ方の刻みなどを早急に議論する必要がありそうだ。 

 財務省では税制改正に向けて、今のところ引き上げ時期は景気情勢に配慮するとの方針だ。ただそれでは、これまでと同様でいつまでたっても増税は実施できないとの批判もある。また免税品目に関し、財務省は食料品の除外は難しいとの立場だ。日本の消費税制度は欧州のようなインボイス方式になっておらず、食料品を非課税にするといったことに向いていないとの指摘もある。福田教授は景気変動を大きくするのは耐久消費財の駆け込み需要である点に注目、「住宅や耐久消費財へ別途減税措置を講ずるなど、課税に工夫すればよい」としている。

   (ロイターニュース 中川泉;編集 石田仁志)

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