November 11, 2011 / 7:23 AM / in 8 years

インタビュー:オリンパス、制裁金活用で上場廃止回避を=大杉教授

 [東京 11日 ロイター] オリンパス(7733.T)の損失先送り問題について、会社法などを専門とする中央大学法科大学院の大杉謙一教授は、不透明な会計処理に関連したM&A(合併・買収)アドバイザーも特別背任(会社法)の共同正犯になる可能性があると述べた。

 11月11日、オリンパスの損失先送り問題について、中央大学法科大学院の大杉謙一教授は、投資家の利益を守るため東京証券取引所の上場契約違約金(制裁金)制度を活用、上場廃止を回避することが望ましい、と指摘した。10月18日撮影(2011年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 また、投資家の利益を守るため、会社側が再発防止対策を徹底して東京証券取引所の上場契約違約金(制裁金)制度を活用、上場廃止を回避することが望ましい、と指摘した。

 同制度は、東証が2008年7月に導入した。西武鉄道(当時)など過去に上場廃止になった企業では、多くの個人株主が株式の売買の機会を失ったため、投資家保護の対策に欠けるとの判断から設けられた。東証は、上場企業が適時開示規則や取引所規則である「企業行動規範」の遵守すべき事項に違反したと判断した場合、上場を維持するかわりに違約金1000万円の支払いを要請する。

 インタビューの主な内容は以下のとおり。

 ──オリンパス問題では何に注目しているか。

 「粉飾のために意図的にやったことが明らかになったが、(損失を)隠すためにどのようなメカニズムを使ったか、なぜ隠そうとしたのかに注目している。

 ──今回は有価証券報告書の虚偽記載に該当するか。

 「(会計基準が変更された)2001年3月期以降、オリンパスに粉飾決算があったことはほぼ間違いないだろう。ただ、その前の決算が粉飾にあたるか否かは、現時点では良くわからない」

 ──時効にかかる部分もありそうだが。

 「現在の法律の条文に照らすと(虚偽記載の)時効は10年。だが、(事件が発生した)当時の法律が適用されるため、粉飾決算が行なわれたその時の法律をみる必要がある。時効の期間はかつての法定刑によると3─5年あたりになりそうだ。菊川前社長の前任者やさらにその前任者は罪を免れる可能性がある」

 ──有価証券虚偽記載の場合、現在の法律では金融商品取引法で10年以下の懲役、1000万円以下の罰金が科せられる。その対象は。

 「処罰の対象は会社、個人の両方にかかる」

 ──2008年以降のM&Aは金商法が禁止している偽計取引に該当するか。

 「金商法158条に該当するには、さまざまな要件が必要になる。偽計に該当するためには、有価証券の取引のため、相場の変動を図る目的をもって、などといった要件を充たす必要がある。今回はそれを充たさないと考えられる。(オリンパスの)M&Aについては、偽計の問題はほとんど生じず、焦点は特別背任罪(会社法)になると思う」

 ──特別背任罪にあたる可能性はどの程度か

 「取締役が自己または第三者の利益を図る、または会社に損害を加える目的があったかどうかが背任の要件だ。単なる意図や認識ではなく、目的があったかを見極めるには、高度な証明が求められる。今回は、会社の過去の粉飾をこっそり処理する目的とみられるため、菊川氏が自身の利益を図ることが主たる目的とは言いにくいが、おかしなM&Aをアレンジした業者の利益、つまり第三者の利益を図る目的があったと言えるかもしれない」

 「ただ、任務に背き、会社に損害を加えたとは言えるだろう。本来は過去の含み損を明らかにし、公表し、財務諸表を訂正することが取締役としての正しい対処だったはずだが、損益計算書の表示を不正確なものとした。任務に背いたと言えるだろう」

 ──特別背任罪に問われる場合、その対象は誰か。

 「主犯の取締役だけではなく、共同正犯として、協力した人物も対象になる。会社法960条によると常勤監査役もそれにあたる可能性がある。M&Aのアドバイザーも、偽計取引または特別背任の共同正犯になる可能性がある」

 ──株価下落による損害は、発行会社(オリンパス)の責任か。

 「金融商品取引法(21条の2)は、投資家が直接会社に対して損害賠償請求できるとしている。下落した金額のすべてを請求できるわけではないが、有報の虚偽記載から生じた損害は請求できる。粉飾決算で上場廃止になったライブドアのケースでも、損害賠償請求訴訟があった。裁判所が算出する損害額の計算の仕方はそれぞれ違い、まだ最終的に判例が確定していないため、一定のベンチマークやパターンはない。いずれにしても、集団訴訟は今後増えるだろう」

 ──上場廃止についてどう思うか。

 「同じ有価証券の虚偽記載のケースでも、ライブドアは上場廃止になったが、日興コーディアル証券(当時)はならなかった。上場廃止で一番損するのは投資家であり、不正を行った元会長らではないことを考慮する必要もある。しっかりとした再発防止対策をとることができるのなら、上場廃止ではなく、上場契約違約金(制裁金)制度を活用するのがいいと思う。どちらを選択するかは東証の判断になる。日本市場を守るために毅然とした措置を取りたいと思えば上場廃止を選ぶかもしれない。私自身は、制裁金にとどめ、株式が売り買いできる場を残した方が、社会全体にとっては良いと思う」

 ──監査法人が見抜けなかったのはおかしいのか。

 「過去の損失を巧妙に隠し、専門の業者が介在してM&Aを使ってその穴埋めをしていた。監査法人は見抜けたかどうかは分からない。十分に怪しいと思って見抜いていたら、監査証明は出していないだろう。現段階で監査法人の不注意とは断定できないのではないか」

 「監査では、財務データを集積して財務諸表を作成する社内の財務プロセスがしっかりしているかどうかを見るとともに、金額が大きなものについては取引そのものをみる。形式的な記録の確認だけではなく、やっていることが著しく不当か否かもみる。もっとも、監査法人は今回の大規模なM&Aについて当然チェックはするが、最終的に払っているお金が適正か否かには経営の判断が入る。会社側が自分たちの判断で、将来性があるためM&Aに高額を支払ったと言い張れば、監査法人はどこかで引き下がらざるを得ないこともあるだろう。監査では、帳簿上の数字がおかしいとか、お金の出入りの後付けができない場合は会社に問いただせるが、取引の妥当性について問いただせることは限られている」

 ──監査法人に責任はないのか。

 「現段階で過失があるか否かは五分五分だろう。第三者委員会の調査待ちになると思う」

 ──海外からは、日本の金融当局や捜査当局の動きは遅いとみられているようだ。

 「証券取引等監視委員会や検察は、金商法に反するある程度の見込みがなければ動けない。つまり、会社側が損失先送りを認め発表した7日朝までは、日本の検察は目立った動きを控えなければならないのだ。他方、ウッドフォード氏は今回の事件に得体の知れないもの、おそらく自身の生命にかかわりかねない恐怖を感じていたと思われるので、英米の捜査機関に駆け込み、当局も動いたと報じられている。このように、日本と海外では事案の認識が異なることから、当局の動きにも差が生じたと推測している」

(ロイターニュース 江本恵美、編集:北松克朗)

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