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アングル:TPP交渉参加表明に自動車業界から歓迎の声

 [東京 11日 ロイター] 野田佳彦首相が10日、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加を表明したことに対し、製造業の中でも強く参加を要望していた自動車業界からは歓迎の声が聞こえている。参加表明によって、米国市場で台頭している韓国企業との競争条件が一段と悪化する事態がひとまずは遠のいたためだ。

 11月11日、野田首相のTPP交渉への参加表明に、自動車業界から歓迎の声があがっている。写真は4月横須賀で撮影された日産車(2011年 ロイター/Yuriko Nakao)

 現代自動車005380.KSなどはウォン安や欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)締結などを背景にグローバル市場で攻勢をかけており、日系自動車メーカーも危機感を募らせてきた。

 韓国は米国とのFTA発効が間近に迫っており、米国が乗用車にかけている2.5%の関税も5年以内をめどに撤廃される見通しとなっている。日本が、関税を原則撤廃するTPPに参加しなければ、韓国車が米国市場で免税される一方、日本車には課税が続くことになる。

 日本自動車工業会(自工会)の志賀俊之会長(日産自動車7201.T最高執行責任者)は10日の野田首相の政治決断を受け、「アジア・太平洋地域におけるビジネス環境の整備と、自由貿易の進展が期待される」と歓迎するコメントを発表した。

 <TPP交渉参加後も残るハンディ>

 経済産業省によると、2010年に自動車産業(乗用車、自動車部品)がTPP交渉参加9か国に支払った関税は1300億円以上。このうち米国に支払ったのは、約850億円に上る。野村総合研究所の自動車・ハイテク産業コンサルティング部上級コンサルタント、岩垂好彦氏は、「先進国や新興国でも市場が大きくなり、数%の価格差が非常に大きな差となってきている。関税が下がることは非常に大きなメリットになる」と指摘する。

 ただ、国内の自動車メーカーは、FTAへの対応の遅れに加え、為替の円高、高い法人税、製造業派遣の禁止などの労働規制、温暖化ガス削減目標、電力不足を「6重苦」としてきた。仮に、TPP交渉への参加でFTAへの対応の遅れを挽回できても、そのほかのハンディが残される。

 例えば為替の円高。ウォンはドルに対しこの2年間で6.5%上昇したが、円は対ドルで倍以上の13.2%の上昇率となっている。米国市場で韓国に先行されそうな乗用車への2.5%の関税撤廃を日本がTPP参加で解消したとしても、為替要因の方が市場での競争条件により影響を与える。

 日本総合研究所の調査部長兼チーフエコノミスト、山田久氏は、政府が競争条件悪化に対して何も手を打たなければ、企業の海外移転が加速する事態になると警告。TPPへの参加表明は、劇的なメリットを狙うというより、競争条件のデメリットを無くして国内の空洞化にとりあえず歯止めをかけるという意味合いがあると分析する。その上で、さらに法人税の思い切った減税に踏み込むなど、日本の立地競争力を上げる努力をさらに進めることで初めてTPPの意味が出てくると語る。

 (ロイターニュース 杉山健太郎;編集 山川薫)

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