November 18, 2011 / 5:03 AM / 6 years ago

欧州国債は「負のスパイラル」、金利上昇と債務負担懸念が連鎖

 [東京 18日 ロイター] 市場の不安心理が連鎖的に悪化している。国債売りが次々とユーロ中核国に飛び火。国債金利が上昇することで債務国の利子負担増加懸念が強まり、さらに不安が高じて国債売りが加速するという「負のスパイラル」に陥っている。米国などの実体経済は堅調で、新興国経済も減速気味とはいえ高い伸びを維持しているが、市場の関心は欧州の債務問題に集中。東京市場でも株安・債券高が止まらない。

 11月18日、市場の不安心理が連鎖的に悪化している。写真は10月都内(2011年 ロイター/Issei Kato)

 <ユーロ全体に「戦線」拡大>

 米国経済の堅調さを示すマクロ指標が続いている。10月の鉱工業生産は前月比0.7%増となり、7月以来の大幅な伸びとなった。住宅関連の指標は依然さえないが、10月の米住宅着工件数が市場予想ほど減少しなかったほか、米新規失業保険申請件数が7カ月ぶり水準に改善するなど、住宅と雇用という米経済の弱点も小康状態だ。

 新興国経済も、これまでの金融引き締め政策の影響で減速感が出ているが、依然として高い成長率を維持している。インフレ率が落ち着いてきたことで、金融政策を転換する中銀も増えてきた。

 中国人民銀行は16日、必要に応じて金融政策の微調整を行う用意があるものの、全体的な立場として、穏健姿勢に変わりないとの認識を示した。減速する経済への下支えに向け、中銀として軸足を移しつつあるとの見方を裏付けるとみられている。

このように実体経済の底堅さを示す材料も少なくないが、マーケットの関心は欧州債務問題に集中している。17日のスペイン国債の入札では、10年債の平均利回りが6.975%と、1997年以来の高水準に達した。フランスが実施した約70億ユーロに上る国債入札はスペインほど悪くなかったが、やはり利回りが前回に比べ大幅に上昇した。

 マーケットのリスク回避志向が強まり、不安に駆られた投資家などが欧州国債から手を引いていることが背景だ。野村証券シニアストラテジストの村山誠氏は「金融機関は自己資本比率を上げることを求められているが、株価純資産倍率(PBR)が1倍を切るような状況での増資は株主から反対される可能性が大きい。資産を売って自己資本比率を高めようとしており、危ないといわれている国の国債を次々と売っている」と指摘する。

 イタリアに続き、スペインの国債利回りも「危険水域」といわれる7%に近づき、資金調達コスト増への懸念が強まっている。ドイツを除くユーロ中核国のほとんどに対して、マーケットは不安を強め、売り手は攻撃の手を緩めない。国債売却による金利上昇が利子負担増加懸念を高め、さらに国債が売られるという負の連鎖が起きている。

 スペインのサルガド経済・財務相は17日、ユーロ圏は加盟国のソブリン債を標的とした全体的な攻撃に直面しているとの見方を示した。

 <センチメント先行の軟調相場に違和感も>

 リスクオフムードが強まる中、日本国債には引き続きマネーが流入。10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比1ベーシスポイント(bp)低下し0.940%となった。市場では「欧州債務危機の拡大を懸念している。リスクオフが広がり、質への逃避が進めば、消去法的に円債は買われやすくなる」(国内証券)との見方が出ている。

 ただ、マーケットには高値警戒感も出ている。SMBC日興証券チーフ債券ストラテジストの野村真司氏は「さすがに長期金利で0.950%割れ、国債先物12月限の143円台乗せでは高値警戒感が強まる」と話す。株価が下げ渋ると、円債先物の上値は重くなった。

 株式市場でも、センチメント先行の軟調相場に違和感を示す声が少なくない。トヨタアセットマネジメント・チーフストラテジストの濱崎優氏は「イタリアやスペインなどは、去年よりも財政状態は改善している。米国経済は堅調だ。欧州だけに市場の関心が集中しており、過度な悲観論が強まっている。反動が起きる可能性もある」との見方を示す。

 日経平均.N225は10月5日以来約1カ月半ぶりに8400円を割り込み、TOPIX.TOPXも連日で年初来安値を更新したが、売り一巡後は下げ渋る動きもみせている。「欧州債務不安が根強く、海外勢のバスケット売りが幅広く出ている。ただ8400円割れ水準まで押したため、前日同様に国内年金の買いが入る可能性もあり、売り込みにくい雰囲気ではある」(大手証券)という。

 <EFSF債レートはドイツ債の2倍>

 一方、欧州の国債利回り上昇の伝染リスクに歯止めをかけることを狙った欧州金融安定ファシリティー(EFSF)のレバレッジ構想に不透明感が広がるなかで、EFSF債(長期債)のレートが3.9%付近で推移している。ドイツの長期債(1.8%)の倍以上の水準であり、市場では「ドイツなどトリプルA国の保証があるとは思えないレート。EFSFの信認が危うくなっている証左だ」(みずほコーポレート銀行マーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏)との声が聞かれた。

 EFSFの融資可能額をめぐりフランスのトリプルA格からの転落が懸念されており、バークレイズ銀行チーフFXストラテジストの山本雅文氏によると「EFSF債は、これを意識したレート形成になっている」という。

 一方、17日には、債務危機に対する欧州中銀の関与について、国際通貨基金(IMF)が欧州中央銀行(ECB)から融資を受ける案が浮上した。これに対して市場では「欧州の危機は、欧州域内だけでは対処不可能になりつつあることを示している。ただ、EFSFの銀行化のほうが可能性が高そうだ」(唐鎌氏)との見方が出ていた。

 ドル/円は、77円付近でこう着感の強い取引になったが、上値は着実に切り下がり、77円台での重さが目立ってきている。ユーロ/ドルは米国時間終盤にかけて売られたあと、アジア時間は下げ一服。正午にかけてはショート筋の買い戻しが入り、一時1.35ドルを回復した。

 市場では、これまでみられたユーロ域内でのドイツ国債への資金シフトから、ユーロ圏からの資金逃避への転換を視野に入れる声も出てきている。スペイン国債の入札が不調に終わるなど欧州債券市場の混乱が長期化しているためで、ドイツ国債利回りもじわりと今月の取引レンジの上限に近付いている。

 (ロイターニュース 伊賀大記;編集 田中志保)

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