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再送:根深い米サブプライム問題、ドル地盤沈下が深刻
2007年7月23日 / 08:57 / 10年後

再送:根深い米サブプライム問題、ドル地盤沈下が深刻

 [東京 23日 ロイター] ユーロが円やドルに対して最高値圏にある。米サブプライムローン(信用力の低い個人向けの住宅ローン)問題でドルの信認が揺らぎ、その逃避先としてユーロが選ばれているからだ。

 7月23日、ユーロが円やドルに対して最高値圏にある。米サブプライムローン問題でドルの信認が揺らぎ、その逃避先としてユーロが選ばれているからだ。写真は3月、米ミシガン州デトロイトで撮影(2007年 ロイター/Rebecca Cook)

 米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は19日、サブプライム向けの高金利型住宅ローンの焦げ付きが金融機関に最大1000億ドルの損失をもたらすとの試算を明らかにしが、サブプライム問題は米国の借金体質という、より根深い構造問題に端を発しており、その影響は米金融機関のみに限定されるものではない。  

 <米政府機関債の安全性> 

 米国の住宅ローンの供給は証券化を前提として実施されている。その仲介役として、米連邦住宅抵当公社(Fannie Mae)と米連邦住宅貸付抵当公社(Freddie Mac)などの政府支援企業(GSE)は、金融機関から住宅ローンを買い取り、パッケージ化して証券化する業務を手がけている。両公社が保証するMBS(住宅ローン担保証券)の残高は3兆ドル、自らが発行した債券残高は1.5兆ドルと巨額にのぼる。

 Fannie MaeとFreddie Macは、これまでマネージメント、システム、内部統制、経理面など広範な分野で問題を指摘されており、タイムリーなファイナンシャル・レポートの開示も怠ってきたが、業務は急ピッチで拡大してきた。

 その理由は、両公社が発行する債券に「暗黙の了解として米政府の保証が付いていると債券市場参加者が信じてきたためだ」と米連邦住宅公社監督局(OFHEO)のジェームズ・ロックハート局長は指摘する。だが実際は法律にも債券の券面にも、政府保証付ではないことが明記されている。

 両公社が発行する債券は米政府機関債(米エージェンシー債)として、日本を含む多くの海外機関投資かが購入している。1-5月の購入額は欧州勢が327億ドル、中国が384億ドル、日本が40億ドルだった。海外中銀の米エージェンシー債保有残高は、7月18日時点で7450億ドルにのぼる。

 ロックハート局長は、両公社を「巨漢」と称し「もし一方もしくは両方に、健全性の観点から著しい問題が生じた場合は、株主だけでなく、両公社の債券やMBS保有者に深刻な打撃が生じる」と警告する。  

 米議会では両公社が金融機関からのローンの買取りを拡大する過程で、買い取るサブプライムローンの種類を増やし、結果として金融機関のサブプライムローン供給に拍車をかけ、問題を一層深刻化させたとの批判があるうえ、両公社の財務の健全性も問題視されている。  

 <借金体質と住宅ローンの不良債権化>  

 米国民の借金体質や過剰消費は、政策面から後押しがあったことも見逃せない。

 「1995年からクリントン大統領は持ち家比率を大きく引き上げる政策を立案・実施し、それがサブプライムローンの増加をも伴って、持ち家比率を歴史的高水準へと引き上げた」と三國事務所・代表取締役の三國陽夫氏は語る。

 「米国では住宅投資の拡大が刺激となり、消費が伸び、輸入が増加する構造がある。しかし、2006年から住宅供給が過剰となり、歯車の逆転が始まり、大方の予想を裏切って本格的な住宅不況となった。住宅投資が底入れし、再び力強く増加に転ずるには数年かかるだろう」と三國氏は分析する。 

 米抵当銀行協会(MBA)によると、サブプライムローンに占める差し押さえ債権の割合は1-3月に2.43%と5年ぶりの高水準となり、同ローンの延滞比率は13.77%と4年半ぶりの高水準と発表した。なかでも、変動金利型ローンに占める差し押さえ率は3.23%、延滞は15.75%となり過去最高だ。

 米国では今年から来年にかけて約2万件の住宅ローンが金利据え置き期間終了を終えて変動金利に移行し、借り入れた人は、現状より高い金利を支払わなければならなくなる。

 バーナンキ議長は「最も信頼できる指標によると、住宅価格は全国的には下落しておらず、上昇ペースが減速しただけ」としたが、議長が信頼できるとするOFHEOのデータでは、第1・四半期の住宅平均価格指数は前年同期比で4.25%の上昇、上昇率は1997年第3・四半期以来9年半ぶりの低水準だった。

 同指数は2004年後半から2006年前半まで前年同期比10%を上回る上昇率を維持し、米経済の牽引役である旺盛な消費を支えてきた。しかし、逆回転は既に始まっている。

 消費者ローンの延滞率も6年ぶりの高水準だ。米銀行協会によると、2007年第1・四半期の延滞率は2.42%と2001年第2・四半期以来の高水準だ。住宅の値上がり分を担保に融資するホーム・エクィティ・ローンやオート・ローンなどで延滞が増えたことが背景だ。   

 <金融市場へのインパクト> 

 米投資銀行のエコノミストによれば「(米不動産)市況は年初から壊滅的な状況」という。サブプライムモーゲージを含むローン資産のプールを担保としたクレジット商品であるCDOの市場は「値崩れしすぎて、プライシングができない状況が続いている」(米債トレーダー)との指摘もある。また、サブプライム問題は、様々な市場でリスク回避の流れを作り出している。

 円資金市場では、サブプライム問題をきっかけに、欧米金融機関やヘッジファンドが円ファンディングを使った裁定取引のポジションを減らしたため、オーバーナイトの金利が安定的に推移している。

 ただし、円キャリートレードに本格的な巻き戻しは起きていない。巻き戻したくても、CDO市場の崩壊に関連して「売るに売れない」ポジションがあるとの推測もある。 キャリートレードのファイナンスニーズは、短期金融市場でも長めの円資金需要として現れ日銀による利上げ見通しや米長期金利の上昇ともあいまって、長めの金利の上昇につながっている。1年物LIBORは6月25日の0.87%から1.01%へ、6カ月物は同0.76%から0.87%へと上昇している。

 ユーロは対ドルで1999年のユーロ導入以来の最高値圏にあり、対円でも最高値近辺で推移している。

 「最近のドル/円の動きに目を奪われると全体を見誤るが、ドルは決定的に弱い。ドルを嫌う投資家のニーズを反映してユーロは今後より一層強くなるだろう」と米投資銀行の為替トレーダーは語る。

 (ロイター日本語ニュース 森佳子)

*本文中の表記を一部手直しして再送します。

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