August 17, 2007 / 2:22 AM / 12 years ago

円が上昇、株は続落:識者はこうみる

 [東京 17日 ロイター] 世界的な信用不安への懸念から円のキャリー取引を巻き戻す動きが高まり、ドル/円は前日海外市場で一時112円近辺まで下落、東京市場では113円半ばをはさんでの一進一退となっている。日経平均は17日続落し、ザラ場の年初来安値を連日更新している。市場参加者のコメントは以下の通り。

 8月17日、ドル/円は海外市場で一時112円近辺まで下落した後、東京市場では113円半ばをはさんでの一進一退。日経平均は17日続落。写真は13日、株価ボードに映る人々(2007年 ロイター/Yuriko Nakao )

 ●投資家動向に変化の兆し、株下落なら円高続く

 <三井住友銀行 市場営業統括部チーフエコノミスト 山下えつ子氏>

 世界的な株価の下落を受けて、外為市場でもリスクリダクション(リスク回避)の動きが強まっている。リスク回避に伴って円高が進むのは初めてのことではないが、これまでは金融政策などをめぐる思惑がきっかけとなっていたのに対し、今回はサブプライムモーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅融資)が実際に、株式や短期金融市場に影響を及ぼしている点が異なっている。過剰流動性相場の中、投資家はリスクをとって高いリターンを求め続けてきたが、今後は容易な行動が難しくなるだろう。これまでのリスク回避相場では、一時的にポジションを縮小する過程で円高が進み、一巡すれば元の水準に戻る動きが続いてきたが、今回は新しい落ち着きどころを探る展開となりそうだ。112円まで円高が進んだからといって、これ以上はないだろうという水準感は通用しない。株価の下落が続く限り、リスク回避の動きは続く。ドルは110円を割り込んで円高が進む可能性もある。

 ●疑心暗鬼の株売り、鋭角的に戻る可能性

 <ドイツ証券東京支店 副会長兼チーフ・インベストメント・オフィサー 武者 陵司氏>

 疑心暗鬼のセリング・パニックが起きている。オーバーリアクションであり、鋭角的に戻る可能性がある。

 現在起こっているのはクレジットの悪化とその先にある景気悪化や企業収益悪化という2つの可能性に対して市場が心配しているという状況だ。クレジットの問題だけならば時間と政策で解消できるが、それが景気を冷え込ますなら深刻になる。

 だが米サブプライムモーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題は局地的な問題であり、世界経済のファンダメンタルズは米国を含めてしっかりしている。米企業の労働分配率は低くバッファがある。これまで企業業績が好調なときにリセッションが起きたことはない。サブプライム問題が広範な景気後退をもたらす可能性は低いとみている。米国で不安心理が膨らみ消費に大きな影響を与えるかどうかが最大のポイントになるだろう。

 サブプライム問題による疑心暗鬼が解消され、資産のリクイディティ化が一巡すれば壮大な買い戻しが起きる可能性がある。日経平均で見れば1万6000円を割れた水準が底だろう。反転すれば1万8000円から1万9000円への上昇はありうるとみている。

 ●投機筋が大量のクロス円売り

 <UBS銀行 外国為替部FXアドバイザー 牟田誠一朗氏>

 前日からけさにかけての取引では、夏休み明けの本邦勢によるドル買いがみられるが、それが止まるとクロス円売りの波に押されるという動きだ。信用収縮懸念から、引き続き円買いの地合い。円キャリー取引のアンワインドに加え、明らかに投機筋とみられる大量のクロス円売りがみられる。これまでの円キャリー取引のはげ落ちたところが適正な水準といえるのかもしれないが、長い目でみないと判断できない。

 ●ドル109円が下値めど、信用収縮の動き続く

 <香港上海銀行 外国為替営業部長 花生浩介氏>

 今回の円高局面では、これまで円を売り続けてきたヘッジファンドが円を買い戻している。きっかけは米サブプライムモーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅融資)だったのだろうが、現在起こっている問題は、すでにその域を超えている。サブプライムによる損失だけでなく、為替の大幅変動による損失も加わり、ポジションを閉じる動きが本格化している。ポジション整理が一巡しない限り、円高も終わらない。為替の相場水準ではなく、ファンドがポジションを閉じきったかという量的な問題になるので、市場には不安心理が残っている。テクニカル上でも113円を割り込んだ意義は大きい。昨年5月につけた109円付近がドルの下値めどとなりそうだ。

 ●10円の円高続けばGDP0.32%押し下げ、株下落とあわせ影響比較的大

 <野村証券金融経済研究所シニアエコノミスト・森田京平氏>

 6月後半の為替に比べて10円程度の円高となっているが、これが1年間定着した場合には日本のGDPを1年目に0.32%、2年目に0.53%押し下げる効果がでてくる。特に影響を受けるのが輸出と設備投資など企業関連だ。

 また株価も7月後半の高値から2000円程度落ちているが、2000円の下落が1年定着した場合、GDPを1年目に0.04%、2年目に0.16%程度落とすことになる。円高と株価下落の効果を併せると1年目にGDPを0.36%程度落とす効果があり、影響は比較的大きい。 

 ただ、こうした円高、株安が今後1年間続くかと考えると、続かない可能性の方が大きいとみており、2008年度に向けて2%台半ばの成長が実現する構図をメーンシナリオとみておきたい。しかし心の片隅にこうしたリスクを置いておく必要はありそうだ。

 ●ボトム圏も株反転のきっかけつかめず

 <大和総研 投資戦略部 次長  壁谷洋和氏>

 国内株式はバリュエーションでみるとかなり割安感で出ており、ボトム圏内であるはずだが、反転のきっかけがつかめないでいる状態で下げている。

 銀行株については、リターン・リバーサル的に買い戻されている。当初懸念されていたよりも、サブプライムローン問題の直接の影響がないとの見方が出てきたのではないか。

 米国市場では、下落した分切り返す動きがみられた。きょうの国内株は、前日のように大引けにかけて戻す動きがあるかどうかに注目している。

 海外投資家主導の売りともいわれているが、国内の個人投資家も円高を受けて資金を引き上げているのではないかとみている。

 ●中短期債利回り低下、海外勢の逃避マネー流入が影響

 <みずほ証券チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>

 信用収縮に対する不安感からの株安/円高が、日銀の景気見通しの根幹部分にヒビを入れてきた。輸出依存の企業業績に対しても、為替環境が大きなリスクになる兆しと映る。日銀の利上げ意欲は強い。ただ、22―23日の金融政策決定会合における利上げは厳しい情勢。東京市場の参加者は、利上げシナリオに関して下方修正を迫られた面がありそうだ。

 円金利でもとりわけ中短期債利回りの低下が著しいのは、外国人投資家の逃避マネーの流入による影響が大きいとみる。財務省が16日発表した対内債券投資は、1兆円を超える買い越しとなっている。市場の混乱が落ち着きを取り戻すにつれ、揺り戻しが大きくなる可能性は否定できないが、混乱が続いた場合は利上げが当面ないことを織り込み、2年債利回りは0.75%が節目として意識されそうだ。

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