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米指標に陰り、日銀の利上げ見送り長期化の思惑も
2007年9月6日 / 08:16 / 10年後

米指標に陰り、日銀の利上げ見送り長期化の思惑も

[東京 6日 ロイター] 6日の東京市場は、大幅に株安/債券高が進んだ後で巻き戻す動きが出て、その後は方向感のない展開。5日に発表された7月米住宅販売保留指数や8月米民間雇用者数が弱かったことで、これまで堅調だった米経済のファンダメンタルズにも陰りが出てきたとの見方が浮上した。

 9月6日、米指標に陰りが出てきたとの見方が浮上し、日銀の利上げ見送りが長期化するとの思惑も台頭。写真は福井日銀総裁。先月23日撮影(2007年 ロイター/Yuriko Nakao)

 金利市場を中心に米利下げ/欧・日利上げ見送りの長期化の思惑が強まって、円債市場では長期ゾーンでの買いが目立ち始めている。

 <マクロ系ヘッジファンドが日本株売りか>

 6日の東京株式市場は、米国株安やドル/円が一時、114円台に進んだ円高を嫌気して売りが先行。日経平均は一時300円を超す下げ幅を記録した。朝方の外資系証券の注文動向が2130万株の大幅売り越しだったことで、海外勢の売り観測が広がった。

 市場関係者からは、海外長期運用資金の解約売りやマクロ系ヘッジファンドの売りなど海外勢が再度売り姿勢を強めているのではないか、と警戒する声が出ている。外国人売りを材料に短期筋から先物に大口売りが相次ぎ、下げを加速させた。

 ある国内証券関係者は「マクロ系のファンドは、今回のサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題でマクロ指標に変化がないため、市場の変動が大きかったにもかかわらず、機敏に対応できなかった。その結果、ポジションのしこりができて、日本株売りに動いているようだ」と述べている。

 <下値で株買い戻し>

 ただ、日経平均先物が8月29日の直近安値1万5830円に並ぶ水準まで下げると、逆に買い戻す動きが出た。市場からは「海外先物市場などを通じたショートのポジションが短期間でかつてないほど積み上がっている。買い戻しが本格化すれば意外な戻りもあり得る」(準大手証券トレーディング担当者)との見方が出ている。

 三菱UFJ証券・シニアストラテジストの白木豊氏は「欧米金融市場の流動性に問題はない。すでに日米欧の株式市場はパニック売りを経験しており、ここから直近安値を更新するとは考えにくい。不安心理の落ち着き待ちだろう」とみている。

 海外勢の日本株売りについては「パニック的な持高調整は一巡している。母国市場が落ち着けば日本株をさらに売る必要はないはず。ただ、市場が落ち着くためにはサブプライムの影響が実際にどの程度出るのか、金融機関等の決算を見極める必要がある。株価は当面不安定な動きを続けそうだ」と白木氏は話している。

 <ECB利上げ見送りで朝方は債券高>

 円債市場は午前の取引で小幅続伸した。朝方は米10年債利回りが今年3月以来となる4.5%を割り込むなど欧米金利の急低下を受けて急伸。市場関係者によると「前週にいったん売っていた海外勢が前日あたりから再び買い圧力を強めている」(邦銀)という。買い一巡後は国債先物の限月交代に絡むテクニカル的な動きが出て、前引けにかけて伸び悩んだ。

 財務省が発表した8月26日─9月1日の対内証券売買契約等の状況によると、海外勢は債券(中長期債)を525億円の売り越し。債券売り越しは5週間ぶり。サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)を発端にした信用収縮懸念で金利低下が進んだが「10年債利回りが1.540%に低下した局面で、モメンタム系海外ファンド勢がいったん先物のロングポジションを解く動きがあった」(邦銀)という。

 <弱い米指標、市場にマクロ面でも懸念> 

 欧州中銀(ECB)が異例ともいえる理事会前日の声明で9月利上げ見送りを示唆したことを受けて、国内でも「日銀の9月利上げ見送りが決定的になった」(国内金融機関)との見方が広がった。

 米国市場では、7月米住宅販売保留指数が前月比12.2%低下して2001年9月以来の低水準を記録。8月のオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)全米雇用報告で民間部門雇用者数の伸びが3万8000人にとどまり、7日の8月米雇用統計に対する下振れ懸念が浮上したことで、米景気に対する慎重な見方が広がった。

 これまではクレジット市場の機能不全を中心にしたマーケットの混乱が大きな話題だったが、「いよいよマクロ経済指標にも悪い数字が出てくる可能性が浮上した、とマーケットは受け止めた。FRB(米連邦準備理事会)がサブプライムローン対応で利下げしても、ファンダメンタルズが悪化してくれば、さらに追加の利下げに追い込まれる。その辺の先々までマーケットは織り込みを始めようとしている」とある邦銀関係者は指摘する。 

 <日銀の利上げ見送り、長期化観測が台頭>

 こうした展開について、みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は「ECBは5日の声明で、市場が見ていた9月利上げ見送りを事実上宣言した。LIBORやオペ金利が上昇するなど、短期市場の混乱が深まっている状況を考慮したのだろう。カナダ銀行(中央銀行)も5日、政策金利の据え置きを発表。声明でリスクについて上下均衡としてこれまでの利上げ示唆を撤回。これでG7の金融政策は、利上げを見ていた国がすべて政策を凍結したことになる」と分析。

 そのうえで「FRBは複数回の利下げが避けられない状況。日銀の利上げについては9月は論外、年内の利上げが封印されたとみている。混乱が収束したとしても、日銀利上げは最速で来年1月だろう」とみている。

 また、ECBの利上げ見送り表明で、短期金融市場の混乱の背景にも思惑が出た。LIBORなどの上昇により、企業の資金調達コストが上昇しており「一部金融機関の資金繰りに不安説も浮上している」(国内金融機関)という。 

 日興シティグループ証券・チーフストラテジストの佐野一彦氏も「ECB声明を受けて日銀の9月利上げ見送りが決定的になった。マーケットは、FRBによる複数回の米利下げを織り込んでいる。日銀利上げが9月だけではなく、年内は困難になったと見方が増えるのではないか。それでも、日銀が利上げを強行した場合には、世界市場の動揺を招くだけだ」と述べている。

 他方、東短リサーチ・チーフエコノミスト・加藤出氏は「日銀は日本国内のファンダメンタルズに大きな変調はないという見方を維持しており、利上げについては、自然体で様子見をしている段階。欧州中銀(ECB)など海外の金融政策との関連においても、例えばECBが利上げするかどうかということよりは、市場が落ち着くかどうかがポイントだ。

国内の経済指標もこうした環境下で利上げを急かすような強い内容ではないので、日銀は先行き、海外市場がいつ落ち着いてくるか、しばらく様子を見守る姿勢だろう」と語る。

 また、加藤氏は「先行きの利上げペースに関しても、日銀はフリーハンドで考えている。米国の金融、住宅部門は減速が続くが、世界経済全体としてみた場合、米経済の鈍化を吸収できるというイメージが徐々に見えてくるだろう。日銀の利上げは当初見通しより数カ月ずれ込んできているが、いずれは利上げ方向に進むという方向性に変わりはなく、市場がある程度落ち着いて実体経済への影響という点においては心配はない、ということが確認できれば利上げの議論が復活することになる」と指摘している。

 短期金融市場では、OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)金利でみた利上げの可能性は、9月会合が10%以下。10月で20─30%程度、11月で35─45%程度に低下している。

 円債市場では、午前の取引で「年金筋と見られる国債現物への買いがみえた」(邦銀関係者)という。別の邦銀関係者は「日銀の利上げが年内は困難になってきたのではないか、との思惑が広がって機関投資家の買いが中期ゾーンから長期ゾーンに伸びてきた」と指摘した。

 <ドル/円は114─116円のレンジか>

 外為市場では、ドル/円が朝方に115円ちょうど付近のストップロスを巻き込み、ドル売り/円買いが急速に進んだ。前日海外市場では、米雇用・住宅指標が予想を下回り、長引くクレジット危機が米経済成長の足かせになるとの懸念が東京市場でも広がり、ドル売りにつながったとの指摘が市場で出ていた。

 午前中の取引では、日経平均が一時300円を超えて下落しても円買いにならなかった。欧州中銀(ECB)が利上げを見送っても、ユーロには金利先高期待から、下げは限定的とみられている。このため前日から上値は重いが堅調な値動きとなっている。

 UBS銀行外国為替部・FXアドバイザーの牟田誠一朗氏は、株価が下落しているのに円が買われないことに関して「基本的に投機筋のフローがはげおちたということだ。ドル/円は114円から買いが厚く、ショートで稼げる余地は小さい。114─116円のレンジ内で動きにくい。ECBの利上げ見送りは、日銀への金融政策に大きな影響がある。グローバルななかで日銀だけがアクションを起こすとは考えにくい。当然9月の利上げもない。10月以降、ひょっとすると年内は厳しいかもしれない」とみている。

(ロイター日本語ニュース 田巻 一彦)

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