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日銀は利上げ見送りへ、低金利是正姿勢は維持
2007年10月5日 / 08:02 / 10年後

日銀は利上げ見送りへ、低金利是正姿勢は維持

 [東京 5日 ロイター] 日銀は10月10、11日に開く金融政策決定会合で、無担保コール翌日物金利の誘導目標を現行の年0・5%前後のまま据え置く公算が大きい。米サブプライムローン(信用度が低い借手向け住宅ローン)問題に端を発した信用不安が収まっておらず、実体経済への影響を慎重に見極める必要があると判断しているためだ。

 10月5日、市場関係者の間では、日銀が次回金融政策決定会合で政策金利を据え置く公算が大きいとの声が。写真は福井日銀総裁。8月撮影(2007年 ロイター/Yuriko Nakao)

 ただ、日銀内にはサブプライム問題をめぐる不透明感は以前より薄らいでいる見方も出始め、ある程度、霧が晴れてくればフォワードルッキングな視点から低金利を是正すべきだとの意見も根強い。10月末に公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では標準シナリオを維持するとみられ、リスク項目を点検しつつ、あらためて利上げ時期を模索することになりそうだ。

 <金利調整の必要性は不変>

 「こういう(低金利)状況がいつまでも続くという認識が市場に定着した場合には、明らかに資源配分のゆがみを生じるような方向に資金が使われていくということは疑いないと思っている」──。福井俊彦総裁は9月決定会合後の記者会見で、低金利継続による副作用に警戒感を示し「今後とも標準的なシナリオ通り経済が動いていくのであれば、金利の調整の必要性にいささかの変わりもない」とあらためて強調した。

 そこで焦点となるのが、今後も標準シナリオを維持できるか否かだ。日銀は米国経済の減速可能性を認めつつも「米国経済が多少減速しても、新興国などが好調に推移していることから、世界経済の成長シナリオは変わらず、日本経済の標準シナリオも見直す必要はない」(多くの幹部)とみており、サブプライム問題をめぐるリスクの見極めがつけば、経済・物価の改善度合いに応じて利上げに踏み切るべきとの意見が多い。実際、サブプライム問題で混乱していた8月決定会合時でさえ、何人かの委員が「データの分析をさらに深めた上で、先行き、金融市場が落ち着きを取り戻し、経済・物価情勢が見通しに沿って展開していくとの確信を持つに至った時点では、金利水準の調整を先送りすることは適当ではない」(議事要旨)との見解を表明していたほどだ。

 <GDP予測値は微修正も>

 もちろん、標準シナリオを変えるほどではないが、不安材料もある。国土交通省が発表した8月の新設住宅着工戸数は前年比43.3%減の6万3076戸、季節調整済み年率換算は72万9000戸と大きく落ち込み、遡及可能な1965年以降、最低の数字となった。建築基準法の改正が響いた形だが、日銀内には「住宅投資の割合はGDPの5%に過ぎないが、間接的な影響もあり、数字以上に深刻な問題」と指摘する幹部もおり、瞬間風速的に実質国内総生産(GDP)への影響は避けられないとの見方も出ている。

 これに対して、岩田一政副総裁は「これで住宅投資の基調がここにきて何か変わったとは思っていない。ある意味で極めてテクニカルなことで、07年度の成長が少し下がっても、08年度にはその逆が出るはずだと考えられるので、2年間通してみれば従来と変わらない」(山口県金融経済懇談会後の記者会見)との認識を示している。

 須田美矢子審議委員が三重県金融経済懇談会のあいさつで指摘したように、中小企業の状況も気がかりだ。実際、9月の企業短期経済観測調査(短観)でも、大企業の景況感は高水準を維持したものの、中小企業の景況感は一段と悪化し、企業格差が浮き彫りとなった。須田委員は、生産・所得・支出の好循環メカニズムの波及スピードが少し遅い理由について「ひょっとしたら、中小企業でコスト高を転嫁できないことによる収益の低減と、賃金に下押し圧力を掛けざるを得ないという部分があるのではないか」と推測するが、「中小企業対策は、金融政策だけでは解決できない」(複数の幹部)だけに、対応が難しい。

 一部に利上げにより円安を是正すれば、原材料の輸入価格を抑えることができ、収益圧迫に悩む中小企業を後押しするとの見方もあるが、円高は輸出企業にとって打撃になるだけに、根本解決にはならない。

 <利上げめぐる環境に厳しさ>

 「かつてより不透明性は薄らぎつつあるが、不透明感の払しょくとういうところまでは至っていない」(岩田副総裁)、「流動性に対して疑心暗鬼になっているような状態では、みなさん落ち着いた形で物事を考えられないので、そのときは見ている(現状維持)ということを選びたい」(須田審議委員)と、日銀内には、当面は経済・市場動向を慎重に見極めるべきとの意見が多い。

 問題は、どこまで霧が晴れたら政策行動に移るのかという点だ。福井総裁は、8月、9月と政策金利を維持した理由について「シナリオ通りにほぼ経済は動いているけれども、それを取り巻くリスク要因について不確実性が高まっているということなので、少なくとも前回、今回は金利の変更をしない方が良いと判断した」と説明したが、一方で「全ての問題がクリアされるまで何もできないというのであれば政策にならない」とクギを刺した。

 須田委員は「(経済の)不確実性がどの程度晴れるかというのがポイントだが、基本的には、思いのほか霧が早く晴れるとの思いもある」(三重県金融経済懇談会後の記者会見)と述べ、早期解決に期待感をにじませた。

 日銀は5日発表の9月米雇用統計などを踏まえ、ギリギリまで見極める構えだが、4日には欧州中央銀行(ECB)が政策金利の据え置きを決めたほか、米連邦準備理事会(FRB)の追加利下げ観測も出ており、低金利是正に向けた環境は厳しさを増すばかりだ。

 オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)金利が織り込む年内の利上げ確率は5日現在で5割程度あるが、市場にはECBがこの先も利上げを見送れば「12月利上げの可能性を摘んでしまうリスクが出てきた」(外資系証券関係者)との声も出ている。日銀は追加利上げに向け、これまで以上に「市場との対話」を丁寧に進める必要がありそうだ。

(ロイター日本語ニュース 志田 義寧)

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