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キリンと協和のM&A、FA選定で国内勢は蚊帳の外
2007年10月23日 / 07:54 / 10年前

キリンと協和のM&A、FA選定で国内勢は蚊帳の外

 [東京 23日 ロイター] キリンホールディングス(2503.T)の協和発酵工業(4151.T)の買収合意をめぐり、M&A(企業の合併・買収)をアレンジする投資銀行業界に衝撃が広がっている。

 キリンはJPモルガン証券、協和がメリルリンチ日本証券とファイナンシャル・アドバイザー(FA)がともに外資系投資銀となり、それぞれの主力銀行系列の三菱UFJ証券やみずほ証券、協和の主幹事である野村証券が蚊帳の外に置かれたためだ。今回のM&Aは食品・医薬品業界の大胆な再編という面ばかりでなく、事業会社がメーンバンクや主幹事証券との過去の取引関係を重視せず、FAを選別し始めたケースとしても注目を集めている。

 <メーンバンク系証券、主幹事野村も動揺>

 キリンによる協和買収が正式発表となった22日、キリンが採用したFAがJPモルガンだったことを知った三菱UFJ証券の関係者は「私たちにとってこの取り合わせは、ちょっと予想外だ」と動揺を隠せなかった。

 一方、協和発酵の主幹事、野村証券も今回の取り合わせは寝耳に水。同社幹部は「うちに一言も断りなく、ここまでの大型ディールを煮詰めていたのか」と肩を落とした。

 協和の主力取引行であるみずほコーポレート銀行傘下のみずほ証券関係者も「社内は沈滞ムード。外資に(この案件を)持って行かれたとは」と言葉少なに漏らした。

 大型M&Aが明らかになると、どこがFAを取ったのかを探り合うのが投資銀行業界だ。今回の案件はTOBと株式交換で3000億円規模の大型M&Aになることに加え、異業種同士の組み合わせであることも「ディールにはくを付けた」(外資系投資銀行幹部)。それだけにFAとなった投資銀行に対する注目も高まった。

 M&Aが伝えられた前週末、業界でFA候補としてうわさに挙がったのは、キリンが主力取引銀行系列の三菱UFJ証券、協和が同じくみずほ証券。ただ、FAになったとしても「キリンと協和が当事者同士で話を固め、FAは株式公開買付け(TOB)の価格算定や第三者意見の取得だけの単純な仕事を丸投げされているだけではないか」との見方が、投資銀行業界の中では有力だった。

 キリンは三菱グループの有力企業。主力取引行は三菱東京UFJ銀行で、戦略的M&Aを積極的に展開する中で、同銀系列の三菱UFJ証券を使って06年11月のメルシャン2536.T買収を進めるなど、関係も深かった。三菱UFJ証券には、主力のビール以外のビジネスを強化し、成長シナリオをともに描いたとの自負もあり、同証券首脳は「キリンとは大変近い間柄。メルシャンのディール以来、キリンとはいろんな案件をやっている」と関係の深さに自信を示していた。

 協和は主幹事が野村証券だが、みずほ証券との関係も強い。2002年に同社の焼酎(しょうちゅう)事業部門をアサヒビール(2502.T)に売却した際にFAに採用された。「協和は集団指導体制で、事業売却の話がなかなか進まなかった。会社の中をまとめ上げるのに苦労し、内部に相当に入り込んで仕事をした」と同証券関係者は両社の蜜月を強調する。

 野村は、旧山一証券の経営破たんをきっかけに主幹事になったのが関係の始まりだが、海外IRを取り仕切るなど、日常的な付き合いも深かった。キリンと協和は、それぞれ親しいとされる証券会社の裏をかいて、大型ディールを進めていたことになる。

 <FA取得の外資、勝因は秀でた提案の中身>

 関係の深い証券会社がありながら、キリンと協和はなぜ外資系投資銀行に走ったのか――。

 キリンのある幹部は、JPモルガンを採用した理由について、消費財メーカーのディールで実績も残し信頼性も高いと指摘したうえで「提案の中身がよかった」と話す。同幹部によると、JPモルガンは、協和買収のFA契約を結ぶ前、数年間かけてキリンの医薬担当幹部や持ち株会社首脳らと関係を構築。世界的な医薬業界の合従連衡の動きや、今後の生き残り策を提案し、協和との統合でも、メリットや統合の足かせになるリスクについても詳細な詰めの話し合いをしたという。同幹部は「本当によくやってくれた」と評価する。

 FAの選定について「三菱グループだから三菱UFJという時代でもない」と説明。「次のFAはゴールドマンかもしれないし、メリルかもしれない。野村と心中などといった気持ちは一切ないし、そうした考え方に意味はない」と言い切った。

 実際、JPモルガンは医薬業界でのM&Aには定評がある。05年に大日本製薬と住友製薬の合併(現大日本住友製薬(4506.T))で大日本のFAを担当。04年には米製薬大手メルクによる萬有製薬の子会社化ではメルクのFA、02年10月には中外製薬(4519.T)のロシュROG.VX傘下入りで中外のFAをつとめるなど、医薬業界の本格再編のスタートを予感させる案件で実績を積んできた。

 一方、協和発酵は「医薬業界に精通したところを選んだ」(広報)と説明。メリルリンチは、07年10月の三菱ウェルファーマと田辺製薬の合併(現田辺三菱製薬(4508.T))で田辺のFA、06年9月の三共と第一製薬の経営統合(現第一三共(4568.T))では第一製薬のFAなどで実績を積んだ。モルガンスタンレー証券からは、05年4月の山之内製薬と藤沢薬品工業の合併(現アステラス製薬(4503.T))を手がけた薬品業界担当のインベストメント・バンカーなどを複数名引き抜いてチームを強化し「実績と信頼を強固なものにしている」(国内系証券)と定評が高い。

 独立系M&AアドバイザーGCAの佐山展生・代表取締役パートナーは、今回メーンバンク系の投資銀行や主幹事証券がFAにならなかったことについて「事業会社が義理や昔ながらの関係を抜きにして、どこにFAを頼むべきかをようやくゼロベースで考えるようになった証(あかし)」と話し、実力ベースのFA選定の流れを予想している。

(ロイター日本語ニュース: 江本 恵美)

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