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米財政政策に注目する市場、失望なら大幅な株下落リスク
2008年1月18日 / 11:19 / 10年後

米財政政策に注目する市場、失望なら大幅な株下落リスク

 [東京 18日 ロイター] 米サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン )問題を起点にした金融不安に揺れる世界の金融・資本市場は、米財政・金融当局の動向に一喜一憂する展開になりつつある。

 1月18日、米サブプライムローン問題を起点にした金融不安に揺れる世界の金融・資本市場は米財政・金融当局の動向に一喜一憂する展開になりつつある。写真は2006年1月に東京証券取引所で撮影(2008年 ロイター/Toru Hanai)

 大幅な利下げの可能性に言及したバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の発言をきっかけに、先行き不安を深めた米市場は株価が大幅に下落。東京市場でもいったん日経平均が400円超の下落となったが、ブッシュ米大統領の発表する政策パッケージや米当局による公的資金注入期待が盛り上がって午後の取引では、日本株とドルが買い戻された。ただ、この期待が失望に変わった場合、大幅な株価下落が起きるのではないかとの懸念も広がっている。

<米株の大幅下落におびえた午前の東京株>

 18日午前の株式市場は日経平均が急反落した。フィラデルフィア地区連銀業況指数の急低下やメリルリンチMER.N決算の大幅赤字を受け、米国景気に対する不安が一段と強まって、東京市場でも海外勢の売りが先行。先物ディーラーなどの追随売りが出て下げを加速させる形となった。

 三菱UFJ証券・シニアストラテジストの白木豊氏は「先進国は金融緩和状態にあり、運用資金は潤沢だが、投資家のリスク許容度が低下しているため、効率的な運用ができない市場のポジションは落とされやすい。日本株市場は人口減少など長期サイクルでも悪化が予想され、好材料が少ない。世界の市場の中でも売りの優先順位が高い市場とみなされているようだ」と語った。

 また、新光証券・エクイティ情報部次長の三浦豊氏は「シティグループ(C.N)やメリルリンチMER.Nの決算発表でもアク抜け感が出ないのでは、日本の不良債権と同様、本体から切り離してライトオフする必要があるのに、それが進んでいないためではないか」と指摘。「2月は欧州金融機関の決算発表が控えており、この結果によってはサブプライムローン絡みの損失増からクレジット・クランチ懸念が拡大する可能性もあり、株式市場は不安定な動きとなるかもしれない」との見通しを示している。

 <米大統領の政策対応に期待感>

 他方、大和住銀投信投資顧問・上席参事の小川耕一氏は、米株の大幅下落に関し「バーナンキFRB議長の議会証言を受けて、これまでリセッション・シナリオを支持してこなかった市場参加者が驚いて売った側面もある」と指摘する。ただ、米当局のリセッションへの対応は迅速な上に、日本株は世界経済の減速シナリオまで先行して織り込んでいる状態で「利下げなど米国の政策に効果が出てくれば、それに伴い日本株も上昇してくるだろう」と予想している。

 実際、午後の取引で日経平均は大幅に反発した。この背景としてある邦銀関係者は「ブッシュ米大統領が18日に景気刺激策を発表する予定で、その中には1000億ドル─1500億ドルの財政規模を伴う刺激策が盛り込まれそうだとも伝えられている。こうした米財政出動への期待感が、市場でにわかに盛り上がっていた」と話す。

 また、外資系証券の関係者は「米連邦預金保険公社(FDIC)のベアー総裁が、サブプライム問題の対策に政府が介入する可能性が高まっていると報道され、これまでよりも米政府がサブプライム問題に関与するとの期待感が高まって、ドル買いや日本株買いが出ていた」と述べた。

 ただ、ある国内証券の関係者は「日本株買いやドル買いは、いずれも利益確定の取引で、政策への期待感は後付けの理由だろう」と語る。

 <海外勢は国内中長期債を3週連続で買い越し>

 円債市場でも、午前は株安をにらんだ動きとなり、海外勢の株先売り/債先買いを巻き込みながら、一時138円35銭と前日高値まで買われた。

 だが、急速な上昇相場で高値警戒感が浮上。30年債入札結果や米景気刺激策を見極めたいとして、上値追いに慎重ムードが広がった。「金利低下の方向は変わらないとしても、投資家は現在の水準感で買い続けることに抵抗感があるのだろう」(国内証券)という。

 財務省が午前8時50分に発表した1月6日─12日の対外対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると、対内債券(中長期債)投資は4701億円の買い越しとなった。買い越しは3週連続。対内短期証券は3097億円の売り越しと2週ぶりに売り越しに転じた。一方、対内株式投資は649億円の売り越しとなった。

 大和総研・債券ストラテジストの奥原健夫氏は「欧米投資銀行の株式ポジションがショートに傾きつつあるなか、債券は米国の景気後退、日本の景気減速をにらんでデュレーションを長期化する動きが出ているのではないか」との見方を示した。

 <外為市場で大量の円コールオプション買い>

 外為市場でも、午後になって株価が反発すると、リスク回避の円買いが一服してドル高/円安方向にドル/円が進んだ。「海外勢の中に株とドルの買い戻しをリンクさせる動きがあった」(外資系証券)との声が出ていた。 

 市場では、前日海外からきょうの東京にかけて、オプション市場で大量の円コールオプションが買われたことが話題となっている。買いは1年物の1ドル=80円ストライクで、市場では「(円高地合いの長期化をにらんだ)海外投機筋のヘッジ取引ではないか」(外銀)との見方が出ている。複数の市場筋によると、買い手として米系証券や英系銀行の名前が挙がっている。

 <米当局の機動的な対応に期待するマーケット>

 マーケットでは、米当局による政策対応への期待感が高まっているが、新生銀行・アセットマネージメント部部長の作本覚氏は「株価は減税を織り込み始めており、小規模では織り込み済みに終わる可能性もある。金融機関に対する公的資金等投入も必要かもしれない。時期が遅れるほど市場の要求度が高まるため、素早い政策対応が必要だ」と述べている。

 ある邦銀関係者は、ブッシュ大統領の政策パッケージへの米市場の反応が、この先の世界のマーケットの行方を大きく左右すると予想する。「もし、米市場が失望すれば、米株市場は大幅な下落に直面し、日経平均も週明けに1万3000円割れが見える展開になりかねない。米銀への公的資金の注入まで視野に入れた対応をいずれ、迫られることになるのではないか」と懸念を示す。

 東海東京証券・チーフエコノミストの斎藤満氏は、バーナンキFRB議長の議会証言での発言には「景気認識に対する相当深刻な懸念が含まれていた。実質ゼロ金利までも展望した大幅な利下げ路線にかじを切ったとみていい」と分析。そのうえで「米市場関係者は、ダウの底値は1万2000ドル程度と見ていた向きが多かったが、米財政当局が機動的に対応しない場合、さらに下値を模索する可能性がある」との見通しを示し、日本株についても「前途は多難だろう」と述べている。ただ、「新興国向けの輸出の比率が日本企業では高まっており、一部の海外勢の日本株への見方は悲観的に傾きすぎている」とも話している。

 (ロイター日本語ニュース 田巻一彦、石田仁志)

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