February 9, 2008 / 12:53 PM / 10 years ago

世界的な市場混乱に直面し形骸化が鮮明になったG7、メンバー国チェンジの声も

 森 佳子記者 

 [東京 9日 ロイター] 9日に開かれた7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、不確実性が高まる世界経済や金融市場の安定化についての討議を終え閉幕した。だが、サブプライム(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題に端を発した世界的なマーケットの混乱と景気後退リスクに直面しても、有効な具体策は示されず、会議後に各国が個別に開いた会見では、不協和音も目立った。

 「形骸(けいがい)化」・「サロン化」が進んでいると言われて久しいG7会議は、世界のパワーバランスをより正確に反映させるためにメンバー国の交代が必要だとの声もある。ドルを基軸にすえた現在の国際金融システムが揺らぐ中で、新システムの構築はできるのだろうか。  

 <米国に距離を置く欧州>  

 G7の形骸化が進んだ背景には、メンバー間の相互不信がありそうだ。

 ポールソン米財務長官はG7後の会見で「世界市場の混乱は深刻で長引く公算で、緊張を和らげるために各国は、緊密に協力する必要がある」 と強調した。米国はG7会議では他のメンバーに財政出動を求めなかったものの、既に大幅な金融緩和と大型の景気対策を決断した米国は、欧州諸国とその他の国々が米国の需要落ち込みを埋め合わせるために必要な措置を講じるべきだとG7前から主張してきた。

 これに対して、欧州は一定の距離を保った。欧州中央銀行(ECB)理事会のメンバーであるドラーギ・イタリア中銀総裁は会見で「欧州では信用収縮は起きておらず、米国とは同じ状況にない」と述べ、シュタインブリュック独財務相は「ドイツで景気刺激策や成長見通しの改定が必要だとは思わない」と指摘。「欧州が金融市場の混乱に巻き込まれずに済むとは思っていないが、ファンダメンタルズはしっかりしている」とユンケル・ユーログループ議長は言う。 

 欧州が米国に距離を置く姿勢は、今回始まったことではない。「ここ10年ほど、G7を自分の都合に合わせて使おうという米国の意図があからさまで、欧州諸国はG7会議に距離を置くようになった。今となっては、ほとんどの国が、真剣に議論して具体的な結論を出すフォーラムだとは思っていないだろう」(国際金融筋)という。

 「ユーロ諸国はユーロの導入後、しばらくは米国に気を使っていたが、その後は米国が何を言っても、真剣に取り合うことは無くなり、基本的に相手にしなくなった」とファースト・インターステート・リミテッド香港のCEO兼チーフ・インベストメント・マネージャーの中山茂氏は分析する。 

 トリシェECB総裁は、国際金融市場の混乱は、米経済の対外不均衡(米経常収支赤字)に起因するとの見解を明らかにしているが、G7後の会見でトリシェ総裁は「強いドルが米国の国益であるとの米高官らの考えを、興味深く拝聴した」とやや皮肉を込めて述べている。累積する巨額の対外赤字を抱える米国が、今後もドル高政策を続けることは不可能なことを、同総裁は十分承知しているはずだ。

 今回はG7会議に先立って、米当局者がG7関係国に対し、通貨の相対的な強さに関する協議は歓迎できないとして、米国が為替に関する公式協議に参加しない意向を伝えている。

 他方、ミロウ独財務次官は、欧州はユーロだけが為替調整の負担を負うことを望んでいないとし、ユーロ圏非公式財務相会合議長であるユンケル・ルクセンブルグ首相兼財務相は、G7は為替に関する問題を討議しなければならないと主張した。 

 米独の確執は根深い。昨年4月にワシントンで開かれたG7には、ドイツのシュタインブリュック独財務相がアフリカへの家族旅行のために欠席し、5月にドイツのポツダムで開かれたG8財務相会合には、ポールソン米財務長官が多忙のために欠席した。  

 <米国の弱体化とメンバー交代>  

 不協和音が目立つG7にメンバー国交代の声も上がっている。

 米国はG7を含むさまざまな国際的フォーラムを利用して、アメリカ型市場主義を世界に広げたが「現在は、経済、金融、外交面でアメリカの単独主義的行動が引き起こした多くの矛盾が清算されている過程で、こうした流れにマッチしないG7が求心力を欠き、サロン化するのは当然」と東海東京証券・チーフエコノミストの斉藤満氏は語る。

 「米国の弱体化の中で、節度のない非道徳的(immoral)行動は、特に米金融界でまん延している」と斉藤氏は続ける。「アメリカは詐欺まがいのビジネスモデルを作り上げて、世界中に押しつけた。そのモデルが馬脚を現したというのが、サブプライム問題の本質だろう」と中山氏は指摘する。

 「一国の非道徳的行動や金融節度の欠如が引き起こした国際金融市場の混乱に対して、自分はすべき事をしたので、次は他国の出番だと言われても困る、というのが他のG7メンバーの本音だろう」(国際金融筋)という。  

 「G7はグローバルな金融市場の実勢からみると、影響力をもつ代表国の集まりとはいえない。欧州代表は4カ国も必要なく、欧州連合に一本化し、後は、米国、日本と有力新興国の中国、インド、ロシアで構成すべきだ。」とロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのウィレム・ビューター教授は語る。 米国はスーパーパワーとして、ドルを中心とした戦後の国際金融システムを構築し、取り仕切ってきた。G7は1973年の第1次石油ショックをきっかけに日、米、英、独、仏の5カ国(G5)の首脳が集まり、対応を協議した先進国首脳会議(サミット)が始まりだ。その後、首脳たちとは別に5カ国の蔵相と中央銀行総裁が年3回集まり、経済金融情勢を話し合うようになったのがG5で、86年からはイタリア、カナダが加わって今のG7になった。

 当時は経済規模でみて、世界のGDPのうちG7諸国のシェアは約7割だったが、現在は5割まで低下した。

 世界の外貨準備における米ドルの比率は2000年末の71.11%から昨年9月末の63.77%まで低下し、ユーロの比率は2000年末の18.30%から同26.43%まで上昇した。昨年9月末で6兆0371億ドルの世界の外貨準備のうち、先進国が保有する分は1兆4783億ドルで、新興国が保有する分は4兆5589億ドルとなっている。

 「金融面の世界のパワーバランスを考えれば、今のG7では意味のある合意にたどり着けない。喫緊(きっきん)の課題は、ドルを中心とする国際金融システムの崩壊にどう対処し、どのような新しいレジームを構築するかということだが、目先の問題にとらわれて本質と向き合えないのが、今のG7の限界だ」と(国際金融筋)は言う。

(ロイター日本語ニュース 編集 田巻 一彦)

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