[東京 14日 ロイター] 「これから日銀の金融政策を担う人は、超低金利政策や国債買い入れ(の増額)という副作用について総括・反省しなければならない」──。民主党の国会同意人事を検討する小委員会の仙谷由人小委員長は14日、国会内で記者団に対して3月19日に任期満了を迎える福井俊彦日銀総裁の後任は、これまで日銀が実施してきた量的緩和やゼロ金利などの超緩和政策が及ぼした副作用を十分に検証して金融政策を運営していく必要があるとの認識を示した。
民主党内では、財政と金融の分離の原則を主張するグループが存在するが、加えて金融政策の副作用問題の議論も出てきたことで、民主党内の武藤敏郎副総裁の昇格をけん制する動きがさらに活発化する可能性も出てきた。
仙谷小委員長は具体的な副作用について「(日銀は)先進国の中央銀行ではあり得ない毎月1.2兆円の国債買い入れをやっている」とした上で、「その結果、円を必要以上に安くし、庶民の金融資産に金利がほとんど発生しない状況を続けている。これによって内需拡大のお題目が消し飛び、外需依存の経済構造が治癒(ちゆ)できなくなっている」と指摘。「今ほど日銀の政治・財政からの自立・独立が重要になっている時期はない」と強調した。
民主党筋によると、党内では小委員会を中心に、これまでの日銀の金融政策運営について、1)超低金利政策による家計から企業への所得移転、2)国債買い入れオペの増額による財政政策との緊密化、3)超緩和政策による円キャリートレードを通じた米サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅融資)問題との関連や原油価格高騰など投機マネーの増大──などを問題視する声が出ており、小委員会ではほぼ共通認識になっている。
ただ、小沢一郎代表は、そうした小委員会の動きと距離を置こうとしていると見受けられる発言をしている。9日の千葉市での会見では「白紙」を強調。12日の会見では財金分離論について「1つの考え方だ。財金分離の論理だけで片付けるものではないとの意見もある」と述べた。さらに総裁の同意人事について「国会関係の幹部の集まりでイエス、ノーは決まる」とし、小委員会の役割を「対象の人たちの経歴などを聴取したりすることが主たる任務だと聞いている」と語った。
小沢氏が、経歴聴取の役割とした仙谷氏らの超低金利をめぐる議論の提起は、民主党内に波紋を広げる可能性が出てきた。
(ロイター日本語ニュース 伊藤 純夫記者;編集 田巻 一彦)