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ドル買いの勢い止まり株高限定、市場の波乱に終止符は打てず
2008年3月12日 / 04:48 / 10年前

ドル買いの勢い止まり株高限定、市場の波乱に終止符は打てず

 [東京 12日 ロイター] 12日の東京市場は株高/債券安。米連邦準備理事会(FRB)の流動性供給の強化策を受けて米株が急上昇した流れを引き継いだ。強化策で市場関係者が注目したのは民間の住宅ローン担保証券(RMBS)と米国債を交換できる枠組み。

 3月12日、米FRBの流動性供給の強化策を受けて米株が急上昇した流れを引き継ぎ、東京市場は株高/債券安に。写真は2006年1月に東京証券取引所で撮影(2008年 ロイター/Toru Hanai)

 これによって、RMBSの投げ売りに一定の歯止めがかかり、同証券を大量保有するファンドの経営危機がある程度遠のき、金融機関の経営不安に飛び火するリスクが低減されるという。ただ、市場参加者の多くは対症療法としては評価できるものの根本策とはいえないとみており、負の連鎖が一服している間に金融機関がさらなる資本増強など次の一手を打ち出せるかに注目している。ドル高/株高/債券安の継続性については慎重な見方が多く、金融市場の波乱は終わっていない、との声も出ている。

 <株式は買い戻し主体>

 株式市場では日経平均が大幅高。上げ幅は一時400円を超えた。しかし、「もともと買い戻し主導であるため、上昇が止まると戻り売りが出てくる。国内実需筋の動きが鈍いほか、海外勢も日銀総裁が決まらないことなどを嫌気して見送り姿勢を継続している」(準大手証券エクイティ部)とみられ、買い一巡後は伸び悩む展開となっている。

 FRBの追加流動性対策については「目先の資金繰りを意識したものであり、米国のリセッション懸念を解決させるものではない。来週以降の米金融機関の決算で損失拡大が予想されている。信用不安を抑えることはできず、本格的に株式を買う環境にはならない」(SMBCフレンド証券株式ストラテジストの中西文行氏)と、市場の反応は冷ややかだ。

 三菱UFJ投信運用企画部ストラテジストの石金淳氏は「今回の対策はトリプルA格のMBSの価格下落に歯止めをかけるという意味で評価できる。市場はクレジット・クランチの兆しを警戒していたので、安心感を与えた」という。しかし、「米国住宅市況下落は別問題で、これは中央銀行ではなく米政府による財政支出が必要。サブプライムローン問題・信用収縮解決への抜本的な対策が待たれる」と指摘している。

 日興コーディアル証券シニアストラテジストの河田剛氏は「RMBSなどを担保に国債を貸し出す点で一歩踏み込んだ対策になった。プライマリーディーラーに貸すことで、貸し出しが細ってレバレッジを落としつつあるファンドなどに資金を流すねらいがあるとみられる」という。一方、株式市場への影響については「今回の資金供給拡大で株価が安定するとは期待しにくい。米金融機関の決算が近づいており、不安感が広がりやすい局面だ。まだ、波乱はあるだろう」という。

 <ドル買い一服で次の展開待ち>

 為替市場でも東京時間ではドル買いは限られた。ドル/円は朝方103.53円まで上昇したがその後は上値が重くなった。103.10円付近からは海外ファンドや本邦金融機関のドル売りに押され、一時103円を割り込んだ。ある国内金融機関関係者は「足元のドル売りは一服したと見てよさそうだが、新たな流動性対策の効果は一時的で、ドル売りの流れが変わったわけではない」と指摘している。

 みずほ総合研究所経済調査部のシニアエコノミスト、吉田健一郎氏は「(流動性対策は)短期的にはドルに対してポジティブといえるが、市場のスタンスは、ドルを売るのをいったん休止する程度で、積極的にドルを買う雰囲気にはなっていない」と話している。

 別の邦銀関係者は「流動性供給対策の発表をきっかけに、ドルのポジション調整で前日海外で大きく買い進まれたが、東京市場では一服感が出ている」といい、「104.20円付近までドル売りが並んでおり、103円半ばから上値に傾いていく感じではない」との見方を示す。

 一方で、三菱東京UFJ銀行チーフアナリストの高島修氏は「FRBの新たな流動性供給対策により、不安定な信用市場が落ち着きを取り戻し、ドルがサポートされるだろう。資金繰り懸念を払しょくすることで資金需要が増大する3月末を乗り切れば、4月に入っても信用市場の動揺を抑えることができるのではないか。3月末までのドル/円のレンジは101円―105円と見ている」と話している。

 ここからドルを買いに出るのか、再び、ドル売りに拍車がかかるのか。ある外銀の担当者は「現在は前日のドル急上昇で短期筋のドル売りポジションがいったん切らされた状況。一段の上昇があるのか、再び下値を試すのか、まだ決めかねて様子見の参加者が多い」という。

 <円債は押し目買いニーズ強い>

 円債市場は下落。国債先物中心限月6月限は前日比16銭安の139円34銭と続落して前引けた。米債相場が急落した流れを引き継いで売りが先行。朝方に発表された10─12月期国内総生産(GDP)2次速報が市場予想を上回ったことも売り材料視された。国債先物は商品投資顧問業者(CTA)の売りを巻き込んで、一時139円を割り込む場面もあった。

 もっとも、米欧流動性対策の効果に懐疑的な見方が出る中、売り一巡後は現物長期・超長期ゾーンに年金など国内勢の押し目買いが入ったことをきっかけに買い戻しが入り、下げ幅を縮小した。

 みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、流動性対策は資金供給であり、火事でいえば火元を消すのでなく延焼部分を食い止めるようなもので抜本的な解決にならない、という。スキームに関しては「民間金融機関が発行するRMBSがトリプルAに限定されていること、格付けを引き下げ方向で見直しがかかっているものが除外されるため、対象は極めて限られる。中央銀行のバランスシートにクレジットリスクをあまり取り込んでしまうと、そうした資産が劣化することを通じて、中央銀行の信用度・信認自体が問われかねないという恐れがあることは言うまでもない。踏み込み不足にならざるを得ないところに限界も感じる」と話している。

 一方、短期金融市場ではユーロ円3カ月金利先物が上昇している。「(流動性対策によって)多少なりとも流動性プレミアムがはく落するとの思惑が買い戻しの原動力」(国内金融機関)という。ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の上昇観測から、最近のユーロ円金先は軟調に推移することが多かった。期近物となる6月限も買われた。

 ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)とオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)金利のスプレッド拡大も一服している。市場参加者によると、円3カ月物が49ベーシスポイント(bp)付近、6カ月物は57bp付近。流動性対策でドルLIBOR/OISスプレッドが縮小した流れを継いだ。参加者からは「ドルは17―18bp前後の縮小となり、3カ月物、6カ月物ともに2月下旬の水準に戻しているようだ。ただ、過度な米利下げ期待の緩和によるOIS金利上昇が影響した面も大きい」(外資系証券)との声が聞かれる。対策をひとまず好感してはいるが、流動性懸念が完全に排除されたか

どうかは微妙な面があるようだ。

 (ロイター日本語ニュース 記事執筆:橋本 浩、編集:佐々木 美和)

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