March 17, 2008 / 6:47 AM / 10 years ago

ドル売りパニック収束に協調介入を求める声、日米欧の当局は「異床異夢」

 森佳子記者

 3月17日、市場では「ドル売りパニック」収束には協調介入が必要との声も聞かれるが、日・米・欧の通貨当局が協調行動に踏み切る可能性は現時点では低そう。写真はモニターを見つめるディーラー(2008年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 [東京 17日 ロイター] 為替市場で急ピッチのドル安が進行している。市場では「ドル売りパニック」を収束させるためにはドル買いの協調介入が必要との声も聞かれるが、日・米・欧の通貨当局が足並みをそろえて協調行動に踏み切る可能性は現時点では低そうだ。

 「米国が最も恐れているのは、国内経済がマイナス成長に落ち込むことだ。そうでなければ、わざわざ日曜の深夜に公定歩合を引き下げたりしないだろう。ドルの対外価値がいくらになろうと、外国資本が米国から怒涛を打って逆流でもしない限りは、ドル相場の安定を考えないだろう」と、在外ヘッジファンド・マネージャーは語る。

 米国内でも景気に対しては相当に厳しい見方がでてきている。

 全米経済研究所(NBER)のフェルドスタイン所長は14日の講演で、「(米経済の)状況は非常に悪く、悪化しつつあり、最悪の事態に陥るリスクもある。今年と来年が非常に困難な年になることは間違いない」と述べている。

 米連邦準備理事会(FRB)は16日深夜、公定歩合を0.25%ポイント引き下げ3.25%とし、即日実施するとの声明を発表した。 

 「米政策のプライオリティーはこれ以上の金融機関の破綻を阻止することで、為替は2の次になっているようにみえる」と東海東京証券・チーフエコノミストの斉藤満氏は語る。 

 当面の脅威は、金融機関の破綻がさらなる信用収縮を引き起こし、それが実体経済にさらなる冷や水を浴びせることだと斉藤氏は言う。「為替については、ドル離れを抑えつつ、ドルを下落させるのが得策だと考えているのではないか」と同氏は言う。

 フェルドスタイン所長は「金融・財政政策とドル安のコンビネーションで、景気の落ち込み具合をやや緩和できるかもしれないが、景気拡大を維持することは難しいだろう」と分析する。

 米景気後退観測の強まり、ドル安にもかかわらず、外国政府がドル資産を投げ売りする状況には、今のところ、至っていない。

 外国中央銀行による米国債及び米政府機関債の保有残高は、3月12日までの1週間に約174億ドル増加し、現在2兆1620億ドルに達している。 

 米国が、実体経済にまでその悪影響が及んだ不良債権問題への対策を急ぐなか、為替対策については効果を疑問視する声が多い。「協調介入が、もしあるとすれば、それは解熱剤のようなもの、一旦は高熱がひく程度の効果だろう。今回の混乱は為替が直接の患部ではない。米国の不良債権問題という患部の治療が急がれる」(都銀)との指摘もある。

 <ユーロ当局はユーロ高を受け入れ>

 ECB(欧州中央銀行)は2000年9月に自らが主導してユーロ買い/ドル売りの協調介入を実施しているが、当事と今とでは状況が全く異なる。

 「これまでECBが介入したのは、経済のファンダメンタルズと為替の方向感が著しく乖離している時のみだった」と野村証券・金融経済研究所・経済調査部エコノミストの尾畑秀一氏は指摘する。

 2000年9月当時は、欧米の政策金利差が拡大していたにもかかわらず、ファンダメンタルズと乖離してユーロ安が進行しており、ECBはユーロ買いに踏み切った。

 「今回は、欧州が金利を据え置き、米国が利下げ局面にあり、欧米の政策金利差が拡大しているなかのユーロ高で、ファンダメンタルズとユーロの方向性は合致している。ユーロ売り介入の可能性は低い」と尾畑氏は言う。

 さらに、マクロ経済面でもECBのインセンティブは低い。

 欧州では、食品価格の高騰を受け、期待インフレ率が上昇しており、賃金が高止まりするリスクがある。この環境のなか「ECBはインフレに対する警戒を当分解除できない。協調介入の効果を高めるなら、少なくとも、米国が金融セクターに公的資金を注入し、日米欧が協調利下げに踏み切れた後だろう」(尾畑氏)という。

 インフレ指標がピークアウトするのは、景況感がピークアウトしてから約1年かかるといわれている。ユーロ圏の場合、景況感のピークアウトは半年ほど前だった。

 ドル安の受け皿としてのユーロを考えれば、ユーロは目先1.6500ドルを目指すと尾畑氏は予測する。ユーロは17日、東京市場の取引で、一時ユーロ導入以来の高値の1.5905ドルまで上昇した。

 <日本で警戒感高まる>

 17日の為替市場では、ドル安のみならず、ドル以外の通貨に対しても大幅な円高が進んだことから、国内景況感の悪化に対する警戒感が高まっており、円高の進行とともに、輸出企業を中心に株安も止まらない。

 ドルは17日、12年7カ月ぶりのドル安/円高の95.77円まで下落した。

 谷垣禎一自民党政調会長は17日、日本記者クラブの講演の中で、ドル/円が一時95円台まで円高方向に振れたことに関し、急激な変動は日本にとって好ましくなく、国際的な連携が必要なときだとの見解を示した。

 額賀福志郎財務相は17日、「(為替相場の)過度な変動は望ましくない。大きな関心を持って見守っている」との認識を示した。その上で、水準についてはコメントしないとし、変動の状況を見たい、と語った。

 (ロイター日本語ニュース 森佳子 編集 橋本浩)

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