April 5, 2008 / 2:49 AM / 11 years ago

オイルマネー持たざるアラブ諸国、食品価格上昇が深刻な問題に

 [ベイルート 3日 ロイター] 湾岸アラブの産油国が原油価格の上昇で経済的に潤っている一方、石油資源に乏しい周辺のアラブ国家では、エネルギー価格や食品価格の高騰に国民が苦しんでいる。

 4月3日、湾岸アラブの産油国が原油価格の上昇で経済的に潤う一方、石油資源に乏しい周辺のアラブ国家では、エネルギー価格や食品価格の高騰に国民が苦しんでいる。写真は昨年8月、イエメンで行われたデモでパンを掲げる子供(2008年 ロイター/Khaled Abdullah)

 湾岸アラブ諸国では、潤沢な石油収入による景気過熱が物価上昇を招いている側面がある。また、多くが米ドル・ペッグ制を採用しているため、米ドル安に連れて自国通貨が下落し、輸入価格が上昇することで一段とインフレが高進するという構図にもなっている。

 一方、原油高による恩恵をさほど受けていないアラブ諸国の都市部では、インフレ抑制には難しいかじ取りが要求される。エジプトの首都カイロやイエメンの首都サヌアといった都市では、当局は燃料や食料などへの助成金の財政コストと、社会的不満の爆発といった政治的リスクをてんびんにかけなくてはならない。

 シリアの首都ダマスカスでクリーニング店を営むジハド・アル・アミンさんは「もう安いものは何一つない。記憶する限りただ同然だったパセリでさえ、3倍に値上がりした」と話している。

 アラブ地域では、食品価格上昇の打撃を最も受けるのは貧しい国。食糧を輸入に頼る発展途上国など、世界のほかの地域でも食品価格の上昇は問題となるが、中東ではあらゆる不安定要素が地域に大きく波及するリスクがある。

 国連の世界食糧計画(WFP)のスポークスマン、ロビン・ロッジ氏は「中東は極めてセンシティブな地域なので、もっとよく注視しておかなくてはならない」と指摘。エジプトやイラク、シリア、イエメン、パルスチナ自治区で約400万人に食糧を提供するWFPだが、ロッジ氏は「中東では不満や怒りの向かう先が、恐らくほかのどの場所よりも地政学的問題になりやすい。大きな貧富の格差も考慮する必要がある」と述べた。

 アラブ首長国連邦(UAE)やバーレーンでは、物価上昇と米ドルの購買力低下を背景に、出稼ぎ労働者らによる暴動や抗議行動が発生している。サウジアラビアではインフレ率が2月、27年ぶりの高水準となる8.7%に達した。

 <政治的な抑圧>

 インフレの高進が地域の中流層の生活水準に影響し、貧困層が一段と厳しい状況に追い込まれるなか、社会的な不満は一層高まっている可能性がある。ただ、一部の専門家は、それが政治的混乱にまで至るという考えには懐疑的な見方を示す。

 レバノンにあるノートルダム大学の経済学教授、ルイス・ホベイカ氏は「貧困や社会不安、今よりもひどい生活という風に影響が出るが、アラブには独裁体制による政治的抑圧があるので、一線を越えることはないだろう」と指摘した。

 食糧問題はグローバルな課題でもあり、いずれにせよ、すぐに解消されるものではない。ホベイカ氏は「主として燃料価格の上昇や発展途上経済からの需要拡大、ある部分ではバイオ燃料業界からの影響もあり、食糧が急速に減って価格は急騰している」と述べた。

 WFPが調達する穀物や豆類、植物油の価格は、過去9カ月で40%上昇したという。またロッジ氏によると、シリアの食品価格は過去半年で20%上昇。アラブ地域の最貧国の1つイエメンでは、小麦の価格が2月以降で2倍になり、米や植物油も過去2カ月で20%値上がりしている。

 レバノンで飲食料品を取り扱う会社を経営するピエール・ゾグビー氏の話では、乳製品など輸入食品の値段は、昨年の後半以降で145%上昇した。レバノン・ポンドも米ドル・ペッグ制を採用しており、ゾグビー氏は「為替の変動がわれわれに大いに影響する」と述べた。

 <各国政府の対応>

 アラブ諸国の政府の対応はまちまちだ。一部の湾岸産油国では、食品・住宅価格上昇の影響を緩和させるため、インフレ加速のリスクを冒しつつも国民の賃金を引き上げている。

 サウジアラビアは1月に公務員の給料5%引き上げを実施。ただ周辺の他国がすでに、それを上回る比率で賃上げを行っていたこともあり、国民の間には落胆の色も見える。サウジ当局はまた、冷凍鶏肉や乳製品、植物油といった食品の輸入税率引き下げの方針も発表した。

 エジプトやシリア、イエメンといった石油資源の豊かでない国は、国民に対するさまざまな助成金を維持することで財政が圧迫されている。

 ヨルダンでは2月に燃料助成金を廃止したが、ディーゼルや灯油の価格が一晩で76%も上昇した。ヨルダン政府は、公共セクターの賃金引上げと社会的なセーフティネットにより、助成金廃止の影響を和らげると約束している。

 また、1400万人以上が1日1ドル以下で生活するエジプトでは、主に食品の価格上昇を背景に、2月のインフレ率が12.1%と11カ月ぶりの高水準に達した。エジプト政府は、国内のコメの価格を抑えることを目的に、2008年4─10月のコメの輸出禁止を決定した。

 WFPの主張はこうだ。湾岸アラブ諸国は、地域の貧困対策に取り組む国際機関への拠出増額を検討すべき時に来ている。ロッジ氏は「石油の富には責任が伴うべきであり、彼らにさらに富をもたらす石油の価格が、ますます貧しい食事環境に人を追い込む一因になっているならなおさらだ」と述べた。

(ロイター日本語ニュース 原文:Alistair Lyon、翻訳:宮井 伸明)

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