June 7, 2008 / 11:31 PM / 12 years ago

五輪=バレー男子が16年ぶり五輪出場、植田ジャパンの成果と課題

 [東京 7日 ロイター] 男子バレーボールの北京五輪世界最終予選兼アジア予選は7日、東京体育館で第6戦を行い、日本がアルゼンチンを3─2で破った。日本は通算5勝1敗でアジア勢トップが確定、最終戦を待たず1992年バルセロナ大会以来4大会16年ぶりの五輪出場を決めた。

 6月7日、男子バレーボールの北京五輪世界最終予選兼アジア予選は日本がアルゼンチンを3─2で破り、16年ぶりの五輪出場を決めた(2008年 ロイター/Michael Caronna)

 イタリアとの初戦でマッチポイントをつかみながら7点差を逆転されるというショックをベテランの効果的な投入などで乗り越えた「植田ジャパン」だが、目標に掲げるメダルを手にするにはサーブレシーブの精度向上といった課題も残る。

 <「五輪を知る男」荻野主将が最後決める>

 最後は荻野正二のスパイクだった。6日オーストラリア戦の大一番で流れを変える活躍をみせた38歳のキャプテンがまたしても日本の窮地を救った。第1セットをジュースの末、レシーブの乱れから失った後、相手のミスにも助けられ第2セットは25─13で取った日本。第3セットも11─6でリードしていたが、3連続ポイントを許し11─9まで追い上げられたところで「やや早めの」(植田辰哉監督)荻野投入となった。

 石島雄介がサーブで狙われ攻撃がうまくつながっていないとみた植田監督が、ベテランの荻野を投入することで石島を落ち着かせた。

 同点にまで追いつかれたが、荻野のスパイクで突き放し、その後は相手にリードを一度も許すことなく正念場の第3セットを奪った。五輪出場の可能性を残し勝利に執念を燃やすアルゼンチンが第4セットを取った後、第5セットは再びジュースに突入。相手に何度もマッチポイントを許す苦しい展開ながら石島らの活躍でマッチポイントをつかみ、最後は荻野が決めた。

 荻野が16年前のバルセロナ大会に出場した当時は22歳で先輩についていっただけというが、オリンピックに出場し「人生が変わった」という。「もう一度出場したい、出場すれば人生が変わる五輪にみんなを連れて行きたいという思いでやってきた」38歳になりバルセロナ大会の植田キャプテンは現在の監督、荻野はキャプテンになった。

 荻野は今でも言葉より身体でチームを引っ張る姿勢を続ける。この3年半、植田ジャパンのきつい練習にも休んだことがないと少しだけ胸を張った。「最後まであきらめない姿勢が出てきた。技術的に詰めていけばいいチームになる」と手ごたえを感じている。

 <食生活からあいさつまで植田監督の「教育」>

 2005年に全日本監督に就任した植田が始めたのは選手の人間的な底上げだった。あいさつができない選手もいれば朝食を取らない選手もいたという。栄養士を雇い入れ、コミュニケーションスキルを磨き、筋力トレーニングで身体をいじめあげる。

 その結果、松本慶彦や山村宏太、越川優などは3─4キロ筋力量がアップした。他人のプレーにあまり興味を示さなかったという石島は「ありがとうと称えるまでになった」(植田監督)。底上げしたフィジカルの土台に、多彩なコンビネーションバレーという技術を乗せ上げた。世界ランキング6位(日本は12位)と格上のアルゼンチンに対しても力負けすることはなくなっている。

 ミュンヘンオリンピックの金メダル監督で現在、日本バレーボール協会名誉会長である松平康隆氏は「日本男子バレーを生き返らせた植田監督の人間教育の勝利だ」と賛辞を送った。

 今日の試合で最後のポイントが決まった後、床にうつぶせに倒れこむほどの喜びを見せた植田監督。大逆転負けのイタリア戦の翌朝は「オレにすがれ」と選手に声をかけた。きょうの試合ではミドルブロッカー出身らしいブロックの指示も効果的に決まった。厳しくありながら頼りになる植田に選手も信頼を寄せている。

 <サーブレシーブの精度と「アウェー」での精神力が課題に>

 試合後のインタビューで北京五輪の目標をメダル獲得と高らかに表明した植田監督が課題に挙げるのは、サーブに対するレシーブの精度向上だ。きょうもサーブレシーブの乱れから相手に連続ポイントを許す場面が目立った。すばやいトス回しからの多彩なコンビネーション攻撃を目指す「植田ジャパン」にとって攻撃の基点となるサーブレシーブが乱れるのは命取り。すでに前年のワールドカップで上位に入り五輪切符を手にしているブラジル、ロシア、ブルガリアは今大会に出場していない。世界の強豪から勝利を奪うにはサーブレシーブを磨くことが大前提となる。

 さらなる精神力の強化も求められる。今大会は「ホーム」の東京で開かれ超満員の応援に後押しされた日本チーム。「日本で戦うときは日本にとって『いいコンディション』であることは(海外チームは)みな承知している」(アルゼンチンのウリアルテ・ホン監督)微妙な判定はどの地域、どの大会でもあるが、マイクで日本への応援メッセージがこだまする異様な雰囲気のなか、最終セットでアルゼンチンにとって不運なコールもあった。

 「アウェー」となる北京会場で追い込まれたときに、精神力の強さを見せることができるかが課題となる。初戦敗退で崖っぷちに追い込まれた状態から5連勝して16年ぶりの北京切符を勝ち取った「植田ジャパン」だが、劣勢となったときに簡単に連続ポイントを許してしまうもろさも見せた。きょうの試合で最多の28点を挙げたエース、山本隆弘は前半は嫌な流れを切る活躍をみせたが、後半はやや精彩を欠いた。ピンチのときにベテラン荻野の投入に頼るだけでは36年ぶりのメダル獲得は容易でない。

 (ロイター日本語ニュース 伊賀 大記記者) 

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below