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環境特集:各国で急拡大する太陽光利用、風力発電も存在感増す

 [東京 10日 ロイター]  携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」で世界の市場を席けんしたパソコン大手の米アップルAAPL.O。今度は、パソコンなどに接続せずに充電できるソーラーパネルを開発、特許を申請し、環境シフトでも業界の先陣を切る。

 7月10日、環境に優しいエネルギーとして太陽光利用技術に注目が集まっている。写真はポルトガル南部の発電所で4月に撮影したソーラーパネル(2008年 ロイター/Jose Manuel Ribeiro)

 松坂大輔投手らが在籍する大リーグ「レッドソックス」も、本拠地であるボストンのフェンウェイパークに太陽光を用いた給湯装置を設置した。球場で使っているお湯の燃料となっているガスの3分の1を太陽光に置き換える計画だ。

 環境に優しいエネルギーとして大きな可能性を秘めながら、これまで何十年も化石燃料の脇役に甘んじてきた太陽光の利用が大きな広がりを見せている。同様に、風力発電も3年ほど前から着実に実用化が進んでおり、米グレートプレーンズ地方(ロッキー山脈以東の大平原地帯)では、「異星人」ような風力タービンが林立する。原油をはじめとする化石燃料の高騰や地球温暖化への懸念が広がる中で、かつては夢だった新エネルギーの利用が身近な世界に浸透しつつある。 

 <2010年に太陽電池と半導体設備の投資が並ぶとの試算> 

 これまで太陽光の利用は、ソーラーパネルの値段や屋根に取り付けるコストがかさみ、石炭など従来のエネルギー源と価格面で競争できなかった。しかし、アナリストや科学者の間では、化石燃料の価格がこのまま上昇すれば、太陽エネルギーは今後2―5年以内に十分なコスト競争力が得られるとの見方が高まってきた。

 リーマン・ブラザーズのアナリスト、ビシャル・シャー氏は「今後2―3年以内には、世界の多くの地域で競争力が付くだろう」と指摘する。北米最大の太陽電池メーカー・サンパワーSPWR.Oのトム・ワーナー最高経営責任者(CEO)は、米国や他の地域で太陽光と火力発電のコストが同じになる「グリッド・パリティー」は「約5年以内、早ければ2010年までに実現する」とみる。 

 米国では、25の州およびワシントンDCで、今後5―15年以内に、風力や太陽光などクリーンなエネルギー源による発電量を全体の最大30%に引き上げることを義務付ける法律が成立した。2003年にそのような規制を定めていたのは、わずか10州だった。すでに米国の太陽光発電市場はドイツ、日本、スペインに次いで世界4位。2007年には発電能力が前年を45%上回る750メガワットに達すると予想されている。これは約55万戸の家庭に電力を供給できる量だ。

 太陽光発電市場には、民間企業の参入意欲も高まっている。インテルINTC.OやIBMIBM.Nが太陽光発電事業に乗り出す方針を明らかにしたほか、ゼネラル・エレクトリックGE.Nは太陽光エネルギー事業の年間売上高が今後3年程度で10億ドルに達するとの見通しを示した。米ハイテク調査会社のアイサプライは、全世界の太陽電池の生産設備への投資が増加し、投資額は2010年までに半導体製造設備への投資と並ぶと予測している。 

 <不足する送電インフラ> 

 ただ、太陽光発電や風力発電の普及を阻む要因は、コストの高さよりも送電インフラの不足との指摘が少なくない。クリーンな電力を都市部に運ぶ送電網の建設は容易ではなく、再生エネルギー専門家の多くは、送電網を充実させる政策がなければ、太陽光および風力発電プロジェクトの見通しが明るくなることはない、と警告する。

 グーグルGOOG.Oで再生エネルギーの推進責任者を務めるダン・ライチャー氏は「再生可能なエネルギーの比率が2%にとどまるか、あるいは20%に達するかは、新たな送電網の整備がどこまで進むかに左右されるだろう」と述べている。

 例えば、風力発電の先進地域であるテキサス州では、発電地域である西部からダラス、ヒューストン、サンアントニオなど大都市に送電するには送電網の建設が必要とされている。しかし、送電網の建設には環境保護主義者などの抵抗も強く、課題は大きい。 

 <気球による太陽エネルギー供給も> 

 発電所を建設するのに必要な土地やインフラが乏しい地域に電力を供給する対策として、巨大な太陽エネルギー気球が役立つとの研究もある。この研究を行ったイスラエルの科学者グループによると、気球を用いれば、海や砂漠の真ん中に降り注ぐ強力な太陽エネルギーを活用することが可能になる。

 研究によると、ソーラーパネルで覆われた巨大気球にヘリウムが満たされ、数百メートルの高度まで浮かび上がる。気球はワイヤーケーブルでインバーターと結ばれ、家庭に電力が供給されることになる。

 このアイディアを生み出したピニ・グリフィル氏は、システムができ上がるのは、まだ1年先になるとしながらも、直径3メートルの気球が1キロワットのエネルギーを生み出すことができると説明している。これは25平方メートルの従来型ソーラーパネルが生み出す電力と同じ水準だが、その電力を生み出すコストは従来型ソーラーパネルが約1万ドルかかるのに対し、気球は4000ドル以下で済むという。

 グルフィル氏は「気球は二酸化炭素を出さず。環境に全く悪影響を与えない。ヘリウムは自然界にある物質で、環境にやさしい。そればかりか気球は発電所を建設するのに必要な土地や建材などを必要としない」と話す。 

 <存在感増す風力発電> 

 米国ではエタノールが代替エネルギー源として用いられるようになり、特に農村部に大きな影響を与えているが、3年ほど前から風力発電も着実に存在感を増してきた。グレートプレーンズ地方(ロッキー山脈以東の大平原地帯)には、風力タービンがあちらこちらに林立している。

 米ミズーリ州の小さな田舎町ポートロックで、265フィート(約80メートル)の高さを持つ風力タービンが4枚の羽を光り輝かせている。のどかな牧草地やトウモロコシ畑の中に異星人が降り立ったかのようだ。だが、この「異星人」は村の人々から暖かく迎えられている。

 この風力発電施設を運営するウインド・キャピタル・グループのエリック・シャンバーライン氏は、村人から「風野郎」と呼ばれる、村ではちょっとした有名人だ。「これは環境を汚さないし、税金も納める。人々に仕事すら与えている」と同氏は自慢げだ。実際、多くの人々は喜んでクリーンな電気を使っている。

 米国の発電量に占める風力発電の占める割合はわずか1%だが、業界関係者の多くは、拡大に弾みがつくと予想している。

 米風力エネルギー協会のエグゼクティブ・ディレクターを務めるランドール・スウィッシャー氏は「今は非常に追い風が吹いている。人々は世界の気候に何が起きているかを示すデータを注目し始めた」と語る。 

 <風力発電施設の建設に弾み> 

 米国では昨年、34州で3100機の風力タービンが建設されたほか、現在も2000機が建設中だ。現在米国内で稼動している風力タービンは2万5000機を上回り、投資額は150億ドルに上っている。

 米エネルギー省は5月に、風力による発電量は現在の16.8ギガワットから2030年までに304ギガワットに拡大し、全体の電力源に占める比率も20%に達する可能性があると明らかにした。その目標を達成するためには、2017年までに毎年7000機の風力タービンを建設する必要があるという。

 産業界も政府の前向きな姿勢に応えようとしている。ゼネラル・エレクトリックは、750メガワットの風力タービンを供給する契約を結んだ。これは約20万の家庭に電力を供給できる量だ。

 ネブラスカ州では約2万5000の家庭に供給できる量の電力を生産する同州最大の風力発電施設の建設に着手したほか、アイオワ州では電力会社のウィスコンシン・パブリック・サービス社が2億5100万ドルを投じて風力発電施設を建設する許可を取得した。テキサス州では著名投資家のT・ブーン・ピケンズ氏が、約100万戸の家庭に電力を供給する発電能力を持つ風力発電施設に投資する計画を発表した。 

 <世界のバッテリー目指すノルウェー> 

 風力発電に力を入れているのは米国だけではない。ノルウェーは世界有数の産油国だが、同時に風力発電の「先進国」でもある。2025年までに最大440億ドルを投じて海上に巨大な風力発電施設を建設し、「欧州のバッテリー」(ハーガ石油エネルギー相)になることを目指している。

 ノルウェーの産業界や政府当局者で構成するエネルギー評議会は「グリーン・エネルギー」の輸出により、欧州連合(EU)は、2020年までに風力、太陽光、水力、波力など再生可能エネルギーによる発電の比率を20%に引き上げるという目標を達成できるとしている。

 ノルウェーは北海からバレンツ海に至る欧州で最長の海岸線を持っている。ハーガ石油エネルギー相は「わが国は神の加護を受けた幸運な国で、大きなエネルギー源を持っている。風力発電については間違いなく大きな潜在力がある」と述べている。

 ノルウェーが計画している風力発電施設では、8つの原子力発電所と同じ規模の電力が生産できるという。

 欧州では風力発電をめぐり、デンマーク、英国、ドイツなども、陸上や推進の浅い海域での発電に力を入れている。しかし、ノルウェーの利点は、深海部における原油やガスの開発施設を生かせるところにある。

 ノルウェー最大のエネルギー企業であるスタトイルハイドロSTL.OLは先に、8000万ドルを投じて世界初の本格的な海上風力タービンを建設し、2009年に稼動させる計画を明らかにしている。

 (ロイター日本語ニュース 翻訳・編集 長谷部正敬) 

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