July 24, 2008 / 7:55 AM / 10 years ago

米空売り規制が日本株にも恩恵、市場に迫る輸出急減速の黒雲

 [東京 24日 ロイター] 24日の東京市場では、日経平均が大幅続伸して1万3500円台を回復した。米株高を材料にしているが、市場参加者の中では、米当局の打ち出した空売り規制が効き、回り回って日本株も押し上げられているだけとの冷めた声も少なくない。

 7月24日、米空売り規制が日本株にも恩恵をもたらし、東京市場では日経平均が大幅続伸。写真は2006年4月に東京証券取引所で(2008年 ロイター/Yuriko Nakao)

 そうした中で発表された6月貿易統計では、輸出の急減速が明確になり、エコノミストの中からはこの先の景気後退を懸念する声も出始めた。マクロ統計が示す警鐘と短期的な楽観にわくマーケットの間に大きなかい離が生じている。

<GSE支援法案の米下院可決、株高を後押し>

 株式市場は、原油価格下落による米株高と円安進行を好感し、薄商いながら幅広く買いが入った。欧州系マネーなど海外勢の一角がショートカバーを引き続き入れているという。

 原油価格下落に加え、市場に安心感をもたらしたのが、米下院で23日、米政府系住宅金融機関(GSE)の支援を含む住宅市場関連法案が可決されたことだ。市場では「主力輸出株である東芝(6502.T)やトヨタ自動車(7203.T)がネガティブな材料が出たにもかかわらず買われるなど、市場は売りのきっかけではなく、悪材料出尽くしとみる空気に変わってきた」(明和証券シニア・マーケットアナリスト 矢野正義氏)との声が出ている。

 また、三菱UFJ投信・戦略運用部副部長、宮崎高志氏は「景気が悪くなっているため予断は持ちにくいが、GSEを含む金融セクターへの不安感は織り込んだ。ただ、ここまでの日米株価の上昇にはセンチメント先行の部分もあり、このまま一本調子で戻るとは思っていない。本格的な上昇トレンドに乗ったというより、レンジのなかで上限に近づいているということだろう」とみている。

 <輸出減速から設備投資への波及、要注意の情勢に>

 だが、この先の道のりが険しさを増す気配も出てきた。財務省が24日に発表した6月貿易黒字は、前年比88.9%減の1386億円と事前予想の5030億円を大きく下回った。輸出が同1.7%の減少と2003年11月以来の前年比マイナスとなったことが要因だ。

 第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏は、輸出の急減速が明確に出ており、この先の景気動向をみる上で注目するべき結果になっていると指摘する。特に目立つのは「欧州向けの輸出で、アジア向けも頑張っているが伸びが鈍化した。業種別に4─6月期の輸出を見ても、化学、金属、自動車と軒並み悪く、年初から振るわなかった電機と合わせ、輸出の失速はこの先の景気減速ないし後退リスクを意識させる内容になっている」と述べる。

 仮に今後の輸出が減速からマイナス基調になった場合、半年程度のタイムラグを置いて設備投資に波及するため「これからの輸出動向を注視する必要が出てきた」と熊野氏は話している。

 財務省は貿易統計の発表時に輸出減少が一時的かどうかについて「特定は困難」と述べるにとどまった。世界的な荷動きの動向を知る上で注目されているばら積み船運賃の総合指数・バルチック海運指数は23日までに8日連続で低下しており、荷動きに変化が生じている可能性もある。この動きを反映し、東京株式市場でも三菱商事(8058.T)や丸紅(8002.T)など大手商社の一角が売られた。

 <金融株主導の日米株価上昇>

 ある邦銀関係者は「米株の上昇は、金融セクターが主導している。これは大量に金融株を空売りしていたヘッジファンドが、空売り規制で買い戻していることが大きく影響している。その結果、ここ数日の日経平均も金融株主導で上げてきた。空売り規制が日米株価の上げの震源地であることは間違いない」と述べている。

 外資系証券のある関係者も「GSE支援法案の米下院通過などは、後付けの材料だ。ヘッジファンドなどの買い戻しは、しばらく続きそうなので、米株と日本株の下値不安はしばらく回避できそうだ」とみている。

 だが、先の邦銀関係者は「輸出のブレーキが明確になれば、日本株は買えないというムードが広がる可能性がある。貿易収支に東京市場の関係者はあまり注目しなかったが、タイムラグを伴って輸出関連株に売りが出てくる展開も予想される」と予想している。

 <外為市場で懸念される欧州景気の失速>

 株高/債券安の中で、前日欧米市場でドル高に傾いたドル/円は、東京市場で上値の重い展開だった。早朝の取引ではドルが上昇したものの、1カ月ぶりの108円台にかけては「108.00円で輸出企業の売りがかなり多く控えている」(都銀)ほか、108円前半でも多くの輸出企業が売り姿勢を示しているといい、買いの勢いが細った。

 ドルの行方をめぐり、市場ではきょう午後5時(日本時間)に独IFO経済研究所が発表する7月業況指数に関心が集中している。ドル買いが勢いづく中、ユーロ圏景気をけん引してきたドイツ経済の下振れが明らかになれば、対ユーロでのドル買いが加速し、対円も含むドル全般の上昇が一段と勢いづく可能性があるためだ。

 ドイツでは15日に発表された欧州経済センター(ZEW)の7月景気期待指数が過去最低を更新。ユーロ/ドルはドル反発とユーロ圏経済減速の可能性を織り込む形で15日に付けた史上最高値1.6040ドルから、前日までに1.5670ドルに下落。現在も2週間ぶりの安値圏で取引されている。

 別の邦銀関係者は、最近の欧州景気との関連で「6月の日本からの輸出も大幅に減っている。中欧や東欧の景気拡大のテンポが緩やかになり、ユーロ圏の景気の先行きがあやしくなっている」と話している。

 (ロイター日本語ニュース 田巻 一彦)

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