September 11, 2008 / 5:30 AM / 11 years ago

リコーの米販社買収を市場は評価、キヤノンの反撃に注目

浜田健太郎記者、平田紀之記者

 9月11日、リコーによる米大手販社買収を市場は評価しており、キヤノンの反撃に注目が集まっている。写真は都内で株価ボードを見る通行人。昨年3月撮影(2008年 ロイター/Kiyoshi Ota)

 [東京 11日 ロイター] リコーが米国の事務機ディーラー大手、アイコンオフィスソリューションズの買収計画を8月27日に発表してから2週間余り。リコー株は買収発表直前の終値から今月10日までに22円高、1.2%上昇した。

 買収金額約1700億円の大勝負に対し市場が好意的反応を示している。

 ただ、事務機販売業界は人材の流動性が激しく、競合他社によるアイコン社の人材引き抜きやリコーに近いディーラーの切り崩しなどが活発化する可能性は否定できない。事務機メーカーによる独立系ディーラーの買収が相次いだ中、買収に動かなかったキヤノン(7751.T)がどのような巻き返しに出るのかも注目される。

 リコーがアイコン社買収を発表した翌営業日の8月28日、リコー株の終値は前営業日比50円高の1777円だったのに対しキヤノンは260円安の4790円と明暗が分かれた。9月10日終値ではリコー1749円、キヤノン4460円で、リコー株は買収発表日の終値比で高値を維持する一方、キヤノン株は安値が続いた。11日午前の終値はリコーが前営業日比31円安の1718円、キヤノンが80円安の4380円。

 今回の買収について大和総研の光田寛和シニアアナリストは「リコーは事務機がコア事業だが、事務機器は(販売網の)陣取り合戦が重要。アイコンは規模が大きく、リコーは米国市場で一段とジャンプアップするチャンスを得た」と評価する。

 <メーカー主導で販売会社を再編>

 アイコン社はメーカー系列に属さない独立系事務機ディーラーとしては世界最大級で、欧米に約400の拠点を持つ。アイコン社の事務機器の扱いはキヤノン製品が約6割、リコー製品が約3割、残りがコニカミノルタホールディングス(4902.T)グループなど。リコーはアイコンでの販売の大半をリコー製品に切り替える意向だ。キヤノンのアイコンに対する販売高は1000億円弱とみられ、この販売ルートを失うことの打撃は小さくないと市場は受け止めた。

 事務機器業界では近年、メーカーによる独立系販売会社の買収が相次いでいる。2006年にはリコーが米事務機器販売会社であるダンカの欧州における販売・サービス網を買収。07年には米ゼロックス<XRX.N>が米グローバル・イメージングシステムズを、今年春にはコニカミノルタがダンカの米事業をそれぞれ買収した。アイコン社は独立系事務機ディーラーで残った最後の大手企業で、M&A(合併・買収)による販売網の陣取り合戦はほぼ決着したというのが業界関係者の一致した見方だ。

 今回の買収計画はアイコン側がリコーに持ちかけて合意したという。独立系ディーラーが相次いでメーカー傘下に入った背景には、「メーカー系以外の販売店は生き残りが厳しくなっている」(リコー関係者)という事情がある。事務機販売業者はメーカー系の直販ディーラーと複数のメーカー製品を扱う独立系ディーラーが大別されるが、オフィスネットワークの構築で高度なシステム提案力を求められる場面では、技術の蓄積があるメーカー系ディーラーに有利に働く。

 リコーの近藤史朗社長は8月27日の記者会見で、「(販売の現場でも)グローバルで均質なサービスを提供するメーカー側が主軸を担うようになってきた」と強調し、主導権が移ったとの認識を示した。同社長は、アイコン社買収に踏み切った理由について「全世界的に直販を強化しているが、現地で全部、直販でカバーできない」などと語った。

 <キヤノンは買収見送り、対抗策に注目>

 アイコンが、リコーに身売りを持ちかける一方で、キヤノンにも同様の打診をしていたのは間違いない。27日の記者会見で近藤社長に同席したリコーの三浦善司専務は「当社だけに(買収提案した)とは考えにくい」と述べ、アイコンがキヤノンにも身売り話を持ちかけていたことを示唆した。

 キヤノンはなぜ見送ったのか。光田アナリストは、「キヤノンはリコーとは向かう方向が違う。1700億円使うなら、米国にトナー工場を建設するほうがいいという判断があったのではないか」と指摘する。一部の市場関係者の間では、「リコーに対抗して、キヤノンもアイコンに買収提案するのでは」との観測もあったが、買収見送りの判断を変更する可能性はほぼないとみてよい。

 キヤノンで事務機器事業を担当する中岡正喜常務はロイターに対し、「(アメリカやカナダなど)米州における各国販売会社の、自前の直販網の強化をさらに加速する。(リコーが直販を強化するということで)、ディーラーの再編も起きてくるため、キヤノンもこれを機にさらなるディーラー販売網強化にも取り組む」とコメントした。

 中岡常務が指摘するディーラーの再編とは、これまで買収されてきたディーラーからの人材引き抜きに加え、メーカー各社による直販ルート強化に危機感をもつ中堅・中小の独立系ディーラーをキヤノン陣営へ引き入れることを視野に入れたものとみられる。

 事務機器業界は従業員の離職率が「30%から50%」(業界関係者)と高水準にある。また、アイコンの従業員は2万4000人にも上る。リコーはアイコン買収後も人員削減を行わない方針としているが、米国経済が後退色を強める中、景気の影響を受けやすい事務機器業界ではある程度の合理化が必要になる可能性は高い。

 アイコンの看板を、独立系からメーカー系へと大きく書き換える過程で、有能な人材をいかに残すか。1700億円の投資資金が実を結ぶかどうかは、買収後のリコーのマネージメント能力が鍵を握ることになる。

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