September 30, 2008 / 5:53 AM / 11 years ago

米金融安定化法案否決で世界的株安、市場は追加策視野に

 [東京 30日 ロイター] 米金融安定化法案の否決というネガティブ・サプライズを受けた米国発の株安が東京市場に連鎖し、日経平均は一時500円以上の大幅安となった。

 9月30日、米国発の株安が東京市場に連鎖し、日経平均は一時500円以上の大幅安に。写真は東京都内で(2008年 ロイター/Issei Kato)

 相次ぐ金融再編の動きは米国から欧州に広がっており、危機が拡大する中での同法案否決に東京市場では動揺が広がっている。

 不良債権買い取りを柱とする法案は買い取り価格の設定など不透明要因が目立ち、もともと実効性の点で疑問視されていたが、否決を受けて対策への制約が強まり、実効性はさらに危ういものになりそうだとの懸念が強まっている。一方で、否決による時間のロスは金融セクターの危機をさらに悪化させており、より強力な対策がとられる可能性を市場は視野に入れ始めた。「減税や公共投資など相当規模の財政出動や欧米協調利下げの可能性も十分にある」(三菱UFJ投信・戦略運用部副部長の宮崎高志氏)という。

 ◎野村証券投資調査部チーフストラテジスト、岩澤 誠一郎氏

 当分、相場の見通しは立ちにくい。下値リスクを警戒するということにつきるだろう。

 問題の根本は短期金融市場の不安定化だ。ここまでマーケットが荒れると容易ではないが、各国当局は金融機関の経営が行き詰まった場合、クレジットイベントが生じない形で対応策をとるということを明言し、マーケットがそれを信用することが必要だろう。金融機関を破たんさせずに、ベアー・スターンズやアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)(AIG.N)のように完全救済ではないにせよ、クレジットリスクが発生しない形を取ると宣言することがマーケット安定化のためには必要だ。

 もうひとつの問題は米国の中に、この金融問題を十分に理解していない人がいるということだ。金融安定化法案が米下院で否決されたのは、賛成すれば選挙のときのマイナス要素になるということで法案に反対した米議員がいたからであろう。問題を深刻にとらえている金融界の認識とは大きなギャップがあると言わざるを得ない。米国市場の状況は日本の1997、98年当時にあるとしても、一部の米国民の認識は「住専(住宅金融専門会社)問題」当時にまだあるということだ。これは問題解決にはまだまだ時間の経過が必要だということを示している。

 ◎三菱UFJ投信戦略運用部副部長、宮崎高志氏

 米金融安定化法案が否決されたことはネガティブ・サプライズ。早急に次の対策をまとめるのだろうが、より金融機関が利用しにくいものになることが予想され、実効性への疑問が強まりそうだ。国民の理解を得るため、追加的に住宅ローン債務者への対策を盛り込むことなどが予想されるほか、減税や公共投資など相当規模の財政出動や欧米の協調利下げの可能性も十分にある。

 一方で、市場は次の対策を待てないとみており、金融機関の再編はさらに進むだろう。犠牲者が増えることで結果的に世論を説得していく形にならざるを得ない。

 ただ、日本株については売られ過ぎ感も出てきている。日本の金融機関は比較的傷が浅く、企業業績も株価が示すほど悪いわけではない。世界の株価が動揺する中ではリスクも大きいが、そろそろバランス感覚が必要な局面にきている。少なくとも日経平均が1万円を割り込むことはないだろう。

 ◎東洋証券シニアストラテジスト、児玉克彦氏

 米国下院で金融安定化法案が否決されたことによって一段と不安感が高まり、市場は世界的な金融恐慌が起きると読み出した格好となった。早く手を打たなければ、それが現実なものになることを株価は訴えかけている。

 いずれは解決の方向に向かうと思われるものの、具体的な対応が明示されなければ買いは入らない。米国の的確な対応を望んでいるが、今回の下げは、市場は待ち切れないということを示しているのだろう。そうした意味で今晩のブッシュ大統領の声明が注目されるところだ。

 ◎エース証券専務、子幡健二氏

 よもやの米金融安定化法案否決でさらに危機感が増してきた。10月中旬の米銀決算までに何らかの方向性が出ないと、事態は一段と悪化するとみられる。このままでは企業の資金調達などにも大きな影響を及ぼしてくるため、実体経済もまひすることになるだろう。

 現時点では、金融問題が大きくクローズアップされているが、今回の下落は景気悪化懸念も大きな要因であることを忘れてはならない。米国経済が悪化すれば、輸出に依存する日本企業は相当厳しくなる。金融問題の方向性が見えてきた場合、米国が第2弾の財政支出をするか否かに関心が移りそうだ。

 ◎日興コーディアル証券シニアストラテジスト、河田剛氏

 金融安定化法案は、来週中ぐらいには何らかの法案が成立するとみている。採決結果がわずかな差であったため、あと10数人の議員に賛成してもらえばいい。議員は選挙を意識して反対した側面が強かったことを考えれば、財政などお金をかける議論よりむしろ、国民感情を納得させるシンボリックな対応が必要なのかもしれない。過去には金融機関関係者が刑務所に入れられたケースもある。

 ただ、預金の流出が始まっており、事態は金融恐慌の入り口まできている。政府が見捨てるかもしれないとう恐怖感を植えつけたという意味では、リーマン・ブラザーズLEHMQ.PKを破たんさせたのは失敗だったかもしれない。ワシントン・ミューチュアル(WM.N)にしろワコビアWB.Nにしろ、まだ政府のコントロールが効いているが、預金の流出が取り付け騒ぎに発展すると大変なことになる。まずは金融機関の出血を止めることが必要だ。法案成立で預金者による金融機関への信頼を取り戻すことができれば、米実体景気は意外にねばりをみせていることもあり、事態は収拾できるとみている。

 ◎三菱UFJ証券投資情報部長、藤戸則弘氏

 試練の日になる。ドル安も進んでおり、欧州、米国、東京、アジアとそれぞれの市場で「負の連鎖」が続く可能性がある。米金融安定化法案がこれで消えてしまったわけではなく、何らかの修正が加わって再可決される可能性はあるが、米下院の再招集は10月2日。それまでに各国当局から何も対策が出なければ「負の連鎖」が続くおそれがあるだろう。

 米連邦準備理事会(FRB)と各国中央銀行が連携して資金供給を実施しているが、過去最高水準に上昇しているボラティリティー(VIX)指数などをみると、協調利下げなどマーケットに対する直接的なメッセージが必要だろう。

 ◎ピクテ投信投資顧問ヘッドトレーダー、小野塚二也氏>

 期待されていた米金融安定化法案が想定外の否決となったことでマーケットは動揺した。日本の市場参加者は、国内では対策が政局に左右されることに慣れているが、選挙前という事情があるにせよ、米国も政局に左右されたことに対して失望感を抱いたと言えるだろう。米国に何とかしてもらいたい──。そんな催促相場の動きが世界的に加速している。

 金融機関の資金不足に対する不安を解消しなければ、下げ相場が収まらないのは明らかで、引き続き米国当局、議会の動きに注目する場面となりそうだ。

 ◎楽天証券経済研究所チーフストラテジスト、大島和隆氏

 米金融安定化法案の下院での否決は、反対票の多くは共和党議員が投じている。賛成63人に対して、反対が137人だ。一方、民主党は大半が賛成に回ったようだ。誰が誰と合意したのが「議会合意」だったのか疑問だ。政権末期のブッシュ大統領が無力化し、レームダック化が進んでいることがうかがえる。

 金融安定化法案は上院が先に何らかの修正法案を可決し、それを下院に差し戻すという動きで週内にひとつの決着は見ると考える。ただ、それまでにいくつかの金融機関の破たんや救済合併が出る可能性は覚悟する必要がありそうだ。事態はかなり悪く深刻。疑心暗鬼で短期金融市場が実態とかけ離れて機能しなくなる可能性が高いからだ。

 今回の金融安定化法案は、金融機関の経営者の高額報酬削減にこだわった点に、政治が目先の感情的な世論に同調しようとする動きに走っている現状がよく見てとれる。住専問題に揺れた日本でも同じ現象があった。「なぜ民間金融機関の救済に血税を使うのか」という世論が盛り上がった結果、政治的な逡巡(しゅんじゅん)が起こり、その悪影響が実体経済に及んで国民が実感する段階になって、やっとものごとが前に動き始めたように記憶している。それに比べれば、米国では対応が速いと言える。

 (ロイター日本語ニュース 松平 陽子)

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