September 30, 2008 / 10:02 PM / 11 years ago

焦点:三菱UFJのモルガン増資引き受けで評価二分

 [東京 30日 ロイター] 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T)が決定したモルガン・スタンレー(MS.N)に対する90億ドルの出資が妥当であったのか、金融界での見方が交錯している。

 9月30日、三菱UFJフィナンシャル・グループのモルガン増資引き受けで市場の評価は二分。写真は23日、都内で(2008年 ロイター/Issei Kato)

 三菱UFJはモルガンの高収益を支えた投資銀行業務のノウハウ習熟を狙っているとみられるが、銀行持ち株会社へ業態変更したモルガンのビジネスモデルが変更される可能性があり、思惑通りに業務のノウハウや高い収益を得ることができるのか不透明な点が多いからだ。さらに米金融不安の暗雲は増すばかりで、増資後のモルガンの経営が安泰とも言い切れないとの声も出ている。グローバル・プレーヤーの地位をつかみ取れるかどうか、他の国内金融機関は三菱UFJの決断の行方を注視している。

 <投資銀行を選んだ三菱UFJ>

 商業銀行を取りに行くか、投資銀行を取りに行くか――。邦銀が海外金融機関のM&A(買収・合併)戦略を練る際に、常に付きまとったテーマだ。商業銀行が相手ならば、経営に失敗して人材が散逸しても資産は残る。しかし、投資銀行は別だ。最大の資産である人材をどのように処遇するのか。「場合によっては、経営陣層よりも高額の給料を得ているインベストメント・バンカーをどのようにマネージするのか。われわれにできるのか」(大手行企画担当役員)との自虐的な声が、邦銀関係者の中では多数派だった。

 銀行アナリストの間では「邦銀は投資銀行をマネージできない。三菱UFJが出資・買収する先は北米の商業銀行だろう」(外資系証券アナリスト)というのが一般的な見方だった。今回、三菱UFJは大方の予想をひっくり返し、大きな賭けに出たことになる。

 もっとも三菱UFJ内部にも「マネージするつもりはない。純投資だと割り切っても収益の上乗せ効果は大きい」(幹部)との割り切った考えもある。モルガンが過去最高の高収益を上げた2006年11月通期の最終利益は約75億ドル(7800億円)。20%の持分法適用会社として年間1500億円の利益を吸い上げることができる計算だ。6366億円(08年3月期)の当期利益を稼ぐ三菱UFJにとっては決して少なくない。

 しかし、三菱UFJも「(高収益を上げた)投資銀行のビジネスモデルは見直しを迫られている。今後の収益を見積もるのは難しい」(水野俊秀専務)と見ており、上乗せ効果がどれだけ期待できるかは未知数だ。 

 <三菱UFJ証券とモルガンスタンレー合併の可能性も>

 三菱UFJとモルガンは来年6月を期限に戦略的提携の具体的な中身について交渉を始めた。交渉がまとまった分野から実行に移すが、三菱にとって課題の1つは、弱点と指摘される証券業務強化にどれだけ結び付けられるかだ。

 グループ内の証券業務は三菱UFJ証券が担っているが「親しい三菱グループの企業からさえも相手にされていない」(三菱UFJ幹部)との声が漏れる。三菱グループの主要企業が絡むM&Aのファイナンシャル・アドバイザリーだけでなく、株式などの引き受け業務でも「当たり前のように主幹事を外資系投資銀行に持っていかれる」と同幹部は嘆く。

 「いずれはモルガンに三菱UFJ証券を吸収してもらうのではないか」(欧州系投資銀行幹部)という観測が、投資銀行関係者の間で浮上している。優良企業として世界展開している三菱グループ企業の資金調達や海外関連のM&Aで、モルガンが持つ専門性や世界的ネットワークを利用できると期待できるからだ。

 それだけではない。欧米の優良企業との取引拡大を急ぐ邦銀だが、海外の金融機関との差は一足飛びには縮まらない。米国での事業展開に自信を持つ三菱UFJでも、米国企業の社債による資金調達では、シンジケート団の末席に加えられる程度だ。例えば、シンジケート・ローンの組成でもっとも稼ぎが大きいのは主幹事だが「米国の主要企業との取引はバルジブラケット(巨大投資銀行)ががっちり押さえ込んでいてすきま間もない」(三菱UFJ幹部)。米国を代表する投資銀行との関係強化は、その「すき間」に食い込むきっかになる可能性もある。

 <マーケットの環境次第で減損リスクも>

 当初、すべて普通株による増資引き受けを想定した三菱UFJだが、最終的には3分の1を普通株で、残りの3分の2を優先株で引き受けた。デューデリジェンスに掛けた日数はわずか1週間弱。三菱UFJは「120人の人材を投入し、リスクの高いところを中心にアプローチした」(水野専務)と自信を見せる。

 しかし、「期間を考えると詳細な査定はできていないのではないか。その分を優先株でヘッジした」(国内証券幹部)との見方が強い。

 三菱UFJの平野信行取締役は、優先株に付与したオプションバリューや10%の配当などを踏まえ「リスクを最小限に抑えた。減損ポイントはかなり低い」と説明した。だが、普通株の下落が続けば、優先株もき損も免れるわけではない。

 さらに別のリスクも存在する。「現在の米国の金融環境を考えれば、将来的にはMスタンレーにも公的資金が入る可能性がないわけではない」と欧州系投資銀行幹部は指摘している。

 その場合、株式の希薄化で既存株主が大きな痛手を被るほか、場合によっては減資のリスクもつきまとう。こうした点からみても、今回の三菱UFJの出資は「リスクを取りに行った」(外資系証券の関係者)とみられている。 

 (ロイター日本語ニュース 布施 太郎記者;編集 田巻 一彦)

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