September 30, 2008 / 11:07 PM / 11 years ago

米国発の金融不安で日本が最後の出し手にも=渡辺・元金融担当相

 [東京 30日 ロイター] 渡辺喜美・元金融担当相は30日、ロイターとのインタビューで、米国発の金融不安について、当局が公的資金の資本注入を採用する段階まで至っていないことから、混乱はしばらく続くとの見方を示した。

 9月30日、渡辺喜美・元金融担当相は、米国発の金融不安で日本が最後の出し手として海外から要請を受ける可能性もあるとの見方を示した。写真は6月、クアラルンプールのフォーラムで(2008年 ロイター/Zainal Abd Halim)

 また、日本の民間金融機関が資金の出し手として存在感を高めているが、日本政府も「最後の出し手」として海外から要請を受ける場面が出てくるとの見通しを示した。さらに「そのときにどういう対応ができるかは考えておく必要がある」との認識を示した上で、国際協調の枠組みの中で、外貨準備の資金を活用することもあり得るとの考えを示した。

 インタビューの詳細は以下の通り。

 ――米国発の金融不安と当局の対応をどうみるか。

 「流動性の危機の背景にはソルベンシー(支払い能力)の問題がある。当面は流動性の供給でしのいでいくしか手立てがないようだが、根本治療には程遠い。金融安定化法案は不良資産の買い取りに過ぎず、次の政権までのつなぎの位置づけだったと思う。その間、巨大金融機関への危機が及ぶか及ばないかという中で、何とかこのスキームで切り抜けるつもりだったのだろうが、そのつなぎの政策すら下院で否決されてしまって大混乱に陥っている」

 ――日本の不良債権処理の経験はどのように役立つか。

 「金融システム全体に支払い不能の恐れが高まっているときに公的資金の注入は正当化される。これが日本の教訓だ。日本が公的資金を使ってやったのは、1)預金者保護の金銭贈与、2)不良債権の買い取り、3)金融機関への資本注入――の3つだが、最も成功したのは言うまでもなく資本注入。公的資金には、破たん処理スキームと破たん前スキームが必要だが、米国では残念ながらその段階までたどり着いていない。混乱はしばらくは続かざるを得ない状態になっている」

 「公的資金を使うなら責任追及とセットになる。日本でも相当もめた。不良資産の買い取りスキームを作っても、厳しい責任追及を受けるなら、スキームを利用する側は回避行動に出る。しかし大事なのは、ツー・リトル・ツー・レイト、兵力の逐次投入ではだめだというのが日本の教訓。ここが米国や欧州の当局に問われる。金融安定化法案には、時価会計の停止の項目もあるようだが、もしもこれを使って情報開示をブラックアウトするならば、損失処理と資本増強を一気呵成にやってしまわなければならない。それができないと逆に疑心暗鬼を深めるだけなので要注意だ」

 ――リーマンLEHMQ.PKが破たんに追い込まれ、ゴールドマン(GS.N)とモルガン・スタンレー(MS.N)が銀行持ち株会社に移行した。

 「米国が問われているのは銀証分離モデルの大変更だ。ゴールドマンやモルガン・スタンレーの銀行移行はFRBの特融を受けやすいようにするためなのだろうが、銀証分離モデルに抜本的な見直しが迫られるようになった。さらに、保険会社は州政府で、証券会社はSEC、銀行はFRBという監督体制についても、FRBの権限拡大が進む。これはFRBのバランスシートが劣化するということにもなるので、最終的には財政資金で公的資金の投入を含めたスキームを作る必要が出てくる」

 ――各国の当局は国際連携を強調しているが、どのような対応が求められるか。 

 「金融不安で実体経済の悪化は避けられない。米国の家計の過剰債務が解消されるには数年かかるだろうし、この間に住宅価格の下落が同時に起こると悪循環に陥り、住宅、車などの個人消費が減退することになる。日本も当然、その余波を受ける。まずは日銀を含めた金融当局の協調利下げが必要だと思う。銀行システムに穴が開いているときにはインフレにはなりようがないのでやるべきだ」

 「また、危機に対応するためには、各国とも大きな政府にならざるを得ない。米国も例外ではない。日本でも、政府支出を増やさざるを得ないなら、政府の資産を圧縮する過程で生まれるお金を財源にすべき。まさに、特別会計や独立行政法人改革で生まれた財源を使うのが正しい」

 ――ドルの信認が低下している。

 「金融の混乱の先に訪れるのはドル・クライシスの深刻化。今のところは信用収縮でリパトリエーション(資金の本国還流)が起こっているのだと思うが、それが終わった後は、海外勢が米国に置いてある資産を引き揚げる動きが活発化するのではないか。つまり、米国からの資産の引き揚げが本格化したときがドル・クライシスの本番。これに対してどういう枠組みができるのか、これから問われることになる」

 ――野村(8604.T)、三菱UFJ(8306.T)など日本の金融機関が資金の出し手として存在感を高めている。

 「官民ともに要請を受ける機会は増えると思う。野村の攻めの姿勢はいいと思う。三菱UFJは資産と負債を引き継ぐので、デューデリが大事になるのだろうが、いずれにしてもけがの功名。比較的傷の浅い日本勢は、ピンチをチャンスに変えることができる数少ないプレーヤーだ」

 「政府としても否応なしに要請を受ける場面が出てくる。そのときに日本はどういう対応ができるのかを考えておく必要がある。しかし、お金を損失処理に使うわけにはいかない。損失処理はそれぞれの当局にきちんと終わらせてもらうことが大事だ。その上で、最終的な資本増強で国際的な枠組みを作るのであれば、外貨準備を使うことも、私が金融担当相のときの私的懇談会(金融市場戦略チーム)でブレーンストーミングをした。これもあり得ないことではない。運用している米国債を(金融機関の株式と交換する)デット・エクイティ・スワップ(DES)する話で、ドル危機後の新しい通貨秩序の形成にもつながる戦略になる」

 「外貨準備の活用は、すぐにSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)を作るべきという意味ではない。運用のあり方を変えるということで、国際協調の枠組みの中でDESを行うということなので、戦略型の発想だ」

 ――財務相と金融担当相の兼任となったが、金融問題で国際連携を強化するためと説明されている。

 「主要7カ国(G7)で財金分離をしているのは日本だけではない。英国、ドイツ、米国もそうなので、G7で支障があるというのは理屈にはならない。しかし、日本が最後の出し手として期待される場面では財務相と金融担当相がセットのほうが早いかもしれない。米国からは、兼任大臣にポジティブサプライズもあると聞く」

 ――金融担当相としてG7に出席できないことに不便を感じたか。

 「日本の実情に即していえば、金融の問題では金融担当相が出たほうが早い」 

 ――では、財務省と金融庁を一体的に運営したほうがいいと思うか。

 「そうは思わない。なぜ財金分離が行われたかと言えば、政府の失敗で公的資金の投入に至った。その行政責任が問われたからでもある。さらに、最終的に金融問題が財政問題につながることはあり得るが、それは非常事態の対応で平時の発想ではない。市場を相手にする金融庁と政府がお金を集めて分配する財務省が同じ役所になる必要はない」

  (ロイター日本語ニュース 村井 令二記者) 

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