October 1, 2008 / 5:26 AM / 10 years ago

米金融安定化法案、修正後に可決かリセッション入りかの二者択一

 [ワシントン 30日 ロイター] 米市場は30日、下院が前日否決した7000億ドルの金融安定化法案に新たな条項を加えた修正案合意への期待感が膨らみ、大幅反発した。

 9月30日、米市場は下院が前日否決した金融安定化法案に新たな条項を加えた修正案合意への期待感が膨らみ、大幅反発。写真はキャピトル・ヒル(2008年 ロイター/Jim Young)

 エコノミストらは法案の修正協議が行き詰まって廃案となれば、長期かつ深刻なリセッション(景気後退)に陥るリスクがあると警告している。

 29日の米下院本会議が法案を否決したことで、今後の対応について2つのシナリオが浮上した。議会の承認を得るに十分な修正が法案に施されるか、あるいはポールソン財務長官とバーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長が限られた政策手段で金融危機に個別対応していくかの二者択一だ。

 法案の完全な練り直しは可能性が低いとみられている。

 ピーターソン国際経済研究所のマイケル・ムーサ上級研究員(元国際通貨基金=IMF 調査局長)は「当面のところ、米財務省案にある程度の修正を加えて議会が可決するか、何も得られないかのどちらかだろう」と述べ、「懸念されるのは、ポールソン案が可決されなければ、戦後で最悪レベルの急激なリセッションに陥る可能性があることだ」と指摘した。

 財務省に不良資産の買い取り権限を付与することで信用収縮を解決しようとした金融安定化法案の思いもよらぬ否決を受け、米政府の政策担当者や議会指導者は、反対に投票した一部共和党議員の説得に努めている。

 ヘネシー大統領補佐官(経済担当)はフォックス・ニュースの番組で「(心変わりする)可能性のある票がどこにあるか見極めるのに若干の時間が必要になるだろう。そうした票を獲得するため、願わくば小幅な、どういった政策変更が必要かを見極めたい」と語った。「そうした作業を開始している」という。

 30日の段階で賛成の勢いが増した修正の一つは、米連邦預金保険公社(FDIC)の預金保険の保証の上限を現行の10万ドルから25万ドルに引き上げる案で、これについてはFDICが暫定的な上限引き上げを正式に要請、大統領選の共和党候補であるマケイン上院議員も民主党候補のオバマ上院議員も支持を表明している。

 <政治の空転>

 下院での法案否決は、11月4日に向けて選挙戦で厳しい戦いを迫られている共和・民主党議員の元に、ウォール街救済構想に憤慨した選挙区民からの怒りの電話やEメールが寄せられ、反対票が増加した結果だった。

 米国民の多くは救済策を納税者に対する過大な負担とみなしており、公的資金を投入すれば、資金の使途にもっと注意深くあるべきだったウォール街の企業幹部らに恩恵を施すことになると考えている。

 米国民はまた、支払える以上の住宅ローンを組んだ人々を支援するという考え方についても立腹している。現在の危機の根源には、住宅ローンのデフォルト(債務不履行)がある。

 法案否決はまた、ワシントンに強力な指導力が欠如している事実も裏付けている。レームダック(死に体)のブッシュ大統領も、ペロシ下院議長もベイナー下院共和党院内総務も、今回の投票で必要な賛成票を集めることができなかった。

 ポールソン財務長官とバーナンキFRB議長も国民に対する救済策の売り込みには慎重で、結果として「メインストリート」の米国民との意識のずれが生じてしまった。

 <説得可能な議員の確保>

 今後十分な賛成票を確保する上でキーポイントになるのは、政策の小幅な変更と、否決された法案には不満足だが救済は支持している議員を狙い撃つ両面作戦だろう。

 共和党のディアスバラート下院議員(マイアミ州選出)は救済策に対してオープンで、「放っておいても消えてなくなることのない深刻な危機に直面していることを理解している」としながら、多くの保守的な議員と同様、ポールソン財務長官が策定した包括的な救済策には違和感を抱いている。

 ディアスバラート議員は、議会による監視強化とウォール街の企業による資産売却が盛り込まれた法案であれば賛成投票も想定できるとし、「納税者が資金を負担する前に、ウォール街の企業が血や肉を差し出す必要がある」と述べた。

 住宅価格が急落したフロリダやカリフォルニア、南西部の選挙区選出の議員らも、住宅ローン圧力を緩和する措置にオープンな可能性がある。

 スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)/ケース・シラーが30日発表したデータによると、7月の主要20都市圏の住宅価格動向を示す指数は前年比で16.3%の低下となり、過去最大の落ち込みを記録した。

 ロビイストらはまた、キー・コープ(KEY.N)、フィフス・サード・バンコープ(FITB.O)、ナショナル・シティーNCC.Nの大手地銀3行が本拠地とするオハイオ州選出で、今回反対票を投じた10人の下院議員をターゲットにしている。

 <再び市場が急落するリスク>

 29日のニューヨーク株式市場ではダウ平均が1日としては過去最大の下げを演じたが、30日には金融安定化法案が修正され、週内に可決するとの期待感が膨らんで反発。ダウは485ドル高で取引を終えた。

 米証券取引委員会(SEC)が金融機関について、価格設定が困難な資産を評価する際に著しく低い価格で評価する必要はないとの見解を示すとのニュースも支援材料となり、SECは実際、引け後にその通りのガイダンスを発表した。

 しかしもし修正案が再び議会の承認を得られなければ、市場は再び急落すると同法案の可決に向けて強力なロビー活動を展開している米国商業会議所の主任エコノミスト、マーティン・レガリア氏は予想する。

 同氏は「これが実現しなければ、われわれが既にその途上にあるリセッションが深刻化するとともに長期化し、抜け出すのが極めて難しくなるだろう」と述べた。

 <他の政策選択肢>

 信用危機に対応する上で、法案によって可能になる包括的アプローチがない場合、FRBや財務省、他の政府機関はケース・バイ・ケースで局地戦に臨み、銀行システムに流動性を供給、破たん寸前に陥った個別の機関に対応する戦術を続けなければならない。ポールソン財務長官の救済策が発表されるまでの数週間、長官は連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)FNM.Nと連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)FRE.Nを政府管理下に置く決定を下し、米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)(AIG.N)の救済策を取りまとめた。

 FDICも同時に 一部の問題金融機関の統合に成功したが、それでも金融市場に信頼感を植え付けることはできなかった。

 FRBは事態の収束に向けて最大の武器を使用し、利下げを実行することもできるが、銀行の貸し渋りが強まる中では経済の支援にほとんど役立たないだろう。

 ブルッキングス研究所のアリス・リブリン上級研究員(元FRB副議長)は「フェデラルファンド(FF)金利はいつでも引き下げられるが、国民の借入金利や金融機関同士の貸出金利に影響しなかったら何にもならない」と指摘した。 

 (ロイター日本語ニュース 原文執筆:David Lawder、Patrick Rucker 翻訳:関 佐喜子)

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