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米上院の金融法案可決でも不安晴れず、米欧に利下げ観測
2008年10月2日 / 11:01 / 9年前

米上院の金融法案可決でも不安晴れず、米欧に利下げ観測

 [東京 2日 ロイター] 米上院で金融安定化法案が可決したものの、金融不安の一掃にはつながらず、世界経済への不安感が高まっていることを背景に、2日の東京市場は日経平均が前日比200円を超す下落となった。

 10月2日、米上院の金融安定化法案可決も金融不安の一掃にはつながらず、日経平均が大幅下落。写真は都内の株価ボード。先月撮影(2008年 ロイター/Issei Kato)

 米金融不安は欧州に飛び火する気配で、米欧には利下げ観測も台頭してきた。マーケットの混乱は深刻さを増しつつある。

 <ヘッジファンド勢が日本株を換金売り> 

 2日の東京株式市場は、大引けにかけて下げ幅を広げた。複数の市場筋によると、ドルの流動性枯渇を背景に欧米系ヘッジファンドからの換金目的の日本株売りが目立ったほか北米での自動車販売の急減や新興国経済の急減速で建設機械の需要減少が見込まれ、自動車株と機械株が大きく下げた。

 ある邦銀関係者は「金融危機に関しては、米上院で金融安定化法案が可決され、ほっとひと息ついている。しかし、実体経済の悪化がひどく、内外の投資家から景気悪化を嫌気した株売りが出始めている」と話す。

 外資系証券の関係者は「米自動車販売の落ち方は非常に大きい。米国の家計部門は耐久消費財を買う状況ではなくなっているのかもしれず、これから先の対米輸出は日本に限らず、相当減ることを覚悟するべきだろう」と話す。

 <問題点残る米金融安定化法案>

 当初、米上院で金融安定化法案が可決されれば、マインドが好転する可能性があるとの期待感もマーケットにはあった。しかし、国内投信ファンドマネージャーの1人は「下院で可決されるか不透明であり、楽観的見方が広がらない」と話す。

 先の邦銀関係者は、不良債権の買い取り価格に関して不明確な点が多く「これで金融不安が一掃されると考えている市場参加者はほとんどいないのではないか。市場には霧が立ち込めたまま晴れる気配がない」と述べる。

 流動性ひっ迫を背景に欧米の投資家が、世界から資金を回収する動きが続いている。財務省が2日発表した9月21日─9月27日の対外対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると、対内株式投資は2368億円の資本流出超となった。2日の東京市場でも朝方から金融安定化法案の行方を待たず海外勢のバスケット売りが先行した。

 りそな信託チーフ・ストラテジストの黒瀬浩一氏は「米金融安定化法案が下院の可決を経て成立したところで、買い取り価格の問題などを考えれば抜本的な対策にはなりにくい。金融機関の利用動向などが明らかになれば、いずれ市場の不信感を招くだろう」とみている。「政権の端境期ということもあり、現政権では金融セクターの出血を止める対策だけを打って時間を稼ぎ、住宅市場を含めた抜本対応は次期政権の誕生を待つということだろう。しかし、そうしたスタンス自体、米政府の危機感が薄いことを示している。株価はこれを見透かしている」と同氏は話している。

 仮に米金融安定化法案が下院を通過して成立しても、銀行の資本が増強されない限り貸し渋りは続き、景気に下押し圧力がかかるとの見方もある。「東京市場では機械、自動車などの景気敏感セクターの下げが目立つ。投資家の視線は金融問題から世界的な景気悪化にシフトしているようだ」(準大手証券エクイティ部)との声も出ている。

 <リーマン破たん後、レポ取引の流動性が大幅低下> 

 円債市場では、流動性の低下が深刻だ。リーマン・ブラザーズの破たんで、レポ取引でも決済不能の取引が続出し「国債現物を貸す市場参加者が急減した」(別の邦銀関係者)ため、レポで資金を調達して国債を買っていた参加者の中には「資金が調達できずに、国債取引を手控えている向きも出始めた」(外資系証券)という。

 前週9月21日─27日の対外対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)のうち、株式・中長期債・短期債を合わせた対内証券投資の総額は1兆8460億円の売り越しとなった。売り越し額は2005年1月の統計開始以来、過去最大。さらに対内債券(中長期債)投資が1兆1177億円の売り越しとなった。売り越し額は6月第3週(15日─21日)以来の高水準となった。

 新光証券の債券ストラテジストの三浦哲也氏は「リーマンの破たんをきっかけに、海外勢がバランスシート調整を目的に株式・債券とも持ち高を解消する動きを強めたのではないか」とみている。

 また、国内金融機関の債券関係者は「株安/債券高の流れが止まったとの解釈では説明つかない。リーマンの破たん以降、短期金融市場が混乱。資金繰りに窮した海外勢がキャッシュ化を急いだとの見方が妥当だろう。国内でも総合景気対策による財政出動の思惑やクレジット市場で相次ぐデフォルトを嫌気して資金が日本から逃げた面もあるのではないか」とみている。

 <欧州に金融不安が飛び火>

 他方、マーケットでは欧州にも金融不安が飛び火したとの懸念が急速に広がっている。きょう2日に欧州中央銀行(ECB)が開催する理事会で利下げを行うとの観測が一部で浮上、2日の外為市場ではユーロが対ドル、対円ともに下落した。

 ECB理事会をめぐっては、予想の大勢は依然として据え置きだが、最近の金融不安のさなかに米金融安定化法案が下院で否決されたことなどから「中銀が流動性供給をするぐらいしか手立てがない」(さらに別の外銀)との思惑が強まっているという。

 ユーログループのユンケル議長は1日、「ECBはあすの理事会であらゆる要因を考慮すると思う」と述べた。これに先立ちジュイエ仏・欧州問題担当閣外相は、明確に利下げを促すことはせず、金利決定では現在の金融状況を考慮に入れるようECBに求めている。

 ユーロ圏の金融機関救済策については、フランスのラガルド経済財務雇用相が現地時間の1日、「その種のことは何もない」と否定した。一方、アイルランドの地元紙は同日、フランスが今週末にも、アイルランドと同様の金融機関に対する政府保証制度を発表する見通しだと伝えている。

 2日付のウォールストリート・ジャーナル紙は米連邦準備理事会(FRB)が景気見通しの悪化と金融混乱の拡大に直面する中で、一段の利下げを検討すると伝えた。

 先の邦銀関係者は「米欧の協調利下げがマーケットの思惑として浮上している。そのタイミングに注目が集まっている。日銀がどうするのか、その点にも次第に関心が集まりつつある」と述べている。

 (ロイター日本語ニュース 田巻 一彦;編集 宮崎 大 )

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