October 6, 2008 / 11:00 AM / 11 years ago

日本の景気後退、当初予想より深刻化の可能性

 [東京 6日 ロイター] 世界的に金融市場の波乱が続く中、エコノミストの中に日本経済の見通しをより慎重に修正する動きが相次いでいる。雇用・設備・負債の過剰が生じていないため、これまでは景気後退期は短期で終了するとの楽観論が根強かった。

 10月6日、世界的に金融市場の波乱が続く中、エコノミストの中に日本経済の見通しをより慎重に修正する動きが相次いでいる写真は昨年2月撮影(2008年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 しかし、世界的に金融危機が一段と深刻になり、外需依存度の高い日本経済にとって景気後退が長期化・深刻化する可能性も排除できなくなってきた。政府・日銀が景気対策に本腰を入れ始めても、効果のある対応策は限られ、景気後退の長期化に歯止めをかける手段が少ないのではないかとの懸念も出てきている。 

 <金融の問題が実体経済に明確に波及>  

 海外経済は、ここにきて悪化を示す指標が増えている。輸出の先行指標である米ISM製造業景気指数は、9月に景気後退局面の2001年10月以来の水準に落ち込んだ。住宅価格も底が見えていない。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)/ケース・シラーが9月末に発表した7月の主要20都市圏の住宅価格指数も過去最大の落ち込みを記録。9月非農業部門雇用者数は、03年3月以来の大幅な減少となった。

 みずほインベスターズ証券・シニアマーケットエコノミストの落合昴二氏は「リーマン・ブラザーズLEHMQ.PK破たんなど金融不安が大幅に高まったことを背景に、ISM指数が予想以上に急落したことに象徴されるように、9月の経済指標は金融不安からの影響を大きく受ける」との見通しを示した。

 米国など外需の悪化は、日本の統計にもすでに表れている。8月貿易統計は、1月以外では、26年ぶりの赤字となったが、米国向け輸出の大幅減少が影響した。特に影響が深刻なのは自動車で、自動車の8月輸出は対世界ベースで37カ月ぶりの前年比減少に転じた。

 注目の金融安定化法案も最終的に米下院で可決されたが「具体的な手法などについては未だ不確実性が大きく、その実効性は未知数」(ゴールドマン・サックス証券チーフ・エコノミストの山川哲史氏)との見方が少なくない。住宅価格の下落が継続する限り、不良債権は増え続け、それが景気の重しとなるとの見方も根強い。

  週明けの東京市場では、日経平均株価の前営業日比下げ幅が一時500円を超え、大引けは1万0400円台と04年2月以来の安値水準まで沈んだ。市場関係者によると、欧米の金融セクターへの不安に加え、世界的な景気悪化が懸念された。  

 <成長率予測の下方修正、先行きに慎重な見方が増加>    

 日本経済については、雇用・設備・負債の3つの過剰が是正されているため、景気後退期は軽微との見方がこれまで多かったが、日銀が1日に発表した9月全国企業短期経済観測調査(短観)では、雇用、設備にわずかながら過剰感が出てきたことも確認された。また、雇用の不足感も緩和しつつある。 

 企業が過剰を抱えていないことが深い調整に陥らない大きな根拠となっていただけに、日銀内では先行きをより慎重にみる幹部が増え始めている。

 民間エコノミストの間でも、短観結果や海外経済の不透明感を受けて、国内総生産(GDP)成長率予測、景気見通しを下方修正する動きも散見されている。ゴールドマン・サックス証券は、米国の成長率予測改定を受け、09年について従来の1.3%から下方に修正する見通しだ。

 JPモルガン証券も、日本の成長率も下方修正した。同証券が想定している後退期(07年第4四半期が景気の山、09年第3四半期が谷)の成長率は、季節調整済み前期比年率の四半期平均でマイナス0.4%となる。

 日本の景気後退期の平均は17カ月だが、それを上回る懸念が強まっている。ドイツ証券でも「ITバブル崩壊後の後退局面の深度と、継続期間を上回る程度の後退が今起こりつつある」と警告した。UBS証券では、トレンド成長軌道に戻る時期を、これまで2009年10─12月期から、2010年1─3月期に後ずれさせた。 

 設備や雇用の過剰感は「景気の一致指標」であり、景気後退が進行するにしたがって、大きくなっていくとの指摘もある。足元で過剰感が弱くても、今後の景気後退が軽微だとは必ずしも言い切れないというわけだ。

 バブル景気が終了した時点では設備、雇用ともに大幅な不足超であったにもかかわらず、この後の後退は32カ月と長期化したことは記憶に新しい。  

 <日銀は景気判断を下方修正か、景気調整深くても対応策に期待薄の声>

 欧州経済も不透明感を増し、米国以上の深い調整を予想する声も出始めている。これまで高成長を続けてきた新興国の株式市場や通貨も足元で大幅に調整し、世界経済に影を落としている。こうした側面から、金融市場は不安定な状態が続く可能性はぬぐえない。外需依存度の高い日本経済にとって、海外の大幅な景気減速は下振れリスクを増幅させる。

 市場には、今週末にワシントンで開催される主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で、危機封じ込め協調策として協調利下げが合意されるとの思惑が浮上。市場の一部には日銀が各国と協調して緊急利下げに踏み切るのではないか、との観測もくすぶっている。

 日銀は6、7日の両日、金融政策決定会合を開催する。政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を年0.5%前後に据え置かれる見通しだが、景気判断については「鉱工業生産や日銀短観など最近の経済統計の下振れを踏まえて下方修正する」(三菱UFJ証券・チーフ債券ストラテジストの石井純氏)との見方が出ている。

 JPモルガン証券では、世界的に金融危機が一段と深刻化する、もしくは景気見通しが一段と悪化してデフレ懸念が台頭する、といったことがない限り日銀は利下げに踏み切らないとの見通しを示している。

 さらに日本経済にとって不運なのは、景気悪化に対応する景気刺激策を打とうにも、効果的な財政・金融政策のカードが残されていないと、同証券シニアエコノミストの足立正道氏は指摘する。その理由として「日銀が利下げに踏み切るにしても最大で50ベーシスポイントであるほか、減税なども大幅な財政赤字を抱えてどの程度にまで拡大できるか、その効果はどの程度なのかといった点で不透明感が強い」との見解を示した。 

  (ロイター日本語ニュース 武田晃子、児玉成夫;取材協力 志田義寧 編集 田巻 一彦)

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