October 17, 2008 / 3:11 AM / 10 years ago

焦点:08年度上期に投信市場への資金流入が急減

 大林 優香記者

 10月17日、2008年度上期は投資信託市場への資金流入に急ブレーキがかかったことが明らかに。写真は都内の株価ボード。昨年2月撮影(2008年 ロイター/Toshiyuki Aizawa)

 [東京 17日 ロイター] 2008年度上期は投資信託市場への資金流入に急ブレーキがかかった。投信情報サービス会社リッパーによると、上期の株式投信への資金純流入額は07年度下期に比べ半減し、07年度上期比では8割減となった。

 世界的な金融市場の混乱で株安が加速したほか、円が対ユーロや対豪ドルなどに対し上昇したことで投信の基準価格が下落し、個人投資家の心理が冷え込んだのが背景。

 特に米リーマン・ブラザーズLEHMQ.PK破たん後の9月後半は、昨年後半から「質への逃避」で人気が再燃していた外債ファンドへの資金流入も縮小。各国政府が世界的な金融危機打開に向け協調策を講じているものの、金融市場の先行き不透明感は払しょくされておらず「個人投資家は安全志向を極端に強め、当面は投資“凍結”状態が続く」(大手地銀)との見方が多い。

 <リーマン破たん後の2週間は資金が流出>

 リッパーが集計した月次資金フローを合算すると、4─9月期の追加型株式投信(ETF含む)の純流入額は1兆4329億円となり、07年10月─08年3月期の2兆8316億円と比べ5割減、07年4月─9月期の8兆6901億円との比較では84%減少した。

 米サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅融資)問題が深刻化した昨年夏から資金流入は鈍化したが、今上期は流入額がさらに縮小した。「6月以降にロシアやブラジルなどの新興国の株価が崩れたほか、リーマン破たん後は世界的な市場の混乱で基準価格の下落が加速し、投資家が資金を引き揚げた」(大和ファンド・コンサルティングの広瀬明徳ファンド調査部長)とみられる。

 実際、9月15日にリーマンが破たんする前の2週間は751億円の流入超だったが、破たん後の2週間は243億円の流出超に転じた。結果的に9月の純流入額は508億円と上期の月次流入額平均2388億円の2割強にとどまり、ETFを除く追加型株式投信の資金フローは2254億円の流出超になった。流出超に転じたのはリッパーが集計を始めた2003年1月以来初めて。

 リテールに力を入れる千葉銀行(8331.T)は「上期の投信販売は、巡航速度としている1カ月200億円の半分程度に落ち込んだ。足元では損切りや現金化を目的とする投信解約が増え、資金が銀行預金に滞留している」(細貝隆之・広報部次長)と説明する。

 別の大手地銀も「新規に投資商品を求めて来店する顧客の数は今月に入って前月の半数以下に落ち込み、顧客の安全志向も急激に強まっている」(個人資産統括担当者)と指摘する。

 投資信託協会によると、9月末の国内公募投信の純資産残高は、運用成績の悪化で前月比9.8%減の64兆8621億円となり、ほぼ2年前の水準に落ち込んだ。「米国でも投信市場は株の長期ブルマーケットを背景に拡大した。日本の投信市場も株式相場が回復しないと拡大は見込めない」(フィナンシャル・プランナーの神戸孝氏)とみる向きもある。

 <海外株式・ハイブリッドは流出超、海外債券が1人勝ち>

 上期の資金フローの中身をみると、外債型ファンドの1人勝ちだったことがわかる。野村総合研究所(NRI)の月次の投信資金データを合算すると、海外の複数資産に分散投資する「海外ハイブリッド型」から上期に約8200億円、「海外株式型」からは約7700億円が純流出し、「海外債券型」は約1兆8600億円の純流入となった。サブプライム問題以前から低迷している「国内株式型」も約1800億円超の流出超。

 前年同期は多額の資金を集めていた海外多資産型や海外株式型は、株や不動産投信(REIT)の相場下落で敬遠され、安全性が高く価格変動リスクが小さいとされる外債ファンドに見直し買いが入った。グローバルなマネーフローは、米国発の金融不安を契機に、リスク資産である株やコモディティなどから安全資産である債券などにシフトしたが、投信分野でも同様の資金シフトが起きたことになる。また、年初から先進国だけでなく新興国を含む高金利通貨の債券に投資する投信の設定が相次いだことも、外債ファンドへの資金流入を加速させたとみられる。

 細分化したリッパー分類でも同様の傾向がみてとれる。上期の純流入額トップは約1兆円が流入した「債券型グローバル」、2位は「債券型グローバル短期債」、3位は「債券型エマージングその他」で、上位5分類を外債型が独占した。純流出額では1位が約2880億円流出の「ミックスアセットその他安定型」。「ミックスアセットその他バランス型」と「株式型グローバル」が続き、海外多資産型と海外株式型の不人気を裏付けた。

 個別ファンドで純流入額がトップだったのは7月設定の「UBSブラジル・レアル債券投信(毎月分配型)」62006680JPで流入額は2923億円。「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」62002137JPと「ニッセイ高金利国債ファンド」5640JP.LP>が続き、毎月分配型外債ファンドが上位を独占した。純流出額トップは「マイストーリー分配型(年6回)Bコース」62005038JPの1973億円だった。 

 <運用環境の悪化>

 資金フローと運用成績は相関したのだろうか。上期は東証株価指数、米S&P総合500種、英FT100種総合株価指数が10-14%下落したほか、ハンセン中国企業株(H株)指数が25%、インドのムンバイSENSEX指数が18%下げ、先進国から新興国まで軒並み大幅安となった。ユーロ、英ポンド、豪ドルなどに対する円高の影響も加わり、上期に基準価格の騰落率がプラスになったのはリッパー85分類中7分類だけだった。

 5本以上のファンドがある分類を対象とした運用成績のトップは「株式型業種別薬品・ヘルスケア」のプラス4%で「株式型業種別バイオ」と「債券型グローバル短期債」が続いた。下落率が最大だったのは「株式型ロシア株」のマイナス42%で、「株式型インド株」と「株式型ブラジル株」がマイナス33%で続いた。

 成績上位3分類はバイオを除き、上期の資金フローが流入超となった。しかし、成績下位3分類も流入超で、特にブラジル株型には約1250億円の資金が純流入した。「投資経験が浅い個人投資家は上昇相場の終わりに入って痛手を受ける傾向が否めない」(投信販売関係者)との指摘を短期的には裏付ける形となった。

 NRIによると、10月の公募投信の資金フローは14日までの累計で2578億円の流出超となっており、依然として海外ハイブリッドと株式株式からの流出が多く、海外債券も760億円の純流出となっている。

 大和の広瀬氏は「海外株式型やバランス型はこれまで相当な解約が出たため、相場が一段と下落するとみない限り、解約水準は減ってくる」と予想する。ただ、市場の混乱は収まっておらず「相場が底を打ったとの感じがないため投資家の警戒感は強い。保有資産の価値がき損された投資家も多く、相場に対する安心感が戻るまで新規投資を控える向きが多い」(千葉銀・細貝氏)との見方が優勢だ。

 (ロイター日本語ニュース 編集 田巻 一彦)

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