October 27, 2008 / 4:33 AM / 11 years ago

金融混乱で株が一時バブル後安値割れ:識者はこうみる

 [東京 27日 ロイター] 世界的な金融市場の混乱を背景に、日経平均は寄り付きでバブル後安値を割り込んだ。その後は先物に買い戻しの動きが強まったが、下げ止まり感は乏しい。ドルは戻りが鈍く、円高方向継続の見方が広がっている。

 10月27日、日経平均は寄り付きでバブル後安値を割り込んだ。写真は6日、都内の株価ボード前で(2008年 ロイター/Yuriko Nakao)

 市場関係者の見方は以下の通り。

 ●割安な日本株見直されるには円高の歯止めが必要

 <岡三アセットマネジメント 上席ストラテジスト 伊藤嘉洋氏>

 ―― 日経平均がバブル後安値を更新した後は乱高下しているが。

 「世界経済の混乱が長引くとの懸念を織り込む一方、新興国のデフォルト懸念も加わったことで金融市場の混乱が収まる雰囲気が感じられず、ファンドのキャッシュ化が止まらない状況だ。日経平均はバブル後安値を更新してから、買い戻しも入って乱高下しているものの、こうした現状を踏まえると、コツンとみた感じはしない」

 「まだ不安定な相場が続くと想定できる。しかし、PERやPBR、利回りなどあらゆる指標から見て日本株は歴史的に割安な水準まで下落したことは確か。これも下げ渋る要因だ」

 ―― 日本株が割安な水準を修正する条件は。

 「為替相場の安定、円高に歯止めをかけるのが、割安な日本株が見直されるきっかけになるとみている。今回の円高は外需依存の日本企業に大きなダメージを与えた。方向としては、内需型経済への転換が急がれるものの、すぐにできるものではない。企業業績に対する不安を解消する意味でも、為替相場の落ち着きが重要なポイントになる」

 「今回の円高は世界の混乱から消去法で円が買われたとみられる点を踏まえると、まずは、世界経済を安定させるために、各国が協調して対策を打ち出すことが為替相場の安定に寄与しよう。円高が修正されれば株価のリバウンドが期待できる」

 ●株価反転には21世紀版「ニューディール政策」など必要

 <三菱UFJ証券 投資情報部長 藤戸則弘氏>

 ──日経平均がバブル後最安値を付けた要因は。

 「サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題に端を発した世界的な金融混乱が実体経済のディープリセッション(深刻な景気後退)に及ぶとの懸念が強まっている。1929年の世界恐慌や1989年の日本のバブル崩壊も株や土地などの資産価格の下落から始まった金融混乱がディープリセッションをもたらした。今回も景気後退による企業業績の悪化を株価が織り込みに行っている状況だ。さらに今回はアルゼンチンやロシアなど世界経済をけん引してきたBRICS経済にも懸念が強まっている。一連の混乱がおさまるには時間がかかるだろう」

 ──欧米主要市場に比べ日本株の下落率が大きい理由は。

 「日本経済は外需依存度が高く日経平均は.N225は世界景気連動指数の側面がある。BRICS経済の拡大を背景に業績を伸ばしてきた鉄鋼、非鉄、金属、海運などの企業が来期以降、鋭角的に業績を悪化させる可能性が高まっている。また、欧米を主市場としてきた電機、精密、自動車なども落ちてくるのは必至だ。日本は内需の成長度合いが低いため、世界経済の鈍化がもろに株価指数に影響してくる。さらに円高がドルだけでなくクロス円で進行している影響も加わっている」

 ──必要な対策は。

 「政府の対策が出てきており売り方も警戒するゾーンに入ってきている。ただ、株式買い取りなどは需給面で下落スピードを弱めることはできるが、本格的に株価が反転するためには新たな需要創造が必要だ。利下げなど金融政策は当然前提条件だが、利下げの効果が表れるまでには時間がかかる。21世紀版のニューディール政策など思い切った景気対策することが求められよう。減税など消費者への対策と合わせ、ばら撒きではない有効な公共投資を打ち出すことが必要だ」

 ──株価の下値めどは。

 「投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー(VIX)指数.VIXが24日に急上昇している。こういう場面ではバリュエーションが通用しない相場になる。来期の企業業績も不透明だ。これだけ相場が荒れると下値めどは立てにくい。まずはVIX指数が低下することが株価底打ちの絶対条件になる」

 ●米国の政治空白から不安残り相場の見通し難続く

 <ピクテ投信 投資顧問・ヘッドトレーダー 小野塚二也氏>

 ―― 日経平均はバブル後最安値を更新した後に下げ渋っているが。

 「ここまで状態がひどくなると、当然のことながら対策が施されるとみられるため、売り方も警戒して売れないのではないか。ただ、現状では買いが入らないため、その後の反発について信頼感が出ない。反発しても買い戻しが中心であれば、アヤ戻しに終わる可能性もある」

 「指数の話で言えば、TOPIXは2003年のバブル後最安値を更新していない。これを割り込まなければ、数十年単位における大きなトレンド上での二番底形成から反転──という期待がわずかに残っている」

 ―― 株価の反転に必要なのは何らかの対策か。

 「問題が世界に広がっているため、日本国内だけで経済対策や株価対策を施しても効果が出てくるものではない。やはり、今回の問題の震源地である米国をはじめ、世界が協調して経済対策などの手を打たなければ、株価の本格的な反転は望めないだろう」

 「対策が出ると市場は読んでいる。にもかかわらず、混乱が収まらないのは、大統領選挙を控えた米国の政治空白を不安視しているためだろう。新大統領が就任する来年1月まで、実効性の高い対策が出ないとなれば、耐え切れずに売る動きが出ても当然だ」

 「明確な対策が打ち出されるまで、株式市場で実需筋は動けない。それまで相場は見通し難の状態が続くのではないか」

 ●株安の勢いは低下、為替次第で緩やかに回復

 <大和証券 投資情報部長 多田羅信氏>

 ―― 株価が不安定な動きを続けているが、現状をどうみるか

 「株式市場はファンダメンタルズを無視した需給で崩れされた。海外ファンド勢などによる強烈なデレバレッジやリスク回避の動きは、為替相場を1日で10円も動かすようなマネーの動きになり、一般の投資家に太刀打ちできないという印象を与えた。しかし、企業に実体がある以上、ゼロになるわけではない。すでに株価下落の勢いは低下し、市場は均衡点を探る動きに入っている。現在の株価は相当な景気悪化を織り込んだ水準であり、底値は近いとみている」

 ―― 株価反発のきっかけは何か、望まれる対策は

 「世界最強の通貨を持つ国が世界最弱の株価というのは不自然だ。円高により購買力が強くなっている面もあり、プラスの部分も評価されるべきだろう。1ドル90円でも良いので為替相場が底なしというイメージを払しょくできれば、株価は緩やかに回復するとみている。公的資金枠10兆円の市場安定化策が報じられているが、根本的な対策にはならないだろう。為替の安定に向けた各国の協調姿勢が打ち出されるかがポイントになる。国内に関しては証券優遇税制の延長ではなく、恒久的な税制を打ち出すことで株式の長期保有を促す必要がある」

 ●株価の本格的な反転上昇には時間が必要

 <新生証券 市場商品開発部部長 作本覚氏> 

 ――足元の株価の上昇をどうみるか。 

 「日経平均がバブル後安値を割り込んだことで、ショートから入った短期筋がショートカバーに動いている。前週末の米国株が思ったほど下げていないところをみると、ヘッジファンドなどの売りがかなり進んでいる気配もある」

 「ただ、本格的な買い主体がいない。ショートカバーは入っても、新規買いがどこまで入るかは不透明だ。また、ヘッジファンドのレバレッジがどの程度かかっているのか、手仕舞い売りが今後どの程度出るのかが外部からわからず、不安感は強い。株価が本格的に戻りに転じたわけではなく、上昇トレンドが定まるには時間がかかるだろう」 

 ――政策対応をどうみるか。

 「銀行等保有株式買取機構による買い取りが再開されるならいいニュース。しかし、一方で大型増資を検討する動きもあり、いいニュースと悪いニュースがあれば今の地合いでは悪いニュースに反応する。今の日本株の売り手が銀行ではなく海外勢であることも反応を鈍くしている」

 「今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利下げが実施される可能性もあるが、株価の下落に歯止めはかかりにくいとみている。ヘッジファンドの売りが出尽くすまでは株価の本格的な戻りは期待しにくい」

●円キャリーの巻き戻しは道半ば、円高局面続く見込み

 <東海東京証券 チーフエコノミスト 斎藤 満氏>

 世界の市場がコラプス(崩壊)する中での円独歩高という現象は、ここ10年間に日本が超低金利を続ける中で世界中に広まり、累積した円キャリー(円売り/高金利通貨買い)ポジションが縮小過程にあることを示している。縮小過程は現在進行中で、到底終わったとは言えない。円の買い戻しによる円相場の上昇は、対ドル、対他通貨でも道半ばだ。

 金融政策では、欧米に利下げ余地が大きく、日本の利下げ余地は50ベーシスポイントしかないうえ、当局は金融緩和に慎重だ。金利面からも円はキャリー通貨としての地位を返還することになろう。

 通貨政策では、市場で円売り介入の期待が高まっているようだが、現在はドルと円が2強通貨となっている。ロシア、ハンガリー、豪州や新興国では、ドル売り/自国通貨買いの介入が実施され、ドル高阻止に躍起となっている。この環境下で日本がドル買い介入を実施しても、限界的な効果しか望めないだろう。

 円キャリーの巻き戻しが、対世界各国の通貨で起こっていることに鑑みれば、円売り介入はドルに限定せず、他の通貨に対しても実施されるべきだろう。ただし、外貨準備で新興国の通貨を保有することが適当であるのか議論が必要だ。

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