October 27, 2008 / 1:37 PM / 11 years ago

市場安定に向け政策総動員と国際協調アピール、効果疑問視する声も

 [東京 27日 ロイター] 麻生太郎首相は27日、混乱を続ける金融市場の安定化策として、銀行の株式保有制限や自己資本比率規制の弾力化、金融機能強化法における公的資金枠拡大などを迅速に検討するよう中川昭一財務相兼金融担当相らに指示した。

 10月27日、麻生首相は、金融市場の安定化策として、銀行の株式保有制限や自己資本比率規制の弾力化などを迅速に検討するよう指示。写真は25日、北京で撮影(2008年 ロイター/David Gray)

 政府は同時に、最近の円高進行に対する懸念を明記し、各国間の協調を鮮明にしたG7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)声明を発表、さらなる円高進行には介入など具体的な行動も辞さない考えも示した。政策総動員と国際協調で市場混乱による実体経済への悪影響を防ぐ姿勢を示したが、27日の東京市場では日経平均株価がバブル後最安値を更新するなど対策効果を疑問視する声が聞かれる。

 <空売り規制の強化、従業員持ち株会の円滑化なども指示>

 麻生首相は、中川財務・金融担当相、与謝野馨経済財政相と自民、公明の与党政調会長を首相官邸に呼び、1)株式市場の安定、2)金融機能の一層の強化、3)証券投資のすそ野拡大――の3項目を指示した。

 具体的には、株式市場の安定化策として「空売り規制の強化」と「銀行の株式保有制限の弾力的運用」を行う。中川財務・金融担当相は空売り規制の強化について「11月の第1営業日をめどに発動したい」との意向を会見で表明。銀行の株式保有に関しては、自己資本の基本的項目(Tier1)以内に抑えるとの規定を弾力的に運用することを検討する。

 金融機能の一層の強化では、銀行の自己資本比率規制の弾力運用について指示があり、中川財務・金融担当相は、国内基準行を対象に、自己資本比率規制における

有価証券含み損の取り扱いを見直す方針を明らかにした。政府が国会提出した金融機能強化法の公的資金枠についても現行の公的資金枠2兆円の拡充方針が示された。

中川財務・金融担当相は「数字はまだ決めていない」と述べたが、この問題で与謝野経済財政相は26日のテレビ番組で、10兆円規模に拡大すべきとの見解を示している。

 証券投資のすそ野拡大では、従業員持ち株会による株式取得円滑化のための方策を日本証券業協会に検討するよう依頼した。中川財務・金融担当相は「ただちに実行できると考えている」と述べた。

 <与党には、株式取得機構の買い取り再開・証券優遇の延長の検討を指示>

 麻生首相からは、中川財務・金融相への指示のほか、与党政調会長に対し、1)銀行等保有株式取得機構の株式買い取り、2)証券税制の軽減税率の延長、小額投資者の優遇──を検討するよう指示があった。

 自民党の保利耕輔政調会長は、麻生首相の指示について「速やかに党に持ち帰って検討したい」と述べた。公明党の山口那津男政調会長は、証券税制の軽減税率の延長について「税制全般は年末に検討することになると思う。立法措置が必要なので全体を考えて配慮していきたい」と語った。

 銀行等保有株式取得機構に関連して中川財務・金融担当相は、日銀による銀行保有株の買い取りについて「日銀の判断だが、われわれとしては政府・日銀一体となってこの事態に対応したい。日銀もその考えを共有している。日銀にも効果的な対応をとっていただけると期待している」とした。

 また、中川財務・金融担当相は、与党との役割分担について「税制の問題など議論していい案を作ってほしいという首相の気持ちだろう。私の財務・金融担当相ができる範囲内でやれとの指示だった」とした。

 <G7声明、最近の円は過度な変動>

 さらに政府は、株安の主因と見られている最近の円高進行を食い止めるため、G7各国に働きかけ、円高懸念を打ち出した共同声明の実現にこぎ着けた。

 中川財務・金融担当相は、麻生首相からの指示を受けた後の会見で、最近の円相場を「過度な変動」と位置づけ、「引き続き為替市場をよく注視し、適切に協力する」ことを盛り込んだG7声明を発表した。

 さらなる円高が進行した場合は「マーケットを見て迅速に対応したい。必要があればさらなる対策を当然打たなければならない」と円売り介入など具体的な行動に出る可能性をにじませた。

 ただ、「対策は介入か」と問われ、「次に何をするかは決めていない」とかわし、麻生首相からも「(為替市場での具体的な行動について)具体的にどうしろとの指示はなかった」ことを明らかにした。

 <対策に市場の反応は冷淡、首相「一喜一憂しない」>

 政府が政策総動員と国際協調による可能な限りの市場安定化策を打ち出したものの、27日の市場の反応は冷淡だった。

 株式市場では、日経平均株価があっさりバブル後最安値を更新し、1982年10月以来の安値水準に沈んだ。為替市場でドル/円も92円台から、G7声明を受けて一時的に94円台まで上昇したものの、ドル売り/円買い圧力に変化は見られず、夕方にかけて再び92円台に下落している。

 市場ではG7声明を含めた一連の対策について一定の評価が示されているものの、実効性を疑問視する声が少なくない。

 野村証券金融経済研究所・チーフエコノミストの木内登英氏は、金融安定化策について「日本の金融が揺らげば、さらに国内の景気情勢が悪化する可能性が出てくるため、金融安定化対策はそれを防ぐ措置としては評価ができる」としながらも、「短期的な株価対策の効果はほとんど期待ができず、心理的な効果以外は実効性に乏しい」と指摘する。

 為替市場では、G7声明によって醸成された協調介入に対する警戒感が、目先は円買い圧力を緩和する効果が指摘されている。みずほコーポレート銀行国際為替部の時田剛氏は、「足元の激しい値動きに対し懸念を示したという点において、いったんは効果がありそうだ。若干ではあるがアナウンス効果がある」と声明を評価する。

 ただ、「効果は時間とともに薄れていきそう」とも述べ、「大きな潮流を止め切れるかといえば少し疑問だ。広い意味での協調的な口先介入という理解でいい」と指摘。介入を警戒しながらも円高圧力が継続する地合いに変化はなさそうだ。

 麻生首相は27日夕、官邸内で記者団に対し、日経平均株価がバブル後最安値を更新したことについて「一喜一憂するともりはない」とし、市場安定化策の効果に関して「対策が出たからといって、即という種類のものだとは思っていない。ある程度、時間をかけて見ていかないといけない」と冷静に対処していく考えを示した。 

 (ロイター日本語ニュース 村井 令二記者 伊藤 純夫記者;編集 田巻 一彦)

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