November 6, 2008 / 7:41 AM / 10 years ago

厳しい世界経済の実態、底見えない不安感で株安

 [東京 6日 ロイター] 米大統領選が終わり、市場の目は厳しさを増す実体経済の現実に焦点を当てだした。金融不安の震源地である米国だけでなく、欧州の景気後退もはっきりし出し、世界経済がどこまで失速すれば底に到達するのかわからない不安感が市場を覆いだした。

 11月6日、米大統領選が終わり、市場の目は厳しさを増す実体経済の現実に焦点を当てだした。写真は株価ボードの前を歩く女性。4日撮影(2008年 ロイター/Toru Hanai)

 オバマ次期米大統領が来年1月20日の正式就任を前に、どのような政策スタンスを打ち出してくるのか、当面は経済政策の骨格や財務長官人事に市場参加者の注目が集まっている。

 <ヘッジファンドの処分売り続く>

 6日の東京株式市場では、日経平均の下げ幅が一時、前日比700円を超えた。米株安や円高を嫌気してハイテク、自動車などの輸出関連株が売られている。「安値圏で買った国内勢から利益確定売りが出ている。円高傾向の為替をにらみながら短期筋が先物に売りを仕掛ける動きもある」(大手証券エクイティ部)との声が出ていた。

 また、東海東京証券・エクイティ部長の倉持宏朗氏は「12月決算のヘッジファンドから解約に備えた処分売りが断続的に出ていた」と語る。

 売りの主因は経済指標の悪化だ。5日に発表された10月のADP全米雇用報告によると、民間部門雇用者数は15万7000人減。米供給管理協会(ISM)が5日発表した10月非製造業部門指数は総合指数が44.4で、集計開始以来の最低を記録するなど米経済指標の悪化が続いている。「これまでの急上昇を考えれば当然の一服だが、7日の10月米雇用統計も悪化が予想され、イベント系のヘッジファンド勢などがショートポジションを作りやすい状況だ」(大手証券)とみられている。

 <深刻化してきた米クレジットクランチ、GMの経営危機に影響も>

 さらに実体経済の悪化を印象付けたのが、一部メディアのインタビューに答えたクリントン政権時代の米財務省高官の発言だ。ロジャー・アルトマン元財務副長官は5日、ゼネラル・モーターズが経営破たんを防ぐために「残された時間は非常に短い」と発言。「このニュースが伝わって、午前の東京市場では景気実態への見通しが一段と暗くなって、売り物が多く出てくるようになった」(東海東京証の倉持氏)という。

 ユナイテッド投信投資顧問・シニアファンドマネージャーの高塚孝一氏は「クレジット問題は依然として深刻だ。上位の金融機関の資金繰りは、米連邦準備理事会(FRB)のコマーシャルペーパー(CP)買い取り制度などでひと息ついた形だが、一部の大手企業などでは資金繰りの問題は依然解決されていない。不安が広がれば10月後半のような資産現金化の波が再び訪れる可能性は残っている」と懸念する。

 ある外資系証券の関係者も「米利下げ後も、米クレジット市場でのクレジットクランチは深刻だ。CP発行がままならないため、健全な企業の資金繰りも相当に窮屈になっており、このまま年を越すようなことになれば、米経済の失速は深刻になる」と警戒する。

 <次期財務長官人事の行方> 

 市場の当面の関心は、オバマ次期大統領が指名する次期財務長官と15日にワシントンで開かれる金融サミットの行方だ。オバマ氏はブッシュ米大統領とともに金融サミットに出席するとみられているが、それまでに次期財務長官が指名され、会議に出席するかどうかも注視されている。一部ではオバマ氏が5日の当選確定から48時間以内に指名するのではないかとの観測も出ているという。

 市場では、ガイトナーNY連銀総裁やルービン、サマーズ両元財務長官、ベアー米連邦預金保険公社(FDIC)総裁らの名前が有力候補として上がっている。高塚氏は「金融機関に資産査定を強いることができる人が求められるので、金融問題の本質を知っていながらも、ウオール街の利害関係から離れた人がいいだろう。財務省出身のガイトナーニューヨーク連銀総裁などは適任だ」と指摘した。

 <トヨタショックのリスク>

 一方、国内企業の業績も、世界経済の急ブレーキを受けて深刻な打撃を受けており、きょう6日に決算発表のトヨタ(7203.T)の2009年3月期の営業利益予想が、8年ぶりに1兆円割れになると一部で報道された。ある国内証券の関係者は「円高もあるが、トヨタの営業利益の急減は、日本企業の苦境を象徴しており、株価はかなり織り込んでいるとは言うものの、トヨタショックがあす7日の東京市場に広がるリスクがある」と警戒する。

 新光証券・エクイティ情報部マーケットアナリストの高橋幸男氏は「上期の方が悪いとの見方だったが、実際は下期の方が悪く、さらに来期減益の可能性も指摘され始めている。今までのところ2009年3月通期見通しは約2割減益となっているが、これから発表される決算次第では3割まで落ち込む可能性もある」と指摘。その上で「日経平均の25日線は低下し続けており、きょうは9100円程度になるとみられる。日経平均が終値で9100円台を維持するかに注目している」と述べた。

 <大幅なECB利下げの観測>

 6日の外為市場では、同日の欧州中銀(ECB)理事会を控え、利下げ幅と景気失速の程度にマーケットの関心が集まった。午後の市場でユーロ/ドルは一時、1.2838ドルまで下落し、きょうの高値から100ポイントを超える急落となった。ユーロ/円も朝方の高値127円前半から125.37円まで1円半超の下げとなっている。

 ECBの利下げ幅は0.5%との見方が市場では大勢だが、前日に発表された10月ユーロ圏サービス部門購買担当者景気指数(PMI、改定値)が45.8と同統計開始以来、10年ぶりの低水準となったことで、市場では欧州経済の悪化ぶりが目立った。

 また、シュタルクECB専務理事が「年末ごろに景気が回復するとの期待は消えた。経済は09年に入っても非常に低い成長が続く」と述べたことで、利下げ幅が大きく可能性を指摘する声が出ている。4日に豪中央銀行が市場予想を上回る0.75%の利下げを実施したことも「大幅利下げ観測を呼びやすくしている」(邦銀)という。シティバンクが5日付の顧客向けリポートで、1.0%の利下げが実施されると予想したことも、市場参加者の思惑を強めている。

 ある邦銀関係者はECBについて「足元では協調利下げの動きがみられるが、(金融政策運営は)遅れ気味の印象がある。それを払しょくできるかどうかが注目だ」と指摘。トリシェ総裁の発言から「先行き利下げ方向のニュアンスをかぎ取りたい」と話している。

 <国債価格は上昇基調>

 円債市場でも、日経平均が9000円を割り込んで下げ幅を広げたことで、海外勢による株先売り/債先買いの裁定取引を巻き込んで国債先物は騰勢を強めた。市場では「きのうまでは、投機勢がキャッシュ化した投資資金を金融危機の落ち着きとともにいったん株式に振り向ける動きが出ていたが、世界的な景気悪化が意識される中、再び安全資産の国債にシフトさせているのではないか」(国内金融機関)との声が出ていた。

 大和住銀投信投資顧問・債券運用部国内債券運用第二グループリーダーの伊藤一弥氏は「海外勢による株先売り/債先買いのフローが入っているようだ。年末にかけては日銀の追加利下げの思惑が出てくる可能性がある。長期金利は、年内1.3%を割り込む場面もあるのではないか」と株安/債券高の展開を予想していた。

 世界景気の大幅な悪化を食い止めるには「米国が主導して、大幅な財政出動で景気をサポートするしかない」(外資系証券関係者)との見方が多い。オバマ次期大統領が1月20日まで待たずに大規模な公共事業を含めた新「ニューディール政策」を打ち出すとの期待感がマーケットには多いが、東海東京証券の倉持氏は「オバマ氏の経済政策の具体的内容は現在のところの全くの未知数。マーケットが織り込んで行くような状況ではない」と話している。 

 (ロイター日本語ニュース 田巻 一彦;編集 内田 慎一)

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