December 19, 2008 / 6:37 AM / 11 years ago

日銀利下げ:識者はこうみる

 [東京 19日 ロイター] 日銀は18、19日に金融政策決定会合を開き、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.2%ポイント引き下げ、0.1%前後で推移するよう促すことを決めた。市場関係者のコメントは以下の通り。

 12月19日、日銀は政策決定会合で政策金利を0.1%に引き下げ。日銀前で(2008年 ロイター/Yuriko Nakao)

●日米市場金利の動向を注視、ドル安トレンド続く見込み

 <JPモルガン・チェース銀行 チーフFXストラテジスト 佐々木 融氏>

 日銀による20ベーシスポイントの利下げ、及びCP買い入れ措置は予想通りだった。為替相場への影響については、現在の為替市場がドル主導の動きであることから、日銀の追加的金融緩和のインパクトは限定的であると見ている。相場の決定要因として、日米の政策金利差よりも、3カ月物政府短期証券(TB)の金利差や、米国債10年物とJGBとの利回り格差など、市場の長短金利の動向が鍵となるだろう。いずれにせよ、ドル安トレンドはまだ続くと見ている。きょうはこれから85円方向に相場が展開する可能性もあるが、来週はクリスマス休暇の週でもあり、動意が少なく、ドル/円相場は、80円台後半を中心に推移すると見ている。

●市場の期待に沿った決定、株の反応は限定的

 <立花証券 執行役員 平野憲一氏>

 日銀の決定は株式市場の期待に沿ったもので、好感されているものの、想定の範囲内なので為替が大幅に円安に振れない限り、これを材料に大きく株価が上昇することはない。今回は、市場と日銀との温度差がなかったという点は評価できる。ただ、ドル安/円高のトレンドに変わりはないとみている。国内株式は、企業業績に焦点をおいた業績相場が続けば、為替が引き続き市場の大きな材料となるだろう。

●インパクト不足、ポジション調整にとどまる

 <インベストラスト代表取締役、福永博之氏>

 事前には利下げ見送りへの警戒感もあったため、利下げやCP買い入れなどの政策が発表されたことでいったんショートを振っていた向きのカバーが入った。しかし、注目されたドル高/円安への動きも限定的で、日経平均を上昇トレンドに向かわせるインパクトはないようだ。日銀の金融政策だけでは景気回復に向けた施策として力不足というところだろう。

 日経平均の8700円台前半は、これまでも上値を押さえ込まれてきた水準。ディーラーなどが上値を買い上げても戻り売りをぶつけられて阻まれる展開が続いており、きょうもこの水準で伸び悩んだ。金融政策でもこの地合いを転換することはできなかったようだ。

 政策発表を受けて、不動産株などマネーの流れが滞っていたセクターにはいったん好反応もみられたが、全般はポジション調整の域を出ていないようだ。

●1─3月期に円高進めば、量的緩和へ

 <クレディ・スイス証券チーフエコノミスト 白川浩道氏>

 基本的に想定の範囲からずれてはいない。今回は買い切りオペ増額の話があるが、それイコール量的緩和ではない。今回は円高阻止というスタンスは見えず、1─3月期に円高になれば、量的緩和に踏み切るのではないか。今回はカードを残したとも言える。

●過度な円高防ぐ、CP買い入れで資金繰り円滑化期待

 <大和証券SMBC 金融市場調査部 チーフクレジットアナリスト 大橋俊安氏>

 日銀は無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.1%に引き下げた。国内景気の悪化を強く意識したことに加え、米利下げに前向きに協調する姿勢を示した。米国が事実上のゼロ金利政策をとったことで、日米の政策金利が逆転したため、ドル安/円高が進行した。今回の利下げは、過度な円高を防ぐためにも有効と考えている。

 金融機関や企業の資金繰り支援策の拡充にも配慮され、長期国債の購入の増額やCPの買い入れが盛り込まれた。CP市場の機能を回復させ、企業の資金繰りを円滑化させるため、年内にCPの購入に踏み切ることを発表している日本政策投資銀行との相乗効果に期待したい。

 協調利下げから株安、円高に歯止めがかかり、輸出関連企業や金融機関などが株価で堅調な局面となれば、連動性の強いクレジット市場はタイト化する可能性がある。

●ドル95―100円の水準は相当に遠い

 <野村証券金融市場部上級専任職 高松弘一氏>

 日銀が政策金利を0.1%引き下げたことで、いわゆる「のりしろ」がなくなってきた。また、量的緩和に関してどこまで拡大路線をアピールできるかがポイントになるだろう。2002年から2003年のように介入で円高を食い止めることができるか注目している。ただ、ドル売りという大きな流れのなかで、95円、100円という水準はものすごく遠く感じられる。目先の動きについては、例えばユーロ/ドルが前日までクライマックス的な上昇をみせていたので、年末に向けてポジションを解消するドル調整の可能性もある。それでもドル/円は上昇してせいぜい92円ぐらいではないか。

●今後も緩和姿勢続けるべき

 <新生銀行 キャピタルマーケッツ部次長 勝智彦氏>

 利下げ賛成が大半を占める7人に上ったのは、日銀短観や鉱工業生産にみられる実体経済への影響が明るみになるにつれ、金融政策を緩和すべきとの見方が日銀内に浸透している裏付け。今後も、ゼロ金利政策を含め緩和姿勢を続けていくべきだ。一連の政策決定に関しては、マーケットに促されるかたちでのなし崩し的な印象も拭い切れない。政策決定を巡っては、日銀が何をみて行動しているのかが「あやふや」な面もある。市場との対話を仕切りなおすうえで、日銀の景気シナリオを明確にすることには課題が残る。

 国債買い入れの増額に踏み切ったことは、債券市場の需給バランス改善に作用しそう。年限別に買い取りすることで、これまで短期に集中していた偏りが解消され、金利低下を促す可能性がある。

●CP買い入れ、企業の資金繰り悪化に歯止め

 <三井住友アセットマネジメント 保険資産運用第一グループ・ヘッド 堀川 真一氏>

 米利下げに続き、日銀も政策金利の誘導目標を引き下げたことに加え、資金供給策としてCPの買い入れを決めたことは、日銀が円高阻止、企業の資金繰り支援を拡充する強い姿勢を示した。マーケットでは、財政出動とともに今回の金融緩和策を実施することで、実体経済の悪化を防ぐ効果を期待している。CPの買い入れは大企業の中でも発行が難しいところがあるだけに、企業の資金調達を円滑化させる効果が期待できる。大企業の資金繰り悪化に歯止めがかかれば、中小企業にもスムーズに資金が流れる。

 今回の金融緩和策は短期的にはクレジットのタイト化要因になるが、中長期的には景気後退の長期化懸念が依然として払しょくできていないことから、スプレッドの低下幅は限られるとみている。

●コール市場の機能は低下

 <セントラル短資 執行役員総合企画部長 金武審祐氏> 

 市場が事前に予想していた対策のほぼ全部が出てきたという印象だ。景気に対する日銀のかなり厳しい見通しが反映されている。

 無担保コール市場では金利は全般的に低下したが、すぐに日銀の決定を消化できなかったようだ。翌日物の誘導目標を0.1%とすると同時に、超過準備への付利も0.1%としている。資金の取り手(調達側)にとっては0.1%以上で資金を取りたい場合、出し手(運用側)にとっては付利の対象先以外の金融機関が資金を運用したい場合でしか、マーケットで取引を行う妙味がなくなってしまう。取引への参加が狭まり、市場残高は減少することになるだろう。

 このように市場機能を犠牲にしても、金融緩和をする必要があると判断したのではないか。市場機能を殺さないという白川日銀総裁の意思に反する決定であるようにも思えるが、先だっての米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げがかなり大きく影響したとみている。

●量的緩和にかなり近い、長期金利は1.2%割れも

 <大和住銀投信投資顧問・債券ストラテジスト 奥原健夫氏> 

  日銀は政策金利を0.1%に引き下げた。日銀内部でも抵抗があったといわれているCP買い入れに踏み切ったほか、長期国債買い入れ増額などの流動性対策を合わせて決定。市場の期待に十分に沿った内容だ。

 今後、2003年の量的緩和政策にかなり近い状況になると予想される。この後は円債市場では時間軸効果が徐々に出て、10年最長期国債利回り(長期金利)は1.2%割れを目指すのではないか。

●年度内に量的緩和策再導入の可能性

 <野村証券金融経済研究所・チーフエコノミスト 木内登英氏>

 政策金利引き下げについては、政策委員8人のうち7人が賛成、反対は1人(野田委員)であった。日銀は景気の現状判断を「停滞している」から「悪化している」へと下方修正しており、これが政策金利引き下げ決定の背景であることを示唆している。しかし実際には、米国での積極的な緩和策を受けて、円ドルレートが足下で13年振りの円高水準に達したことが、利下げの決定を後押しした側面も強かったとみられる。政策金利の引き下げに加えて、企業の資金繰りを助けるCP(コマーシャル・ペーパー)の買い切りを初めて実施すること、長期国債の買い切り額を現在の毎月1兆2000億円規模から1兆4000億円規模に増額することも合わせて発表した。「金利」と「量」の両面からの積極策実施は、金融市場の期待に応えるいわば「満額回答」であり、この措置によって円高急伸のリスクは当面減じられたとみておきたい。

 今回の積極策実施にもかかわらず、日銀は早晩、追加の緩和策実施を迫られよう。世界的にデフレ懸念が強まる中、主要国ではさらなる積極的な金融緩和策が実施される可能性が高く、これが円高圧力の高まりなどを通じて日銀に追加緩和策実施の圧力となろう。日銀は年度内にも追加緩和策を打ち出すとみておきたいが、次の一手はゼロ金利と言うよりも量的緩和策再導入となる可能性がやや高いと思われる。日銀当座預金残高に再び目標値を設定し、それを段階的に引き上げることで金融緩和策を強化していることを演出するような枠組みが想定される。米国での量的緩和策は、金融当局が特定の金融資産の購入を拡大させることを通じて深刻な資金ひっ迫の緩和を目指す実効性の高い措置であるのと対照的に、資金ひっ迫の程度が欧米ほど深刻ではない日本での量的緩和策は、金融市場の安定確保に比重を置いた、よりシンボリックな性格を帯びている点が特徴となるだろう

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