February 3, 2009 / 9:11 AM / 11 years ago

銀行保有株買い取り、金融システム安定のための安全弁=日銀総裁

 [東京 3日 ロイター] 日銀は3日開催の政策委員会・通常会合で、銀行保有株の買い取りを約4年半ぶりに再開することを決めた。買い取り規模は1兆円。株価下落により、金融機関の株式保有リスクが高まっていることから、買い取りを再開することで、金融システムの安定確保に全力を挙げる。月内の実施を目指す。

 2月3日、日銀は、銀行保有株の買い取りを約4年半ぶりに再開することを決めた。写真は記者会見する白川日銀総裁(2009年 ロイター/Michael Caronna)

 白川方明総裁は決定後の記者会見で、銀行保有株の買い取り再開について「金融システム安定のための一種の安全弁の役割を果たすものだ」と述べ、金融システムの安定に力点を置いた措置であることを強調した。 

 <対象はBBBマイナス相当格以上> 

 買い取り期間は2010年4月末までとし、2012年3月末まで市場売却しない。対象株式は発行企業の格付けがBBB─(トリプルBマイナス)格相当以上で、取引所における売買成立日数が年間200日以上あり、かつ売買累積額が年間200億円以上のものに限定する。

 対象金融機関は日銀当座預金取引先銀行のうち、1)株式等保有額が自己資本(Tier1)の5割を超える先、もしくは株式等保有額が5000億円を超える先、2)自己資本比率規制上、国際統一基準を採用している先──のいずれか。金融機関ごとの買い取り上限は2500億円。

 <銀行は株保有リスクが一番大きい> 

 日銀はこれまで、銀行の株式保有リスクの削減という観点から、関与し得る手立てがあるかどうかについて慎重に検討してきたが「国際金融資本市場における緊張の持続が、株価の下落や信用コストの高まり等を通じて、資金仲介機能と金融機関経営の両面に大きな影響を及ぼしている」と判断、買い取り再開に踏み切った。

 白川総裁は、株買い取りの背景について「足元の欧米金融機関の動向は不安定な地合いを高めている。日本の金融システムに対する見方をここにきて大きく変えたということではないが、確実に昨年秋以降、状況は変化してきている」と指摘。その上で、再開のタイミングに関して「国際金融資本市場の動きがひとつの大きな要因。米欧において金融システムをめぐる不安感が再び高まりをみせるなど、強い緊張感を示しており、そういう状況の中で年度末が接近してきていることから再開を決めた」と説明した。

 銀行の株式保有リスクについては「大手金融機関が負担しているリスクの中でどのリスクが一番大きいかということをみてみると、信用リスクではなく、株式の価格変動リスクが一番大きくなっている」として、「そうしたリスクを常に意識しながら、経営をしていかなければいけないというのが、現実の日本の大手金融機関の状況だ。前回に比べて、確かに株式保有の絶対額は減ったが、依然として株式保有リスクが一番大きなリスクであることは変わっていない」と語った。 

 <日銀が受け入れる安心感に意味> 

 もっとも、日銀が株買い取りを再開したとしても金融機関が利用するかどうかは不透明だ。亀崎英敏審議委員は昨年12月25日の会見で「現時点での金融機関の株式保有スタンスをうかがうと、日銀による株式買い入れ再開を利用して、保有株式を売却したいとの具体的なニーズはあまり聞かれていない」ことを明らかにした。

 白川総裁は「年度末にかけて株価がさらに下がるかもしれないということを金融機関の経営者が意識すると、心理面でも行動面でも強いブレーキとなる」と指摘。その上で「このこと自体で金融機関がより積極的に融資をしていくということには必ずしも一対一で対応するわけではないが、常に最悪の状況を意識するという要因を軽減していくことの意味は少なくない。結果として、日銀による株式の買い入れがなかったとしても、つまり金融機関が実際に株を売ってこなくても、いつでも日銀が受け入れるという安心感はやはり意味がある」とその効果を説明した。 

 <健全性はきちんと担保されている> 

 今回の決定について、白川総裁は「個々の金融機関の損益分岐点の状況を意識して決定したわけではない」、「株価対策・下支えという意味合いはない」などと述べ、あくまで金融システムの安定確保を踏まえた措置であることを強調した。

 対象金額の拡大等については「今回発表した案が現時点ではもっとも望ましいということで決定した。今これを変更するということは考えていない」と語った。

 日銀のリスク資産買い取りをめぐっては、すでにコマーシャルペーパー(CP)の買い取りを始めているほか、社債の買い取りも検討するなど、中銀としての財務の健全性を危惧する声も出ているが、これについて白川総裁は、買い取り総額や株式の信用度に制限を設けたことなどを説明した上で「全体として物価の安定、金融システムの安定という政策目的を実現するための財務の健全性はきちんと担保されている」と強調した。 

 <政府紙幣は慎重な考慮を要する> 

 一方、景気対策として一部で取りざたされている政府紙幣の発行については「仕組みいかんによっては、実質的には将来の返済が必要な資金調達である国債の市中発行と同じか、あるいは通貨の信任を損なうほど大きな弊害を伴う無利息の永久国債の日銀による引き受けと同じか、そのいずれかになる」と指摘。

 後者については、具体的な弊害として、1)無利息かつ転売不能な資産を保有することで、円滑な金融調節が阻害されたり、日銀の財務の健全性が損なわれることへの懸念を通じて通貨に対する信任が害されるおそれがある、2)政府が日銀による国債の直接引き受けと同じ仕組みで恒久的な資金調達を行えば、国の債務返済にかかる能力や意識に対する市場の懸念を惹起し、長期金利の上昇をまねくおそれがある──ことを挙げ、政府紙幣の発行は「非常に慎重な考慮を要する」と懸念を表明した。

 (ロイターニュース 志田義寧記者 伊藤純夫記者 中川泉記者)

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