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大手電機は来期も苦戦、再編も視野に生き残りへ正念場
2009年2月9日 / 10:09 / 9年後

大手電機は来期も苦戦、再編も視野に生き残りへ正念場

 [東京 9日 ロイター] 大手電機メーカーの2010年3月期は、世界的な需要の急激な減少に直面し、大きな構造変化を強いられる展開になりそうだ。薄型テレビの販売が世界規模で増加から減少に転じ、その他のデジタル製品も普及率が上がって高い成長が見込めなくなっている。

 2月9日、大手電機メーカーの2010年3月期は大きな構造変化を強いられる展開が予想される。写真は台湾の家電量販店で売られる薄型テレビ。先月撮影(2009年 ロイター/Nicky Loh)

 ビジネスモデルの大幅な転換が必要になっているが、足元の需要減少のテンポが速すぎるため、その対応に追われて明るい未来を展望できずにいる。業界再編も視野に入った今、電機業界は生き残りに向け正念場を迎えつつある。

 <緊急避難的対応のコスト削減>

 「コスト削減が十分だと認識していない。為替、ビジネス状況など不安要因があり追加的に検討する」──。ソニー(6758.T)の中鉢良治社長は1月22日、09年3月期(今期)が赤字見通しになると発表した会見で一段のコスト削減の可能性に言及した。ソニーは来期2500億円の費用削減を行なうが、それさえ緊急的な措置であるとの認識だ。

 パナソニック(6752.T)は今期3800億円の当期赤字を見込む。薄型テレビ事業の工場設備の減損などを中心に今期に3450億円の構造改革費用を計上、その効果で来期に1000億円のコスト削減効果を想定する。ただ、上野山実取締役は4日の会見で「(来期は)円高や販売減の影響で、09年3月期に比べ3000億円くらい(営業損益が)悪化する要素があると思う」と指摘。2000億円分のコスト削減策を見出さないと、営業赤字転落の危機に陥ってしまう。 

 世界的な景気後退を受けて、電機大手の今期業績見通しはソニーやパナソニックを含め軒並み悪化。日立製作所(6501.T)からシャープ(6753.T)までの大手8社のうち、黒字見込みの三菱電機(6503.T)を除く7社が予想する今期の当期赤字額は合計1兆9200億円。IT(情報技術)バブル崩壊により過去最悪だった2002年3月期とほぼ同水準となる。

 この結果、各社は大規模な人員削減、工場閉鎖など構造改革を打ち出さざるを得なくなった。日立は固定費を来期末までに2000億円削減するほか資材費の3000億円圧縮を目指す。シャープは今後2000億円の総経費削減に取り組む。東芝(6502.T)も来期、固定費を3000億円削減。西田厚聡社長は1月29日の会見で「厳しい経営環境は2009年度も継続する。環境の急回復を期待しないで取り組む必要がある」と強調した。 

 <液晶テレビは初の前年割れ>

 業界全体を覆う悲観ムードは、薄型テレビなどデジタル家電の成長が踊り場を迎えたほか、自動車用機器が大幅に落ち込むなど猛烈な需要不振が業界の中核的な事業分野を直撃しているためだ。

 米調査会社ディスプレイサーチによると、2009年の世界における液晶テレビの販売額は645億ドル(約5兆8000億円)の予想で、08年見込み770億ドルから16%減少する。液晶テレビの金額ベースでの前年割れは初めて。市場縮小予想に加え、大幅な韓国ウォン安に伴い、薄型テレビなどで競合するサムスン電子(005930.KS)とLG電子(066570.KS)の韓国勢に対し日本メーカーは一段と不利な立場に追い込まれている。

 自動車販売は最大市場の米国で下げ止まりの様子が見えない。2007年に約1600万台だった米国の新車販売実績は、今年1月の実績を基に年率換算すると1000万台の大台を割り込む激減ぶり。日立の古川一夫社長は1月30日の会見で「自動車がこういう形になると(収益上の)ぜい弱性が出る」と語った。

 いちよし投資顧問チーフファンドマネージャーの秋野充成氏は電機各社の来期見通しについて「売り上げの伸びは期待できない。悪化の加速は止まるかもしれないが、V字型回復はほとんど期待できない」と指摘。各社が打ち出しているコスト削減についても「合理化効果とか構造改革でのコスト削減についても、現状の方策は売り上げの減少に追いつかない」との見方を示す。

 <DRAMなど市況回復の兆しも>

 業界側も手をこまねいているわけではない。大幅な価格低迷が続いたDRAM価格は1ギガビット品のスポット価格が昨年末の60セント前後を底に上昇に転じ、足元は1.2ドル程度。エルピーダメモリ6665.Tの坂本幸雄社長は6日の会見で「各メーカーが相当減産をしていてる。3月くらいに採算ラインにできればいいと思っている」と期待感を示した。シャープ(6753.T)の濱野稔重副社長は、液晶テレビ・パネルの在庫状況について「生産調整して3月末は前年の3月に対して大きく改善する見通し」と述べた。

 JPモルガン証券・シニアアナリストの和泉美治氏は、回復の兆しの有無について「中国向けの電子部品で少し動きが出ている。4─6月は生産が少し戻ってくると思う」と語る。いちよしの秋野氏は、株価と不動産価格の下落に伴い委縮した米国の消費マインドを上向かせるカギとして、米国での「逆資産効果の解消」を挙げる。同氏は「米国では不動産の下げ止まりは見えていないが、株価が下げ止まったら家計のバランスシートが改善する」と強調。世界最大市場の回復に向けたシナリオを示した。

 <体質強化は進むか>

 ただ、「百年に一度」といわれれる世界的な不況が一段と深刻になれば、業界のコスト削減努力は一瞬にして帳消しになる可能性も否定できない。現時点ではどの程度の下振れリスクがあるのかを正確に予測するのは困難だが、そうした状況に陥れば「一企業でできることには限界がある」(和泉氏)とも言える。社会的な影響が大きい大手電機メーカーが業績悪化を後追いする形で人員削減を続ければ、国内の消費マインドを一層冷え込ませるおそれもある。

 経済環境が一段と悪化した場合、業界再編による抜本的な構造転換に動く機運も高まる可能性もある。国内の電機各社は複数のメーカーが特定の事業領域で重複し、結果的に1社当たりの事業規模や収益性、グローバル展開などの点で、海外の強豪ハイテク企業に比べ大きく見劣りする弊害が指摘されている。和泉氏は、問題事業の整理や再編が本格化する可能性について「間違いなく増えていくと思う」とみる。

 すでに半導体分野では再編を目指す動きが表面化しており、どの程度本格的な形に発展するかは予断は許さないが、未曾有(みぞう)の不況の推移が業界再編を摸索する動きに大きな影響を与えることは間違いなさそうだ。

 (ロイター日本語ニュース、浜田健太郎;編集 田巻 一彦)

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