February 19, 2009 / 10:50 AM / 9 years ago

円相場に構造変化の兆し、「リスク回避の円高」圧力が急速に緩和

 基太村 真司記者

 2月19日、円相場には構造的な変化が生じつつあるとの声が出ている。写真は東京都内の外貨両替所。2007年7月撮影(2009年 ロイター/Yuriko Nakao)

 [東京 19日 ロイター] 外為市場で円が弱含み始めている。リパトリエーション(資金の本国還流)によるドル上昇を背景に、円が押し下げられていることが主因とみられている。

 しかし、年度末を控えリパトリを進めるはずの国内勢が海外投資に動いていることや、世界同時の景気減速で円だけが機械的に買い上げられた反動など、円独自の理由で売られ始めたとの声も上がっている。

 現在は積み上がった円買いポジションの圧縮が円安要因の中で大きいとみられているものの、一時のような円全面高圧力は急速に緩和している。円相場には構造的な変化が生じつつある。

 <ドル上昇ピッチ加速が円相場を押し下げ>

 「株安でクロス円を売っても機能しなくなってきた」――。為替関係者の間では、こんな声が上がり始めている。これまで市場では、株安が進めば投資家がリスク回避姿勢を強めるため、キャリー取引狙いで売り込まれた円に買い戻し圧力がかかるとの見方から円買いが進んできた。だが、2月に入り円の上昇は徐々に失速。逆にじり安が進み始めている。

 大きな変化の1つは、ドルの上昇ピッチ加速だ。米景気の急減速とくすぶる金融危機への懸念、積極財政に転じた米政府の財政悪化リスクなど多くのドル売り手掛かりを抱えつつも、ドルは2月に入ってから対円以外でも上昇が目立った。主要通貨に対するドルの値動きを示すドル指数は前日までに、3カ月ぶり高水準を更新した。

 金融危機が飛び火した欧州の新興国・金融機関への懸念が急速に高まり、ユーロや英ポンドなど英欧通貨が大きく下落。その背景で「質への逃避的な動きとして、ドルへのリパトリエーションが起こっている」(在京英銀関係者)という。ドルの全面的な上昇が円の押し下げにつながっている。

 <日本からの資本流出も円じり安の背景>

 一方で、円独自の理由もいくつかある。ある外銀関係者が着目するのは、国内大手投資家が海外投資に動いている点だ。例年、年度末を控えたこの時期は、国内勢が決算対策のリパトリエーションに動くことが多く円も上昇しやすいとされる。

 しかし、今年は「大手投資家が断続的に(海外投資に伴う)ドル/円やクロス円の買いに動いている。業績が厳しいとはいえ、外資系に比べればまだ余裕がある。長い目で見た久々の円高局面は、(ドルなどの)拾い場と判断しているようだ」という。

 年度末が近づいているにもかかわらず、国内勢の海外投資意欲は確かに根強い。2月初旬に仕組み債解消に伴う巨額の売りで大きく下落した豪ドル/円は、その直後から解消売りにほぼ匹敵するまとまった買いが入り、豪ドル/円は前週に1カ月ぶり高値へ急反発。データから見ても、この時期は資本流入が多くなる対外債券投資が2月第2週まで4週連続で資本流出を記録している。特に前週の買い越し額は、3年4カ月ぶりの高水準だ。

 <短期筋のポジション圧縮も急速>

 短期筋が相次ぎ円買いポジションを圧縮させていることも、ここにきて円が弱含み始めた一因となっている。投機筋のポジション動向の参考値として知られる米商品先物取引委員会(CFTC)のIMM通貨先物の取組状況によると、2月3日までの1週間で円の買いポジションは主要通貨の中で最大規模に膨らみ、買い越し額も昨年4月以来の高水準に達していた。

 世界同時の景気悪化で「すべての通貨に売り材料がある」(都銀ディーラー)中、円は投資家のリスク回避姿勢を材料に幅広く買い上げられてきたが「他に買い通貨がなかったので、通貨を扱う世界中の投機家は軒並み円の買い持ちに傾いていた。その分円高は進んだが(リスク回避姿勢の高まりにつながる)株安に歯止めがかかり始めたこともあり、追随してさらに円を買い上がる参加者がいなくなった」(後出の外銀関係者)というわけだ。

 <1月高値上抜けなら「円売り材料探し」へ>

 「株安ならリスク回避で円高」の構図に変化が現れ始めたことで、円相場に対する見方も少しずつ変わり始めている。これまで円相場を上下させてきた要因は投資家のリスク姿勢という切り口ばかりで「日本のファンダメンタルズはほぼ無視」(別の外銀ディーラー)だった。しかし、現在は東欧で新興国通貨が軒並み最安値を突破、世界的に株価が安値圏で推移するなど、リスク度合いが増している状況にもかかわらず円は下落している。その背景を探り出そうと「日本の悪材料に少しずつ目が向き始めた」(同)ためだ。

 その象徴となりつつあるのが年率換算でマイナス12.7%と、他の主要国より厳しい落ち込みとなった08年10―12月実質国内総生産(GDP)だ。直接的にGDPを受けて円が売られたわけではないが、ある外資系金融機関はGDPの発表後に資産配分に占める円の比率を引き下げた。「長く続いた円キャリー取引解消による円高は一巡し、正常な水準に円が戻ってきた」として、現在は日本からの資金流出状況なども含めたファンダメンタルズに関心を持っているという。

 18日の海外市場で一時93.96円まで上昇、1カ月半ぶり高値をつけたドル/円は、19日東京市場で93円前半まで下落するなど、円が大きく下落するには至っていない。ある都銀のチーフディーラーは「現在はまだ(ドル/円の)ショートポジションが圧縮されている過程で、買い戻しの範囲内の動き。しかし、年初来高値(の94.65円)や心理的ふし目となる95円台を突破して勢いがつけば、市場関係者は潮目が変わったと見て、(円を売り仕掛けるため)日本景気の減速など円の売り材料を探し始めるだろう」と話している。

 (ロイター日本語ニュース 基太村真司記者;編集 田巻 一彦)

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