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G20は「船頭多くして船、山に登る」、金融規制強化に踏み込めず

 [東京 16日 ロイター] 日米欧に新興国を加えた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は14日、世界同時不況を脱する決意を表明したが、野放しの金融資本の取り締まりを含む金融規制強化については踏み込めずに終わった。

 3月16日、G20は「船頭多くして船、山に登る」、金融規制強化に踏み込めず。写真は14日、G20に出席した各国代表(2009年 ロイター/Andrew Winning)

 ただ、4月2日に予定されるG20の首脳会合(サミット)に向けては、租税回避地(タックス・ヘイブン)問題に動きが見られることや、米バッドバンク計画の詳細案発表なども予想され、今後はそれらの実効性に注目が移りそうだ。

 「今回のG20は船頭多くして船、山に登るという状態。米国が主張した財政刺激策GDP比2%規模は欧州と合意できず、金融規制強化については総論賛成、各論反対となった。震源地となった米国は4月の首脳会議に向けて宿題を課された」と東海東京証券チーフエコノミスト・斎藤満氏は分析する。

 米財務省高官がG20会議の開催地である英国のホーシャムで明らかにしたところによると、同省は、金融機関の不良資産買い取りに向けた官民共同ファンド設立の詳細を1週間以内に発表するという。

 「結果から類推すると、事前のすり合わせができていなかったようだ。G7にはG7Dのような事務方の事前調整機能があるが、G20は新興国も入って調整が難しかったのだろう」とJPモルガン証券チーフエコノミスト・菅野雅明氏は言う。

 米国が主張した追加的財政出動については、ドイツのシュタインブリュック財務相が過度の景気刺激策は世界経済に深刻なインフレをもたらす恐れがあるとして退けた。

 <ヘッジファンド規制>

 租税回避地の存在や規制監督外の金融資本が、不平等を拡大し、ボラティリティの連鎖を生み、金融危機の引き金を引いたとの認識が世界的に広まったことを背景に、今回のG20は開催され、金融規制については何らかの結果が期待された。

 しかし、会議の声明は「ヘッジファンドまたはそのマネージャーが登録され、そのもたらすリスクを評価するための適切な情報を開示すること」と「格付け会社が登録され、証券監督者国際機構(IOSCO)の基準への準拠すること」など登録制や情報開示にとどまった。

 ヘッジファンド規制については、大陸欧州が前向き、米英が後ろ向きだが、対象となるヘッジファンド業界では自然淘汰が進行しており、金融市場での影響力も弱まりつつある。

 著名投資家のジョージ・ソロス氏は、ヘッジファンドの運用額が最悪のケースで現在の4分の1の規模に縮小すると予想する。

 2008年のピーク時には1.9兆ドル以上の総運用資産規模を誇ったヘッジファンド業界は、昨年は運用損失などで全体の2割程度にあたる3500億ドルの資産を失った。顧客はヘッジファンドの運用成績急低下で解約(資金の引き揚げ)を希望しているが、大手ヘッジファンドは相次いで解約停止をしている。

 <欧州発の租税回避地取締り>

 欧州主要国は2月22日、ベルリンで緊急首脳会合を開催し、ヘッジファンドなどが拠点とするタックス・へイブンの取り締まりを強化し、非協力的な租税回避地には制裁を含む規制を講じることで合意した。

 同会合は4月にロンドンで開催されるG20サミットを前に、欧州内での共通認識を確立するために開かれたもの。これを受けて前週には、スイス、リヒテンシュタイン、アンドラ、モナコが、国内の銀行法を国際的な基準と一致させることを約束した。

 しかし、シュタインブリュック独財務相は15日「(これらの国々が)発表したことと、法律に裏打ちされた具体的な合意や措置の間には隔たりがある」とし、実効性に疑問を投げかけた。

 経済協力開発機構(OECD)は現在、リヒテンシュタイン、アンドラ、モナコを非協力的な租税回避地に指定している。

 英エコノミストのスーザン・ストレンジ氏は著書で、タックス・ヘイブンを閉鎖するための手段として、1つの課税管轄圏からタックス・ヘイブンへの資金移転に携わる銀行のブラック・リストを作成することを、G10諸国のうち数カ国間でも合意することが必要だと主張している。

 租税回避地の閉鎖は「金融ばかりに注目が集まるにつれて、不平等が拡大し、不安定さが増し、思いもかけない不愉快な出来事が起きる」のを阻止するために、実効性のある選択肢の1つだとストレンジ氏は位置づけている。 

 <G20サミットと米国>

 米ニューヨークタイムズ紙は、オバマ米大統領が格付け会社やヘッジファンドに対する金融規制強化策の策定を進め、4月2日のサミットで改革の基本方針を説明する予定だと報じた。

 米政府筋によると、格付け会社については、格付け会社が証券化商品などの金融商品の組成を手助けすることで、審査する相手先の金融機関から報酬をもらうという利益相反問題を解消するための明確なルールを策定する。

 ヘッジファンドは、現在は任意となっている登録制を義務化し、証券取引委員会(SEC)の監督下に置く。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)等のデリバティブは取引を集中決済方式に移行する。住宅ローン専門ブローカーも政府の管轄化に置くなど、オバマ政権は規制に後ろ向きだった前政権から大幅な政策転換をする姿勢を見せている。

 サマーズ米国家経済会議(NEC)委員長は13日、世界的な規制改革の流れにおいて米国がリードすべきとし、規制当局が互いに争うようなことがあってはならないとした。委員長は「世界的にみて、米国は規制基準のレベルアップをリードしなければならない」と語った。

 しかし、サマーズ氏の発言については「財政状況が厳しい中で、これまで脱税で失った歳入を取り戻したいという意欲の現れではないか」(民間エコノミスト)との声も聞かれる。

 米国はマイナス成長で税収が大幅に落ち込む一方、危機対応により歳出が際限なく拡大するという財政の非常事態に直面するなか、タックス・ヘイブンを活用した富裕層や大企業向けの節税を見逃せなくなっている。

 米司法省は2月19日、スイスの銀行大手UBSUBSN.VXUBS.Nに秘密口座を保有する米国人約5万2000人についての情報開示を求めて同行を提訴した。フロリダ州の連邦地裁判事はUBSに4月30日まで対応するように命じた。

 これに先立ってUBSは、脱税の疑いのある約250人の顧客情報を米内国歳入庁(IRS)に開示し、脱税ほう助について7億8000万ドルの罰金を支払うことに合意していた。しかし、情報を開示する口座数をめぐり米当局と食い違い、問題が法廷に持ち込まれることになった。 

 (ロイター日本語ニュース 森佳子 編集 橋本浩)

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