March 19, 2009 / 6:29 AM / 9 years ago

FRB長国買入、日米金利低下とインフレ懸念の思惑交錯

 [東京 19日 ロイター] 19日の東京市場は、米FRBの長期国債買い入れ表明を受け、日銀が前日に発表した長国買い切り増とあいまって短期的に日米で長期金利が低下するとの思惑が高まって国債先物への買いが優勢になった。

 3月19日、FRBの長期国債買い入れを受け、日米金利低下とインフレ懸念の思惑が交錯。写真はFRBの建物。昨年9月撮影(2009年 ロイター/Jim Young)

 一方で国債増発によるインフレリスクの高まりを警戒する声が外為市場で高まり、ドル売りの色彩が濃くなり、ドル/円は95円台に下落した。株式市場はそうした展開の中で、身動きできずに小幅安の展開となっている。

 円債市場は、寄り付きから短期筋の買いが先行。中心限月6月限は前日比60銭を上回る水準まで買われた。もっとも戻り売り、益出し売りがみられ、上値を重くする場面があった。市場では「連休を控えて、積極的なポジションを取れない」(国内証券)との声も出ていた。

<日米市場の相関高く、金利同時低下の可能性>  

 市場関係者の注目を集めたのが、FRBの長国買い取り方針の表明だ。前日の日銀による長国買い切り増の表明後は、それほど反応しなかったマーケットだったが、19日は買いが目立った。

 市場では「前日の米国債市場は、予想外の買い入れ発表に10年ゾーンを中心にラリーした。長い目でみれば日米市場の相関は高い。程度の差はあれ、円金利にも低下圧力がかかるとみられる」(ドイツ証券・チーフ金利ストラテジスト、山下周氏)との声が出ていた。

 ただ、こうしたFRBの決断の背後には「米国の財政運営の健全性、FRBやドルの信認といった大事なものを危険にさらすことを覚悟しながら「綱渡り」的な政策運営を行わざるを得ないほど、米国経済は未曾有の危機に陥っている。勝算がなくとも政策総動員を続けざるを得ないという苦しい状況で、株式市場を中心にこのところ広がっている楽観論とはまったく異なる経済のビューがそこに厳然と存在している」(みずほ証券・チーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏)という指摘もある。

 さらに中銀による財政ファイナンスへの懸念も広がり出した。バークレイズ・キャピタル証券・チーフストラテジスト、森田長太郎氏は「FRBは公式には表明していないが、財政ファイナンスの方向性をかなりはっきりと打ち出したと受け止めている。先進国はゼロ金利・量的緩和クラブといわれる状況だ。各国中央銀行は信用緩和のメニューはほぼそろえてきている。財政拡張の中で結果的には財政ファイナンスになることは否定のしようがない」と述べる。

 <ドルにプリンティング・マネーの懸念>

 こうしたプリンティング・マネー(紙幣増刷)への懸念は、外為市場でより鮮明に出ている。FRBの発表を受けてドルが急落。19日早朝にかけてユーロ/ドルは1.31ドル付近から2カ月半ぶり高値となる1.3536ドルまで400ポイント超、ドル/円も98円前半から1週間ぶり安値となる95.65円まで3円近い大幅な下げとなった。

 この日の東京市場では、短期筋の利益確定や連休を控えた国内勢のドル手当てで、ドル/円は96円半ばまで反発、ユーロは1.34ドル前半へ反落したものの、市場では当面ドル安が続くとの見方が大勢だ。「金利面からも流動性の拡大という面からも、リスク許容度の高まりという面からも、FRBのバランスシート拡大という面からも、すべてドル売り」(ソシエテ・ジェネラル銀行外国為替本部長の斎藤裕司氏)という。

 ドル/円は「90─95円にレンジを切り下げる可能性も出てきた」(ロイヤルバンク・オブ・スコットランドのヘッドオブFXストラテジー、山本雅文氏)との声も出ている。

 こうした市場の反応に関連し、JPモルガン・チェース銀行・チーフFXストラテジスト、佐々木融氏は「多額の経常赤字を抱え、急増する財政赤字の半分以上が海外投資家によってファイナンスされている米国が、積極的な量的緩和策を導入することは、明らかにドルにネガティブだ」と指摘。さらにFRBや米財務省が「インフレが当面、長期的に経済成長と物価安定を最も促進させる水準を下回って推移する若干のリスクがある」(18日公表のFOMC声明文)と見る中で「言葉にはしなくても、デフレ懸念の解消や経済の早期回復、不良債権問題の早期解決には、ドルが下落するほうがいいと考えている可能性が高い。3月末に向けてドルは下落が続くだろう。月内にドルは実効レートベースで、あと2―3%程度の下落は十分想定できる。ドル/円は94円割れ付近が下値めどだ」との見解を示した。 

 株式市場では日経平均が小幅反落。前日の米国株は上昇したものの、米連邦準備理事会(FRB)による長期国債買い入れ表明の影響でドル安/円高が進んだことを嫌気、自動車、ハイテクなどの輸出株が売られたことで指数の上値が抑えられた。「8000円どころはテクニカル的な抵抗線も多く、利益確定売りが先行しやすい。国内法人等の期末の最終的な処分売りも出ている」(準大手証券トレーダー)という。

 FRBは18日、向こう6カ月で最大3000億ドルの長期国債を買い取るほか、モーゲージ関連債券の買い取りを拡大する方針を表明した。「これにより年度末までドル安バイアスがかかりやすい。リスク回避のドル買いの流れは一服したとみている。東京株式市場は日銀による銀行の劣後ローン引き受けを背景に銀行株などが堅調だが、ドル安/円高で輸出株の上値が抑えられる展開が続くだろう」(みずほ総研シニアエコノミストの武内浩二氏)と警戒する声が出ている。

 2月の中国購買担当者指数(PMI)が3カ月連続で回復するなど中国経済が回復の兆しをみせていることなどを背景に、「アジア系の資金が連日100―150億円規模で東京株式市場にも流入している」(大手証券エクイティ部)という。「ただ欧米系投資家は換金売りスタンスを継続している。海外勢の売り圧力は緩和しているが、引き続き需給面での圧迫要因だ」(外資系証券)との指摘もある。

 (ロイター日本語ニュース 田巻 一彦;編集 宮崎亜巳)

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