March 26, 2009 / 10:51 AM / 10 years ago

企業年金が株式配分引き下げ、パッシブにシフトも

 大林 優香記者

 3月26日、企業年金基金の一部が運用ポートフォリオの株式配分を引き下げている。写真は都内の株価ボード。昨年1月撮影(2009年 ロイター/Toru Hanai)

 [東京 26日 ロイター] 企業年金基金の一部が運用ポートフォリオの株式配分を引き下げている。世界金融危機に伴う急激な株安や円高で、2008年度の運用利回りが過去最低のマイナス水準に落ち込むため、変動幅が大きい株式の配分を落として運用リスクを抑制するのが狙い。

 同時に、運用不振のアクティブ運用を一部パッシブ運用にシフトさせたり、運用成績が期待はずれだったヘッジファンドの解約を進める動きがあるほか、外貨資産の運用に為替ヘッジを導入する向きもあり「当面はリスク圧縮に軸足を置いた保守的な運用スタイルになる」(外資系投資顧問)とみられる。

 ただ、これらの動きは「相場の後追いに過ぎない」(外資系年金コンサルタント)との指摘もある。「年表のように長い周期で考えれば多分、今は『買い場』で、相場の後追いでリスクを落としてしまうと買い場を逃す可能性もある」(同コンサルタント)だけに、長期的なリスクの低減と運用利回りの確保という2つの課題を巡り、新年度以降も各基金で運用戦略を巡る議論が続きそうだ。

 <株安と円高のダブルパンチ> 

 格付投資情報センター(R&I)によると、08年4月─09年2月の11カ月間で企業年金の運用利回りはマイナス18.60%(推定値)で、08年度としては2年連続のマイナス運用となり、これまでの過去最低だった02年度のマイナス12.15%をさらに下回る公算が大きい。

 資産別にみて痛手が最も大きかったのは、株安と円高のダブルパンチを受けた外国株式で、11カ月間の運用成績はマイナス48.16%。国内株式がマイナス36.95%で続き、外国債券も円高の影響でマイナス11.84%となった。国内債券がプラス1.67%で唯一プラス圏に入った。

 5年ぶりにマイナス運用に転じた07年度のマイナス9.85%と比べても今年度はダメージが倍増する見込みで、「09年度以降は、運用リスクを低減するため、基本ポートフォリオの株式比率を政策的に見直す基金が出てくる」(R&I投資評価本部年金事業部チーフアナリストの北浦和志氏)とみられる。

 来年度を待たずに株式比率を引き下げる動きも出ている。米金融サービス大手ステート・ストリート(STT.N)傘下の資産運用会社ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの年金担当者によれば、「国内でつきあいのある年金顧客のうち、3分の1を超える基金が足元で株式配分を落としたり、新年度の配分引き下げに向けて株のポジションを落としている」。引き下げた分は国内債券やキャッシュの比率を高めているという。

 年金基金は3─5年ごとにALM(資産と負債の総合管理)分析などを経て、中長期的な政策配分である基本ポートフォリオを策定しており、原則として、相場の変動や予測に基づく資産構成の変更はしない。ただ「1年ごとに短期ポートフォリオを変える総合型基金で来年度の株式比率を引き下げたケースがある」(大手投資顧問)ほか、昨秋以降の運用環境の激変で「対症療法的に株のリバランスを凍結した基金もあり、結果として株式比率が低下している」(ラッセル・インベストメントのエグゼクティブコンサルタント、喜多幸之助氏)という。

 一般的に基金は四半期ごとにリバランスを行うルールになっており、株価急落で減少した投資配分を元に戻すには株式を買い増す必要があるが、今回はリバランスを見送ったり、リバランスする場合でも許容幅の下限にとどめたりする動きが出ている。年金顧客にリバランスの見送りを勧めているワトソンワイアットのコンサルタント、窪誠一郎氏は「資産の目減りで多くの基金は債務が資産を上回り、リスク許容度が落ちており、ここで株を買い増すのはさらにリスクを取ることになる」と指摘。基金存続の観点からも、市場環境が好転してリスク許容度が回復するまでは、リバランスを見送ることが適切とみている。 

 <オルタナティブ投資も見直し> 

 年金基金が株式投資を見直すなかで、アクティブ運用の一部をパッシブ運用に切り替える動きもある。「外株のアクティブ運用で期待していた超過収益を得られなかったため、手数料が安いパッシブ運用でベータを取れればいいと考え、乗り換える基金が出てきた」(ステート・ストリート担当者)という。アクティブ運用に特化する国内投資顧問会社も「厳しい環境が続いており、受託残高は減少している」と認める。

 窪氏によると、08年は、ワトソンワイアットが採用している国内株アクティブマネージャーの75%がベンチマークをアンダーパフォームした。通常はこの数値は5割程度で、同氏は「新年度に入り、運用戦略を見直す基金のなかではパッシブ運用へのシフトが増える」と予想する。

 オルタナティブ投資の見直しも広がりつつある。プライベートエクイティーや不動産にも投資する欧米の年金と異なり、国内基金のオルタナティブはヘッジファンドが主流で、なかでも「ファンド・オブ・ファンズ(FOF)を通じたヘッジファンド投資が7─8割程度を占める」(モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント投信の古川千春・投資顧問部長)。

 しかし、昨秋以降の運用悪化や解約凍結に加え、米ナスダック・ストック・マーケット(現ナスダックOMXグループ(NDAQ.O))のバーナード・マドフ元会長による巨額詐欺事件で、ヘッジファンド業界への信頼が揺らぎ「解約が増えている」(大手信託銀行)という。ユーリカヘッジのFOF指数をみると、08年はマイナス19.7%と落ち込み「債券の代替としてヘッジファンドを導入した基金は戦略を見直さざるを得ない」(窪氏)状況にあるほか、基金は「今、透明性の高い商品を求めている」(古川氏)ため、今後は採用マネジャーの変更も予想される。

 このほか、急速な円高で海外資産の運用成績が悪化したため、為替リスクの管理への関心も高まっている。欧米との金利差が縮小し、ヘッジコストが低下していることもあり「外貨建て資産の投資については、為替ヘッジの導入を検討する向きが増えている」(外資系運用会社)という。

(ロイター日本語ニュース 編集 宮崎亜巳)

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