[東京 9日 ロイター] 9日の東京市場は、政府・与党の追加経済対策の内容が固まったことを受け、株高/債券安の展開となった。2月機械受注が予想より強かったことも株高要因になったという。
ただ、財政支出15兆円の対策の効果をめぐっては、持続的成長にはつながらないとの厳しい見方がある一方、円債市場では長期金利の上昇懸念もくすぶり、国債大量発行はマーケットに大きな課題を残したかたちとなった。
<強めの機械受注、市場に景気回復への期待感>
株式市場では日経平均が反発。前日の米株高や、寄り付き前に発表された2月機械受注
が事前のマイナス予想から大きく上振れたことで、景気回復への期待感が高まった。「5カ月ぶりの前月比プラスはポジティブ・サプライズであり、株価にも好影響を与えた。前日発表された3月景気ウォッチャー調査で堅調な消費マインドが示され、きょうの機械受注で生産の減少緩和への見通しが明るくなった」(かざか証券・市場調査部長の田部井美彦氏)との声が出ている。
各国の財政出動が具体化し、中央銀行の流動性供給も進んでいることで、グローバル投資家のリスク許容度が高まっているとの見方もある。「まだ規模は大きくないが、欧州系やアジア系の資金が新年度入り以降、継続的に入っている。日本株は下げれば公的機関による上場投資信託(ETF)買い取りなどのセーフティネットが発動するとの安心感もあるようだ」(大手証券エクイティ部)という。
自民党は9日、追加の経済対策となる「経済危機対策」を取りまとめた。10日に政府が正式決定する。対策の国費は15.4兆円程度、事業費は56兆8000億円程度となる。第一生命経済研究所・主席エコノミストの嶌峰義清氏は「規模、内容ともに一定の評価ができる。雇用が回復する見通しが立たない中で、社会保障や中小企業支援に重点を置いたことは正解だ。環境関連分野でポイント制など具体的な内容を示したことも、企業、個人消費を誘発する可能性が高い」と評価している。
他方、みずほ総研・シニアエコノミストの武内浩二氏は、エコカー購入への補助金やデジタルTVの普及などを手掛かりとして、関連セクターを中心に目先の取引で株価は堅調に推移するとしながらも「追加経済対策は短期的に売りを抑える材料にしかならないのではないか。株価を押し上げるには不十分とみている」と指摘。「今後、外需の落ち込みが続けば、さらに経済対策が必要になる。今月は米金融機関の決算次第だが、8000円程度に下落するリスクはある」との見通しを示している。
また、国内証券の株式トレーダーの1人は「短期筋の買いがみられ、日経平均は堅調な値動きが続いている。だが、政府・与党の経済対策よりは、米株価への関心の方が強く、経済対策を手掛かりにした買いがどこまで続くかわからない」と先行きの不透明感に言及した。
<国債大量発行で需給懸念広がる>
円債市場絵は、追加経済対策の財政支出が15兆円に上る見通しとなり、国債増発の懸念が広がった。ヘッジ目的の先物売りなどが出た影響で、国債先物は中心限月ベースで一時2008年10月22日以来、約5カ月半ぶりの安値圏に突入。先物主導の相場下落により、長期金利の代表的な指標となる10年最長期国債利回りは08年11月19日以来の高水準に達した。
複数の市場参加者によると、先物売りは、今後の金利上昇を見込んだヘッジ売りが主体。
ただ、地域金融機関や一部大口投資家からの資金が、現物中長期ゾーンに流入したため国債先物は、取引一巡後は下げ幅を縮小した。一部海外勢などからの売りは8日夕に観測されたいたが、9日午前は早くも買い戻しに回ったのではないかとの指摘も出ている。
参加者からは「追加歳出総額、税収減額の有無というポイントが8日時点でおおむね明らかになり、国債増発規模をめぐるアナウンスメント段階での市場の不透明感は、とりあえず7合目は超えたのではないか。財投債発行についてのある程度確定的な情報が出てくれば、市場の織り込みとしてはピークアウトということになるだろう」(外資系証券)との声も聞かれた。
その一方で、ある邦銀関係者は「何かのきっかけで、長期金利が急上昇しやすい地合いになっている」と指摘する。これまで国債の大口購入者だった公的年金や郵貯・簡保などが「新年度に入って大口の買い手の立場でなくなる公算が大きく、そこに大量の新規発行が加わると、相当に需給が圧迫される」と、その邦銀関係者は需給面から金利が上がりやすくなると予測する。
<市場が注目する日銀のスタンス>
バークレイズキャピタル証券・チーフストラテジストの森田長太郎氏は「これまでに政府・与党幹部からは8兆円弱の99年度対策を上回る、GDP比2%超目標と表現され、国費ベースで15兆円の補正規模にはサプライズがある」と話す。
もっとも、どの年限でどの程度の増発がなされるかは不透明なままだ。大和証券SMBC チーフストラテジスト・末澤豪謙氏は「財政支出に関しては10―15兆円とみられていた。そのうち、財政投融資特別会計や予備費で4―5兆円をまかなうことが予想され、国債発行での手当て分は5―11兆円になるとの見方が多かったようだ。従来、財投特別会計の積立金はT―Billの国庫引き受けに回っていたこともあり、11兆円の大半は利付き国債での消化が必要になりそう。2年から超長期までの各年限の利付国債を対象にまんべんなく配分するしかないのではないか」と話す。
バークレイズキャピタル証券の森田氏は「今回の枠組みでは、新規財源債の発行で10―11兆円になるとみられ、想定のレンジの上限ないしそれを上回る規模になり得る。財投債の発行も含めた国債発行総額に関しては13―18兆円になると予想される。13―18兆円という発行規模のレンジは、6月以降に想定される現実の需給インパクトを考えれば、やはり相当なものだと言わざるを得ない」と分析。その上で「日銀の国債買い入れ増額を伴っていなければ、もう少し金利が上がるかもしれないとの懸念も広がりかねず、日銀券ルールの取り扱いだけではなく、政府・日銀とのアコードを含めた大枠も必要ではないか」と指摘する。
<外為市場の反応は限定的>
正午現在のドル/円は、前日ニューヨーク市場の午後5時時点からほぼ変わらずの99円後半で推移している。イースター休暇を控えたポジション調整からクロス円やドルに手仕舞い売りがでて上値の重い推移になった。自民党の追加景気対策への為替の反応は限定的で、株価は堅調となったがリスク許容度の高まりによる円売りは限られた。
市場では「海外勢を中心として日本の景気がもう一段悪化するとの予想が主流であり、対策はこの予想を覆すものではない」(三井住友銀行市場営業統括部、チーフエコノミストの山下えつ子氏)との声が上がっている。
また「景気対策による日本の景気テコ入れを期待して円を買うのか、株価押し上げによるリスク許容度の高まりをにらんで円を売るのか両方の反応がありうる。このため、為替の反応は明確でなくなっている」(ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)のヘッドオブFXストラテジー、山本雅文氏)との見方も出ている。
河村官房長官によると、建設国債と赤字国債をあわせた国債の増発は10─11兆円程度になる見通しで「需給面から金利が上昇して円買いになる可能性はあるが、他国とのバランスの上で考えるべきだ。米国の金利が強含みつつある中では、日本の金利上昇だけを為替の材料にはしにくい」(RBS、山本氏)との見方が出ている。
(ロイター日本語ニュース 田巻 一彦;編集 宮崎 大)