June 8, 2009 / 10:12 AM / in 10 years

焦点:ドル急反発でも楽観論には距離、金利急騰の影響に懸念

 [東京 8日 ロイター] 米短期金利市場が年内利上げの可能性を完全に織り込むきっかけを作った5月米雇用統計。悲観シナリオから抜け出せずにいた米金融市場に変化が現れ始めた。

 6月8日、ドル急反発でも楽観論には否定的な見解が大勢だ。写真は米ドル紙幣。2006年1月撮影(2009年 ロイター/Lee Jae-Won)

 週明けの東京市場では、ドル/円が1カ月ぶり高値を更新する一方で円金利が上昇、日経平均株価も年初来高値を更新するなど、その波紋が及んでいる。米景気はこのまま回復に向かい、日本もその恩恵を受けることができると市場は読んだのか。動きを探った。

 為替市場ではドル/円が1カ月ぶり高値を更新するなどドルが広範に切り返している。しかし市場関係者の間では、米国の景気回復をにらんだ楽観論には否定的な見解が大勢で、逆に急騰を続ける米金利が及ぼす悪影響を懸念する声もくすぶる。ドルの上昇は前週まで大きく売られた反動に過ぎないとする見方も多い。

 <予想外の値動きに驚きの声>

 5日海外市場の取引ではドルが急伸。ドル/円は東京市場の安値から海外市場にかけて2円超上昇し、一時98.90円と5月8日以来1カ月ぶり高値、ユーロ/ドルは300ポイントを超える下落で1週間ぶり安値をつけた。主要通貨に対するドルの値動きを示すドル指数は、1日の値動きとしては5カ月ぶりの上げ幅を記録する急騰で、1週間ぶり高水準を更新した。

 ドルが急上昇したのは、5月米雇用統計の発表後。非農業部門雇用者数の減少幅が事前予想を大幅に下回り、発表直後の取引でドルは瞬間的に下落した。これまで為替市場では、株高などにつながる好材料は、投資家のリスク選好姿勢が強まって米国から資金が流出するとの見方から、ドル売りが強まることが多かったためだ。

 しかし、その直後から時間外取引で米金利と米株先物が同時に急伸。外為市場ではドルが一転して買い進まれ、「好結果なら(ドル)売りなはずなのに」(外銀)と驚きの声が上がった。市場では「ユーロ/ドルでアジアの中央銀行がかなり大口のドル買いに動いた」、「大口買いの犯人はファンドだったらしい」、「雇用統計のデータ集計に一部誤りがあったとの思惑が出た」――など、これまでと異なる相場の反応に様々な憶測が多数飛び交った。

 <FRB戦略の読み違いも>

 米2年債利回りが1日の値動きとしては9カ月ぶりの大幅な上げ幅を記録するなど、米金利が昨年11月以来の節目を上抜けて急激に上昇したことが、ドル高の手掛かりになったとする声は少なくない。一部では、米雇用統計が示した「米雇用減少の底打ち感」(別の外銀)や、米アトランタ地区連銀のロックハート総裁が(FRBが)金融引き締めに転じるまでに時間をかけ過ぎるべきではないとした報道を受けて、米金利上昇の背景に「FRBの利上げ期待が台頭した」(都銀)とする声もある。

 しかし、そうした「良い金利上昇」とドル高にかける参加者はまだ多くない。「米財政赤字への懸念は根深く、簡単に出口政策に対する懸念が収束することはない」(さらに別の外銀)と、慎重姿勢を見せる向きが多いのが現状だ。

 ある在京外銀の為替担当幹部は、FRBの戦略を見誤った投機筋の動きが背景にあると見る。米債の大量発行が始まり「FRBが買いオペレーションなどで止めてきた米金利の上昇を、いよいよ押さえきれなくなってきた。FRBを信じて需給面から一段の金利上昇はないと読んだ向きの(損失確定に伴う米債の)売り戻しが入った」。

 金利が一段と上昇すれば、住宅金利の上昇などを通じて、底打ち感の出てきたとされる米景気に打撃になって、リスク回避のドル買いが強まるとのシナリオとも整合的だ。実際、リスク回避姿勢が強まる際に売りが出やすいとされる米原油先物は、8日の取引で7カ月ぶり高値から急反落している。

 ポジション動向から読み解く向きもある。前週の取引でドルは対ユーロで5カ月ぶり、英ポンド、カナダドルで7カ月ぶり、豪ドル、NZドルで8カ月ぶり安値を更新するなど幅広く下落した。しかし、その手掛かりは、底堅い株価動向を受けて投資家のリスク選好姿勢が強まって米国から資金流出が加速するとの見方の一方、米国の財政・ソブリンリスクをにらんだものだとする声も上がるなど、一様ではなかった。「結果としてドルが下がるから様々な口実をつけているだけ」(別の都銀)との声も根強く、値動きが鈍ってきっかけさえあれば、ドル売りポジションは解消されやすかったという。

 突然、従来と異なる反応を見せたドルの値動きに対する明確な答えはまだない。しかし、8日の東京市場では、上値で利益確定の売りに押されながらも、金利上昇時に入りやすいとされる、金融機関が保有するデリバティブなどの金利・為替商品から生じるリスクを組み合わせて管理する「ハイブリッド」勢に加え、テクニカル的な買い信号が灯ったとして海外ファンド勢も買い参戦してきた。ドルの行方をめぐる攻防は激しさを増してきた。

 (ロイター日本語ニュース 基太村 真司)

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