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コラム

コラム:ようこそ「ドナルド・トランプ」の世界へ

[9日 ロイター] - もう私たちにもわかっている。1月20日の大統領就任式後まもなく、アメリカの新たな最高司令官が、初めて大統領執務室の椅子に座ることになる。ドナルド・トランプ氏はふんぞり返り、多くの歴史が刻まれた室内を見渡し、そして何らかの形で、自分の痕跡を世界に残すだろう。

 11月9日、アイゼンハワー以来の選挙による公職を経験したことのない米大統領となるドナルド・トランプ氏(写真)は、どのように采配を振るうのだろうか。写真はニューヨークで勝利宣言を行うトランプ氏(2016年 ロイター/Carlo Allegri)

第45代合衆国大統領はこれまでとは少し違う、と言うだけでは、ひどく遠慮がちな表現になってしまう。

共和党のトランプ氏は、アイゼンハワー以来となる、選挙による公職を経験したことのない大統領である。しかも、米軍におけるアイゼンハワーの経歴は、トランプ氏の不動産開発やテレビのリアリティ番組での経験とは大きく異なっている。

トランプ氏は、近年の米国史のなかでも最も分断された国を引き継ぐことになる。しかも、彼がトップの座に就くのは、グローバル規模で地政学的緊張が高まっている時期なのだ。

民主党のヒラリー・クリントン氏は、大統領の座をめざすに当たって、選挙運動の大半をトランプ氏のこうした問題点を指摘することに費やした。これほどリスクが大きい時期に、米国が必要としているのは、連邦政府と国際外交がどのように動いているのか、その機微を熟知した専門家である、と彼女は主張した。しかし米国の有権者はそうは考えず、舵取り役はトランプ氏に託された。

では、彼はどのように采配を振るうのだろうか。その手掛りは、今のところ、控えめに言っても混乱している。明らかに彼は自分の能力に相当の自信を持っている人間であり、「自分こそが大統領である」という実感を味わいたがるのは確かだ。

だが、そのように行動するためには、かなり唐突なスタイル変更が必要になるだろう。他国の首脳たちと協議する間でも、これまで通り、思うことを何でもツイートし続けるのだろうか。もちろんそれも可能だが、トランプ氏はもっと伝統的なアプローチを選ぶ可能性がある。

世界各国の首脳の多くが、今後数週間のうちにトランプ氏との接触を求め始めるだろう。ほとんどの首脳は選挙期間中はできるだけ距離を置くようにしていた。一部の首脳は今後もトランプ氏のことを政治的に有害であると考えるだろう。

しかしこういう結果になった以上、トランプ氏と関わっていく以外の選択肢はない。世界各国の権力中枢では、当局者たちが懸命に今後の米国政治のゆくえを解明しようと試みるだろう。

ロシアのプーチン大統領でさえ、状況がどこに向かうのかを、はっきりと把握していないかもしれない。米当局者が信用に値するならば、プーチン政権下の情報組織がトランプ氏を支援しようと、より正確にはクリントン氏の当選を阻止しようと、積極的に選挙戦に介入していた可能性がある。しかしだからと言って、いまや政治家に転じた予測困難なことで知られる大物実業家との関係が最終的にうまく行くかどうか、プーチン氏にわかっているとは限らない。

トランプ氏とプーチン氏の「親密な関係」(あるいは少なくとも、利害と自己愛の重なり)からすれば、米ロ関係の本当の「リセット」があるかもしれない。とはいえトランプ氏は、友人やパートナーと仲違いし、深刻な遺恨を抱く例が多いことでも有名だ。事態がどのような方向に進んだとしても不思議はない。

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米国の同盟国はすでにはっきりと神経を尖らせている。欧州・アジアでは、トランプ氏が域内の主要国について「自国防衛を米国に依存しすぎている」と批判しているだけになおさらだ。

トランプ政権がロシア・中国政府と新たな協定を締結する可能性も残されており、それは両国の地域的な野心をこれまでより許容するものになりかねない。だが、タフな指導者として見られたいという欲求もあろう。彼は予測不可能な人間であることを誇りにしている。ただしこれは、競合する超大国間の核戦争のリスクが浮上している時期にあっては、必ずしもポジティブに評価すべき性質とは言えない。

伝統的に、貿易に対して開放的であることが、主要国どうしが争いを回避する重要な安全弁の1つとされてきた。だがトランプ氏としては、中国からの輸入を抑制し、彼の言う「通貨操作」をやめさせるという公約を守る以外には、ほとんど選択肢がないかもしれない。これでは対中関係の改善は厳しいだろう。

米国は中東における多くの紛争に深く関与している。トランプ氏がこれにどう対応するかはまったく不透明である。

過激派組織「イスラム国」に対する軍事行動強化には好意的だが、国家構築の方法については関心を示さない。その一方で、拷問やテロリスト家族の殺害に関する発言は、明らかに軍関係者の動揺を誘った。こうした問題は就任初日から処理しなければならず、どう対応するか迅速に判断する必要があるだろう。

優先課題のトップに来るのはシリア問題だろう。トランプ氏は恐らく、少なくとも当面は、ロシア、そしてシリアのアサド大統領の行動を黙認する可能性が高い。だが長期的には、多くの歴代大統領と同様に、結局のところ中東問題に引きずり込まれる可能性もある。

クリントン氏が大統領選挙に勝利していたとすれば、彼女にとっての難題の1つは、選挙戦のあいだ新政権におけるポストを求めて群がっていた多数の大統領顧問志望者を絞り込んでいくことだっただろう。

だがトランプ氏は、正反対の難題を抱えている。もっとも、いまや大統領の座を獲得した以上、これまでよりも積極的に彼の呼びかけに応じてくれる共和党関係者は見つかるかもしれないが。

とはいえ、こうした党関係者とうまくやっていくためには、やはりスタイルの変更が必要になってくるだろう。トランプ氏は、ごく少数のアドバイザーや信奉者とともにやっていくスタイルで知られている。ホワイトハウスにおいても、そのスタイルで執務することも不可能ではないが、必然的に、多くの問題があっさり無視されることを意味する。

さらに、残念ながら米国民の約半数と、世界各国のほとんどの人々が、トランプ氏に対してきわめてネガティブな印象を抱いているという無視できない問題がある。自己愛の強いガキ大将と思ってもらえるならいい方で、最悪の場合、きわめて危険な人物と見られている。

勝利演説では「すべての米国民にとっての」大統領として行動すると約束したことが、こうした溝を埋める手始めだったかもしれないが、より多くの努力が必要だろう。

トランプ氏に投票した人々は、彼が各コミュニティの直面する複雑きわまりない多くの問題を解決できるものと期待している。

特に白人労働者階級の有権者は、米国のこれまでの変化、特に民族構成の変化がとにかく気に入らない。これまで以上に社会の亀裂を深めることなく、彼らの懸念を認めていくことは困難だろう。何しろトランプ氏の選挙運動が、そうした亀裂を深めてしまったのだから。

新大統領は、就任初日から以上のような問題に取り組んでいかなければならない。彼がうまくやっていくことは、すべての人の利益である。彼の勝利が何かを示唆しているとすれば、他でもない、この不安定な現代において、本当に考えられない事態など1つもないということなのだ。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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*写真キャプションを修正して再送します。

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