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コラム

コラム:関心はポスト安倍の経済政策へ、避けられぬ成長戦略の練り直し

[東京 28日 ロイター] - 安倍晋三首相の辞任表明で、誰が後任になるかが世の中の大きな関心事になる。とりわけマーケットにとっては、新首相のもとでアベノミクスが変化するのかしないのか、するとすれば経済政策はどう変化するかが最大の注目だろう。

 8月28日、安倍晋三首相の辞任表明で、誰が後任になるかが世の中の大きな関心事になる。写真は安倍首脳の辞意表明会見を写し出す街頭の大型スクリーン。8月28日、東京で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

だが、新型コロナウイルスの感染拡大が日本国内でも大きな影響を与え、経済が感染前の規模に戻る時期は見通せない中で、大きな方針転換は見込みにくい。安倍首相と政策スタンスが最も異なる政治家が首相になっても、現在の大規模な財政出動と超金融緩和の政策は当面、継続せざるを得ないだろう。

一方で、成長戦略は見直しが急務だ。第2次安倍政権の7年8カ月を通じ、ITを中心にした「生きのよい」成長産業や企業は生み出せていない。このコロナ禍で打撃を受けて市場から敗退するかもしれない企業に代わり、雇用を支える新しい受け皿があるかといれば、かなり心配な状況だ。

自民党総裁選で立候補する候補者が、この点でどのような構想を打ち出して論戦するのかは、日本の今後にとって極めて重要になる。

<当面できない財政・金融政策の修正>

現在の財政・金融政策は、新型コロナの打撃が日本経済に加わったことで、変更の余地がほとんどなくなってしまったと言っていいだろう。経済の受けた打撃が大きく、マクロ的な支援策を今の段階で縮小や修正することが不可能に近いからだ。

国内総生産(GDP)が2019年10月─12月の水準を回復するのは、最も早くて2022年中というのが、政府・日銀の本音だろう。それも、コロナがこのまま収束していくという前提付きだ。さらに大きな感染症の被害が出た場合、「全治するめど」は見えなくなってしまうだろう。

例えば、政府は従業員を休ませた企業に支払っている雇用調整助成金の上乗せ特例を当初の9月末から12月末まで延長することを検討している。雇用調整助成金の支給総額は9月末までに1兆円を超える可能性が高く、経済の下支えには今後、さらに巨額の財政支出が必要になる。

その際、日銀がイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)政策で長期金利をゼロ%程度に誘導するため、無制限に国債を購入することが決まっており、GDPが回復するまでは、現在の財政拡張と超金融緩和のポリシーミックスが維持さるだろう。誰が新首相になっても、その対応を止めてしまえば、日本経済の「底が抜ける」という事態になりかねないからだ。

首相辞任の報を受けて28日に一時600円安となった日経平均.N225も、その点を冷静に織り込んでくれば、2万円割れのような急落する場面は来ないと予想する。ドル/円JPY=EBSは日本の政局ではなく、米株や米長期金利US10YT=RRの動向により左右され、米連邦準備理事会(FRB)の緩和長期化のメッセージや、その結果としての米株高により反応し、円高圧力は限定的だろうとみている。

つまり当面の日本のマクロ政策は、コロナ感染の再拡大があるかどうかで大きく変化しそうであり、財政拡張の強化や金融緩和の強化はあっても、その逆である増税などの財政健全化や超緩和政策の修正は当面、ほとんど可能性がないとみていいだろう。

<二階幹事長が握る次期総裁の行方>

一方、次期首相となる自民党の新たな総裁が誰になるのかは、別の問題を提起することになる。安倍首相は28日の会見で、総裁選の今後の手続きは二階俊博・同党幹事長ら執行部の判断に委ねると明言した。つまり、これからは二階幹事長が党員選挙を含めたフルスペックの総裁選をやると判断するのか、それとも両院議員と都道府県の代表者による投票という簡易な「両院議員総会」方式を採用するかで、新総裁の顔ががらりと変わる。

党員投票が実施されれば、石破茂・元幹事長の優勢が鮮明になる。前回、安倍首相を相手に戦った際も、党員票では約45%を獲得。今回も実施されれば、かなり多くの票を得るとみらているからだ。

一方、安倍首相からの「禅譲」を期待してきた岸田文雄政調会長は、首相の出身派閥である細田派や首相を支持してきた麻生太郎副総理の麻生派などの支持を期待でき、議員票で石破氏をリードできるとの「計算」が働いているとみられる。

総裁選の方式を決める二階幹事長の決断は、その時点で新総裁を決める決断になり得ると指摘できる。

<石破・岸田両氏は成長戦略で競うべき>

さて、新政権の経済政策に話を戻すと、経済が回復基調に入り、GDPがコロナ前を回復してきた際に、石破氏と岸田氏との間にカラーの違いが出てくると思われる。

石破氏は、東京一極集中の是正を政策の目玉に据える可能性があり、大都市圏の経済力で日本全体を浮揚させようとしたアベノミクスとは違った特色を打ち出すとみられている。一方、岸田氏はアベノミクスの継承と新たな成長戦略をうたい上げるのではないか。

いずれにしても、これから先の日本経済を底上げするのは、グーグルに代表される「GAFA」のような成長企業を生み出していく戦略が必要である。

ところが、IT化を進める霞が関の官庁の現状が、何とも痛ましい。テレワークには欠かせない機密保持のためのVPN(仮想専用線)接続が各省庁で限定され、「先着数十人」しかアクセスできない省庁が今でも複数存在し、時間帯を割り当ててその枠をシェアしている官庁もあるという。これでは、IT化の推進を訴えても、民間企業の信頼を得ることは難しいだろう。

アベノミクスによって民間企業の利益剰余金が急膨張し、現在のコロナ危機に際し、日本の大企業の財務体質が欧米と比べ、相対的にしっかりしている。これは安倍政権の功績の1つだ。

しかし、日本経済全体の潜在成長率が低い水準で推移し、生産性が一向に伸びず、ドル建ての一人当たりGDPが中進国に追い抜かれかけていることも事実である。総裁選に立候補する政治家は、ぜひ、骨太の未来図を提示して論戦を戦わせてほしい。

それが、巨額債務を抱えながら再出発する日本にとって、非常に重要なプロセスになると指摘したい。

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編集:久保信博

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