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アングル:大坂なおみは新世代リーダー、テニス界の重鎮ら称賛

[ニューヨーク 29日 ロイター] - 人種差別への抗議の戦いをスポーツの表舞台に持ち込んだテニスの大坂なおみ選手に、もう一人の偉大な女子テニス界のパイオニアであるビリー・ジーン・キングさんが称賛のエールを送った。

8月29日、人種差別への抗議の戦いをスポーツの表舞台に持ち込んだテニスの大坂なおみ選手(写真)に、もう一人の偉大な女子テニス界のパイオニアであるビリー・ジーン・キングさんが称賛のエールを送った。写真は28日、ウエスタン・アンド・サザン・オープンが行われたニューヨークのフラッシング・メドウズのUSTAビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニス・センターで撮影(2020年 ロイター/Robert Deutsch-USA TODAY Sports)

キングさんは、口数の少ない後輩の「思いやりと強さとリーダーシップ」をたたえた。これはしごくもっともなことに見える。

大坂選手は米国の警察の暴力行為や人種差別に抗議するため、ウエスタン・アンド・サザン・オープンの女子シングルス準決勝の棄権を表明した。四大大会を2連勝した物静かな若き選手の行動に深く感銘を受けたのは、決してキングさんだけではない。

男女の格差是正のため生涯をかけて闘いを続けてきた76歳のキングさんは、自らが抱き続けた同じ精神を大坂選手に認める。ロイターとのインタビューで、キングさんは激しく決然とした意思を示した22歳の女子選手が今や、気高いスポーツの伝統に従いつつあることにいかに感動したかを語った。

ボクシングのムハマド・アリ選手や、(1968年メキシコ五輪の陸上男子200メートル決勝の表彰台で、こぶしを突き上げる人種差別抗議のポーズを始めた)ジョン・カーロス、トミー・スミス両選手、それに女子テニスの「オリジナル・ナイン」(1970年に全米テニス協会の賞金額の多大な男女格差に抗議し、独自のツアーを始めた選手9人)。「皆、立ち上がって自分たちの競技と自分たちの声と行動を通じて、人類を変えようとした。それから50年以上たった」とキングさんは言う。

「バトンは渡され、ナオミは両手を広げてそれを受け取った。それは思いやりと強さとリーダーシップを示している」

大坂選手はまさにバトンを握りしめ、ツイッターには「相次ぐ警官による黒人の虐殺を見ることは正直、吐き気がする」と投稿した。

同選手の準決勝棄権の表明は、現代のテニス界では前代未聞だった。大会主催側は27日の試合の延期に追い込まれた。ウィスコンシン州で29歳の黒人男性が3人の子供の面前で警察から銃撃された数日後のことだった。

「ナオミの行動は変革への触媒になった」とキングさんは語る。「彼女は人々を第一に考えている。これは本物。彼女は先頭に立っている。ナオミが、そして彼女と同世代の選手たちが今、やろうとしていることは素晴らしいと思う」

大坂選手は結局、棄権を撤回し、28日の準決勝で勝利した。ただ、29日の決勝出場は左太もも裏のけがで諦めざるを得なかった。しかし、彼女の行動はテニス界を通じ、さらにはこれを超えて幅広い大きな支持を引き起こした。

これは大坂選手が持つ計り知れない影響力を物語る。日本で生まれ、日本人選手として競技するが、人格形成期のほとんどを米国で過ごした、黒人女性としての影響力だ。

1978年全米オープンの女子シングルスで準優勝したパム・シュライバーさんはロイターに、「ナオミが今回、準決勝に出なかったらどんな騒ぎが起きていたか分からない」と話した。「彼女はテニスの試合でも声明文という手段でも、本当に優れた現代のリーダーシップへの道を先導している」

大坂選手自体は今回の行動について報道陣に、いつひらめいたのか、行動を起こさせる何か特別な瞬間があったのかはよく分からないとし、少しずつ、そういう気持ちが積み重なってきた気がすると語っている。

男子シングルスで自己最高ランキング4位を記録したジェームズ・ブレーク元選手は現在、マイアミオープンのトーナメントディレクターを務める。同氏はロイターに、「彼女が将来リーダーになると確信している。今すでにリーダーだと思う」と語った。「僕に言わせれば、彼女はATP(プロテニス選手協会)とWTA(女子テニス協会)とUSTA(全米テニス協会)に行動を起こさせる人物だ」

黒人のブレーク氏は2015年、全米オープンの会場に向かう途中でニューヨーク市警の警官から、挑発行為も事前警告もない状態でタックルされた経験がある。市警は人違いだったと釈明した。「テニス界は今、大坂選手がなぜ棄権しようとしたか理解している。彼女をとても尊敬する」

大坂選手は2年前の全米オープンで、23回の四大大会制覇を成し遂げた黒人のセリーナ・ウィリアムズ選手を下したことで、名を上げた。ウィリアムズ選手自身も、スポーツ界の偉大な先駆者だ。

大坂選手は今や、16歳のココ・ガウフ選手などスポーツ界の新世代の活動家を率いる立場にある。

大坂選手は取材陣に「選手たちは声をもっと上げるようになっている。特にココがそうだ」と語った。「この世代のテニス選手は、胸の内にあることを口に出して起きる結果を、たぶん、それほど恐れない気がする」

かつて15歳の大坂選手を1年コーチしたパトリック・タウマ氏はロイターに対し、昔から深い自己意識を見せる選手だったと振り返る。「とても強い人格で、どんな問題も彼女なら解決できた。身体的な問題にせよ、技術的な問題にせよ、精神的な面の問題にせよだ」。さらに「彼女は強かったよ。だれに対しても恐れなかった」という。

新しい変化を切り開くという使命に、大坂選手のこうした資質はまさにうってつけと言えるだろう。

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