for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

焦点:未来の顧客を獲得せよ、未成年囲い込み狙うデジタルバンク

[ロンドン 19日 ロイター] - ジョン・ヒッブスさんの6歳の娘、ザンティちゃんは、初めての銀行カードを郵便で受け取った。その後一週間、彼女はどうやったら馬を購入できるのかをインターネットで調べていた。

 11月19日、ジョン・ヒッブスさんの6歳の娘、ザンティちゃんは、初めての銀行カードを郵便で受け取った。その後一週間、彼女はどうやったら馬を購入できるのかをインターネットで調べていた。写真はヒッブスさん一家。17日提供(2020年 ロイター/John Hibbs)

ヒッブスさんと妻のケイトさんは、娘のザンティちゃんに英デジタルバンク「スターリング銀行」が始めた子ども向けデビットカードを与えることにしたのだ。近年、複数のフィンテック企業が導入した、子どもとティーンエイジャー向けのサービスのひとつだ。

チャリティー団体を運営するヒッブスさんは、「カードの使い方を学び始めるのは早いほうがいい。すぐに、気軽に馬を買うことはできないと理解するだろう」と語った。

これまでも既存の銀行は子ども向けの預金口座を提供してきたが、フィンテック企業は今までの未成年向けサービスは不十分だと考えている。これらの企業は、デジタルネイティブの子ども向けの、より良い、より洗練されたアプリに機運を見出している。

スターリング銀行の「カイト」カードは、親から子どもの口座への送金だけでなく、使用金額の上限設定や、使用通知が親に届く設定をしたりできる。類似のサービスは英国では「ゴーヘンリー」や「モンゾ」、米国ではフィンテックの「グリーンライト」、「ステップ」、「コッパー」などがあり、どれも未成年の市場を狙っている。JPモルガン・チェースJPM.Nも最近参入し、グリーンライトと提携した子ども向け口座を提供している。

これらの企業は皆、子どもたちにちょっとした経済的自由と教育を与え、同時に保護者側には消費を追跡したり止めたりする手段を提供することを目指すとしている。デジタル決済とeコマースで利益を上げるだけでなく、これから大人になる顧客を囲い込もうというわけだ。

JPモルガンの子ども向けベンチャー「チェース・ファースト・バンキング」のトップを務めるカビタ・カンダー氏は、これは一生の顧客を得ることによる利益性を重視したサービスだと語る。

同社と提携するグリーンライトが抱える親子の顧客は、1年間で50万人から200万人に増加した。

フィンテック・コンサルタント会社の「11:FS」の研究責任者のサラ・コチアンスキ氏は、「スタートアップ企業は、大手銀行から若者の口座を奪う立場にある」と語る。「ただ、そのためには子どもにも、その親にも魅力的に見える絶妙なバランスを狙わないといけない。それは相当ハードルが高い」

また、企業はデータを安全な状態で保持したり、何に承諾を与えているのかを顧客側にきちんと理解してもらう必要もあるという。

<人気を利益に変える>

米アトランタに拠点を構えるグリーンライトは、月4ドル99セント(約520円)で最大5人分の子どものデビットカードが使用可能だ。親はアプリ内に「やることリスト」を作成できて、作業と引き換えに「ご褒美」を与えられる。さらに、親が独自の利息を設定し、子どもの貯金に付与する形で振り込むこともできる。

グリーンライトのティモシー・シーハンCEOは、「グリーンライトが受け入れられた理由は大きく二つある。現金の使用頻度が減ったこと、そして大人だけでなく子どももスマートフォンを使い始めたことだ」と指摘する。

米決済サービス大手ペイパルの個人間送金アプリ「ベンモ」やモバイル決済のスクエアの「キャッシュアップ」などにより、消費者はお互いにお金を送ることが一般的になったが、これらのアプリは18歳未満の使用を許可していない。結果、新しいサービスは、大手のアプリを使うには若すぎるが、お金を使うには十分な年齢という世代にアピールすることができている。

シアトルを拠点とする「コッパー」CEOのエディー・バーリンジャ―氏は、「彼らは銀行口座を持たず、お金をベッドの下にしまっているような年齢層だ。我々はそういった層の人々に、デジタル経済への入り口を提供している」と語った。

一方、アナリストや投資家らは、未成年が現金をそう持っていないことを考慮すると、市場の競争が過密になっているのではないかと懸念する。

コンサルタント会社「フィンテック・トゥデー」のイアン・カー氏は、「こういった企業にどんどんお金が投入されているが、果たして企業はお金を生み出すことができているのだろうか」と述べた。「10代向け銀行ビジネスに、まだそこまでのうまみはない」

8年前に創業された英「ゴーヘンリー」の子ども向けサービスは月2.99ポンド(約410円)。アレックス・ジボダーCEOは、あと数年で黒字化する見込みだと語るが、去年は米国進出などの出資が響き、税引前損失は580万ポンド(約8億円)になった。

スターリング銀行のように、子ども向けサービスがプロダクトラインに加わる商品のひとつであれば、追加収入源として機能するだろうとアナリストはみる。しかし、若年層だけをターゲットにしたアプリだけでは、勝負はもっと難しくなるかもしれない。

スターリングの「カイト」の料金は月2ポンド(約280円)。チーフ・バンキング・オフィサーのヘレン・ビアトン氏は、同サービスは大人気だと語るものの、具体的な数字は明かさなかった。同氏は、カイトのようなプロダクトは、2020年末までに利益を確保するための戦略の一部だと述べた。

<子どもの購買力>

ティーンエイジャーやそれより年下の子どもたちには自由に使える収入はそれほどないかもしれないが、スタートアップ企業は伸びつつある彼らの購買力を頼りにしている。マッキンゼーのデータによると、現在8─23歳であるZ世代の米国での購買力は1500億ドル(約15.6兆円)にのぼる。

サンフランシスコに拠点を置く「ステップ」は、次世代の銀行の設立を目指している。ステップの計画では、まずは交換手数料で収入を得て、顧客の年齢が上がるとともにさらなる金融商品を提供するという。

ステップ創業者のCJ・マクドナルド氏は、「全てのブランドがこの新しい世代に手を伸ばしたいと思っている。彼らはお金持ちではないが、それでも毎年、数十億ドルを消費するのだから」と語る。

カリフォルニア州パロアルトで8人の子どもを育てるベン・ギャルブライス氏は、ここ10カ月は「ステップ」を使って年長の子ども5人の財布を管理している。これまではスプレッドシートを使ってお小遣いや消費、さらに子どもがしょっちゅうなくすカードの管理などをしていたが、「アプリに移行して面倒なことがなくなった」と語る。

長女のジャッキーさんはニューヨーク大学に通う18歳。リアルタイムの消費情報が親に丸見えなのは気にならないという。気に入っているのは、「ステップ」を使ってきょうだいたちに自分が貸したお金を返すようせっつけることだ。

しかし、デジタルバンクもすべては解決できないようだ。「返済のリクエストを無視されるので何度も送らないといけない。3人からは返信すらない」

(翻訳:宗えりか)

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up