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アングル:環境関連の資産購入、「首相肝いり」で日銀に変化も

[東京 21日 ロイター] - 政府が脱炭素の取り組みを進める中、日銀内では金融政策としてのグリーンボンドなど環境関連の金融資産買い入れには抵抗感が強い。グリーンボンドは気候変動に効果的なプロジェクトに資金を振り向けるものだが、資金を公平に供給する観点から望ましくないとの考えからだ。しかし、市場では黒田東彦総裁の下で政府と連携を強めてきた日銀も、将来的に環境関連の上場投資信託(ETF)などの買い入れに踏み込むとの見方が出ている。

 政府が脱炭素の取り組みを進める中、日銀内では金融政策としてのグリーンボンドなど環境関連の金融資産買い入れには抵抗感が強い。写真は2014年1月、都内で撮影(2021年 ロイター/Yuya Shino)

<グリーン資産買い入れは中銀の役割か>

日銀は昨年末、気候変動が金融システムにもたらすリスクなどをテーマに今年3月に国際会議を開くと発表。同時に気候変動に関する2つの調査論文も公表した。国際的な場での議論を通じ、プルーデンス政策に気候変動リスクをどう取り込むか知見を深める方針だ。

マクロプルーデンス分野でのこうした動きとは対照的に、日銀内では、金融政策でグリーンボンドや環境関連ETFの買い入れに踏み込むことに慎重な見方が多い。

最も大きな理由は、日銀がグリーン関連の金融資産を買い入れれば、あらゆる分野に公平に資金を供給していくという中央銀行の役割を逸脱し、産業政策に踏み込むことになるとの懸念だ。

環境省はグリーンボンドを「調達資金の使途を環境改善効果のある事業に限定して発行される債券」と定義しているが、あるテクノロジーや取り組みが本当に効果があるか議論になることがある。

日銀内では、グリーンボンドを買い入れれば日銀が特定の産業や事業者を選んだことになりかねず、業種によって流動性供給の差が大きく分かれる可能性があるとの認識がある。こうした問題は選挙を経て選ばれた国会が取り組むべき問題だとの声が聞かれる。

また、日銀が掲げる2%物価目標との関連で、環境関連の金融資産の購入がどう物価につながるのか不透明だとの声もある。

さらに、仮に買い入れる場合でもグリーンボンドの市場規模が小さいことが実務上のネックになるとの懸念も、日銀では指摘されている。

世界的な環境意識の高まりで、日本でもグリーンボンドの発行が急増し、20年には1兆円を突破した。しかし、社債の73兆円、CPの25兆円という市場規模に比べれば非常に小さい。「小さい市場を育成するならまだしも、日銀の購入分が席巻するようではグリーンボンド市場が壊れてしまう」(エコノミスト)との指摘も出ている。

<脱炭素は菅氏肝いり、日銀も同調か>

しかし、こうした日銀の消極的なスタンスとは対照的に、市場関係者からは日銀は将来的にグリーンボンドなど環境関連金融資産を買い入れるとの見通しが聞かれる。エコノミストは、黒田総裁の下で政府・日銀の連携が強まってきたことに着目している。

菅首相は18日の施政方針演説で「世界的な流れを力に、民間企業に眠る240兆円の現預金、さらには3000兆円とも言われる海外の環境投資を呼び込む。そのための金融市場の枠組みも作る」と述べた。

大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「菅首相のグリーン投資への思いは当初予想していた以上に強い。施政方針演説では金融市場をグリーン関連で育成することを強調した」と指摘。日銀としても「やらなければいけない方向に進むのではないか」とみている。

岩下氏は、中銀デジタル通貨研究を巡って起きた政府と日銀の「連携」に似た動きがすでに出てきていると指摘する。

昨年7月17日、政府が「骨太の方針」に、中央銀行デジタル通貨について「日本銀行において技術的な検証を狙いとした実証実験を行うなど、各国と連携しつつ検討を行う」と盛り込むと、日銀は同20日にデジタル通貨の専門チームを立ち上げた。

そして昨年末、気候変動について、日銀が国際会議の開催を発表したのは経済産業省がグリーン成長戦略を公表する前日だった。

岩下氏は、日銀内に近い将来、気候変動の専門チームが発足するとみる。3月の政策点検と合わせ、グリーン関連投資を後押しするため、付利を付けた上で金融機関に資金を貸し出す制度を打ち出す可能性もあるとみている。

日銀は2015年末、政府の成長戦略を支援するために「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」を対象とするETFを買い入れ対象に追加することを決めた。

みずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは「菅政権の環境に対する取り組みを支援するために、日銀は2021年に環境関連のETFを投資対象に加える可能性がある」と指摘。先行するGPIFを後追いする形で、S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数を買い入れの対象にするとみている。

ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストも「今は消極的でも、将来の社会の変化を見据え、日銀の金融政策が関わらなければいけなくなるウエートは増えていく」と予想する。「ただ、欧州のように積極的に前倒しでやるかは判断の余地がある」という。

*見出しを修正して再送します。

和田崇彦 取材協力:木原麗花、杉山健太郎 編集:石田仁志

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