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コラム

コラム:緊急事態長期化ならCPIに低下圧力、迫られる財政拡張

[東京 22日 ロイター] - 消費者物価がじりじりと下げだしている。日銀はコアコアCPI(生鮮食品、エネルギー除く)のマイナス幅が小幅にとどまっているため、デフレの再来とは距離があるとの見方のようだが、仮に緊急事態宣言が2月7日で終了せずにさらに長期化するなら、CPIに下方圧力がかかる岐路に立たされると指摘したい。

 1月22日、消費者物価がじりじりと下げだしている。日銀はコアコアCPI(生鮮食品、エネルギー除く)のマイナス幅が小幅にとどまっているため、デフレの再来とは距離があるとの見方のようだが、仮に緊急事態宣言が2月7日で終了せずにさらに長期化するなら、CPIに下方圧力がかかる岐路に立たされる。都内で2020年11月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

典型的なのは、時短を強いられた飲食店の需要減が流通経路をさかのぼり、1次産品の生産者を直撃。大幅に値下げされた牛肉や高級鮮魚が流通の下流部門に出回り、飲食店の格安コース提供やスーパーなどの激安セールとして表面化しつつあるルートだ。コアコアCPIがマイナス1%に接近あるいは突破するようなら、日銀だけでなく政府も一段の財政拡張政策を迫られることになりかねない。

<粘るコアコアCPIの構図>

総務省が22日に発表した2020年12月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は前年同月比1.0%低下。電気代が7.9%、都市ガス代が9.5%とそれぞれ下がった。宿泊料も33.5%低下となり物価全体を押し下げた。

日銀の黒田東彦総裁は21日の会見で、11月までのコアCPIに関し「原油価格変動の影響やGoTo(トラベル)の影響など一時的要因がかなりあり、それを除くと依然として小幅ながらプラスだ」との見解を示した。

総務省によると、GoToトラベルによる宿泊価格の引き下げは、CPIを0.4%ポイント押し下げている。12月のコアコアCPIは前年同月比0.4%下落なので、宿泊価格の影響を控除すると、前年同月比で横ばいということになる。この点で黒田総裁の説明は合理性を持っていると言える。

また、黒田総裁は「外出抑制とか消費者が対面的サービスを意図的に抑制しているわけで、そういう時に企業側で価格を下げて需要を取り込むインセンティブがあまりない」とも指摘した。一時的な要因を除けば、物価はほぼ横ばいとなっている背景には、コロナ危機に特有の構造があり、物価の大幅な下落に直結していないとの見立てだ。

<需要減が1次産品生産者を直撃>

だが、ここから先に別の変動要因が加わると、物価に大きな下押し圧力がかかりかねいと筆者は危惧する。

最近、繁華街の焼き肉店で高級和牛の「格安食べ放題コース」というセールストークを見かけたことがある読者もいるのではないか。飲食店の午後8時までの時短実施で、牛肉をはじめとした精肉、鮮魚、野菜などの需要は大幅に減少しており、その影響は卸売り店、1次産品生産者へと流通ルートをさかのぼって波及。ハクサイなどの葉物を生産する農家は、野菜の廃棄処分を強いられている。

一方、高級和牛の生産農家では、下流の消費が大幅に落ち込んでも、子牛が生まれるサイクルは不変であるため、大胆な生産調整が難しい。このため高級和牛の価格が大幅に下がり、一部では今までに考えられなかったような価格で精肉が流通しているという。

こうした現象は、マグロなどの高級鮮魚にも広がり、格安の1次産品を利用した大幅値下げコースが登場する背景となっている。需要減の逆流による1次産品の値下がりの影響が一部のスーパーなどにも波及し、セールの回数が増えているところもある。

2月7日で11都府県を対象にした緊急事態宣言が解除になれば、上記のような極端な値下げ現象も一過性となるだろう。しかし、新型コロナウイルスの感染者が3月になっても目立って減少しなければ、閉店する飲食店が増加し、需要減による価格現象の波が大幅に拡大しかねないリスクが浮上しそうだ。

<問われる財政出動の覚悟>

緊急事態宣言の長期化が現実化した場合、コアCPIのマイナス幅がさらに拡大し、コアコアCPIがマイナス1%に接近するような展開も想定の範囲内になっているかもしれない。そのようなデフレ現象の再来を招くのか、あるいは粘って次の景気拡大につなげてデフレ危機を回避できるのか。岐路が間もなくやってきそうなのが、現在の状況ではないか。その意味で、コアコアCPIの動向は非常に重要性を増してくると考える。

コロナ禍における経済的な打撃を緩和するため、米国でもユーロ圏でも財政が主体的な役割を果たすという強いメッセージが、政府から発信されている。しかし、日本では政府首脳から10万円の特別定額給付金を再支給するつもりはないとの発言も出るなど、足元における家計部門の「元気のなさ」への認識が弱い気がする。

コアコアCPIが一段と下がりだしたら「待ったなし」に政府が財政拡張に動き、日銀がサポートする構えができるように、今から入念な準備が必要だと指摘したい。

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編集:内田慎一

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